第31話 さすらいの女医
その女性は落ち着いた様子で名乗った…
*「わたくしはジュリナ。ヒーラーアルラウネの能力者にして…さすらいの医者ですわ」
その名を聞いた瞬間…ハクの表情が変わる…
ハク「……ジュリナだって?…あのジュリナか……」
モエは腹を押さえながらも…はっとしてハクを見た…
モエ「ちょっと詳しく教えてよ…」
ハクは記憶を辿るように言った…
ハク「ジュリナはな…いろんな異世界を渡り歩いて…病人や怪我人を治して回ってる女性だ…国にも…ギルドにも…魔王軍にも…神軍にも…どこにも属さないそして…そのモットーは…"見つけた患者は必ず診る"って噂の医者だ…」
それを聞いたジュリナは…ふふっと上品に微笑む
ジュリナ「あら……よくご存じですわね」
そして…四人の腹部を一瞥し…
即座に断言した。
ジュリナ「そうですね…診断は…急性環境変化胃腸炎」
オレジは顔をしかめたまま言った
オレジ「なんか……名前だけ聞くと重そうじゃない?」
ジュリナ「いいえ…原因は単純ですわ。ルヴィン砂漠からウルファス森へ入った瞬間に…体内の魔素バランスが一気に切り替わっただけ…要はエリア変化による体調不良による胃腸炎よ…」
シズクは少し安心したように息を吐く…
シズク「……治る、んですよね?」
ハクも念押しするように聞いた…
ハク「ジュリナさん治るのか?」
ジュリナは胸の前で手を組み…はっきりと言った。
ジュリナ「ええ…すぐに治りますわ…この森の魔素を"体に馴染ませる"だけ…さすらいの医者として…この程度の症状を放置するわけありませんもの」
そう言って…ジュリナの周囲に淡い緑と白の光が集まり始める。
ジュリナ「行きますわよ…魔素真蘇転換…!!」
脚が地面に根を張り…森の魔力がゆっくりと四人へ流れ込んでいった…
そのおかげか…
腹痛は…少しずつ確実に…引いていく
腹の奥に残っていた重苦しさが…嘘のように消えていった…
ハク「……治ったな」
モエ「本当……さっきまでの痛みが…まるで最初から…無かったみたい」
そんなオレジは体をひねって見て…
オレジは「いやー助かったぁ☆食堂担当としてはお腹壊すの一番困るからさ…」
シズク「さすがさすらいのお医者様ですね感謝です…」
と…その時だった。
ジュリナ「トランス解除…」
ジュリナがそう言うと姿が元の人間に変化した…
ハクは一歩前に出て言った。
ハク「この出会い……偶然じゃなかった気がする…」
だがジュリナは、あっさりと肩をすくめて否定した…
ジュリナ「完全に偶然よ…自然ある森は人を選ばないし…私は患者のいる場所に現れるだけ…あと…口説いてるの?」
ハク「…なっ!?」
その温度差に…モエたちは言葉を失っていた…
三人とも…どこか名残惜しそうに立ち尽くしていた。
すると最後に…
ジュリナはふっと女子三人に近づいて…
声を落としてから…静かに耳打ちする…
ジュリナ「ねえ……彼は…誰が好きなのかしらね?」
それは一瞬の沈黙…そうサイレンス…
次の瞬間に…
モエの頬が一気に赤くなり…オレジは視線を逸らして…
シズクは小さく声を漏らして…胸元を押さえた…
女子三人揃って…完全に赤面だった…
その様子を見て、ジュリナは満足そうに微笑んだ
ジュリナ「ふふ……反応は正直ね。…さて、わたくしは次に向かうべき異世界がありますの…」
ハクが呼び止める。
ハク「向かう異世界か…それは…どこの異世界なんだ?」
ジュリナは振り返り…少しだけ意味深に答えた。
ジュリナ「ワフウノクニ…貴方たちとは交わることがない…異世界よ」
そう言い残した彼女は砂漠の方角へと歩き出す……
ハクは小さく呟く。
ハク「……変な医者だったな」
モエ「べ、別に……気にしてないわよ」
オレジ「へぇ~?ほんとに~?」
シズクは静かに胸に手を当て…何かを考えている。
ウルファス森は…再び静寂を取り戻す。
だがそれぞれの胸の中には…小さな波紋が残ったままだった。




