第30話 ウルファス森
そこは…ルヴィン砂漠とウルファス森の境界線。
焼けつく砂の海はここで途切れ…前方には深い緑がうねるように広がっていた。
乾いた風の匂いは薄れ…代わりに湿った土と樹木の気配が鼻をくすぐる…
モエ「ここから先が森……確かに…空気が全然違うわね」
ハク「まあな…前にも言ったがこの先はウルファス森…わかると思うが…ルヴィン砂漠と隣接してる」
オレジ「砂漠の次がいきなり大森林って…中々環境差えぐくない?」
シズクは一歩前に出て…森の地面に視線を落とした。
シズク「水脈がありますね…しかもかなり太い……もしかしてこの森の水脈は…オアシスの地下から繋がっているんじゃ…それに見た目以上に生命力が強いですね…」
そして少し楽しそうに微笑む。
モエはハクの方をちらりと見て…静かに言った。
モエ「この森を越えた先に……『遺跡』だったわね」
ハク「ああ…ウルファス森を抜けてさらに奥のオペリフェール遺跡そこの出口から奈落峠へ向かう。アスの小屋はその奈落峠の頂上だ…」
森の奥から…風に揺れる枝葉の音が低く響いた。
砂漠の静寂とは違う…何かが潜んでいるようなざわめき。
ハクは一歩一歩と…ウルファス森へ足を踏み入れる…
ハク「ここからは砂漠とは勝手が違う。気を引き締めて行くぞ」
モエ「わかったわ」
オレジ「だね…」
シズク「何があってもですよ?」
ルヴィン砂漠を背に…ウルファス森攻略が始まる…
~ウルファス森~
そのウルファス森へ足を踏み入れた、その直後だった。
ハク「……ッ!? ぐっ……」
ハクの腹が…嫌な音を立てて鳴った…まさに腹痛…
ギュルルル……
ハク「食べたものが…悪かったか……?」
そう言った直後、ハクは背後を見れば…
モエ「……っ、いたた……」
モエはお腹を押さえ、
シズク「うそでしょ……こんな急に……」
シズクも顔をしかめ、
オレジ「ちょっ…これって……本気でヤバいやつじゃない?」
オレジもまた…胸元を押さえるより先に腹部を抱えて膝を折りそうになっている。
四人同時に…しかもこの森に入った瞬間…
ハク「誰か…胃腸薬とか持ってないか?」
ハクが問いかけると…モエが即答した…
モエ「持ってるわけないでしょ!!」
その時だった…
――ザッ……ザッ……
木々の奥から、落ち着いた足音が近づいてくる…
現れたのは…白衣を纏い眼鏡をかけた医者風の女性だった。
*「……患者は四名」
静かでよく通る声だった…
*「急性の腹部症状…環境変化による魔素反応ですね…」
彼女は一同を見渡し言った…
*「処置を行いますわ」
ハク「一体誰だ……?」
ハクが警戒して一歩前に出た…その瞬間だった…
*「トランス…」
女医者の体が…少しづつ変化していく…
白衣はそのままに…肌の色は緑色へと変わり…
手先には蔓を纏わせて…サブハンドして使えそうだ…
一方脚には根のような質感になり茶色をしている…
その女性の髪は…花弁みたいなものに変化した…
*「…名乗りましょうこの姿はヒーラーアルラウネ」
驚くことに…完全に医者の姿から…アルラウネへと変身していた。
ハク「なるほどな……」
ハクは歯を食いしばりながらも…冷静に言った
ハク「トランス能力者か……ヒーラーアルラウネの…」
トランス能力者は優雅に蔦を揺らしながら地面から森の魔素を集め始める…
*「ウルファス森は、生者の内臓に強く干渉しますの…ですがご安心を。私は治すために現れた存在ですわ」
腹痛は続いている…
だがこのヒーラーアルラウネの能力者は…
敵なのか…それとも味方なのか
森のざわめきは静かに息をひそめた…
そしてハク達の運命は…この女性にかかっている…




