公爵領の視察と真の支配者
社交界での成功と、ヴィンテージ織物の注文殺到により、公爵家の財政は目覚ましい回復を見せ始めた。
しかし、私が目指すのは、公爵家の完全な立て直しだ。そのためには、本丸である公爵領の改革が必要だった。
「公爵様。織物事業の成功は一時的なものです。この機会に、領地の隅々まで視察し、根本的な問題点を解決する必要があります」
私は、執務室で、公爵様に進言した。
「ああ、ロキシーの言う通りだ。私は、これまで領地経営を、実務顧問たちに任せきりだった。彼らの報告を鵜呑みにしていた私の責任だ」
公爵様は、自分の過去の過ちを素直に認めるようになった。
私たちは、公爵領への視察旅行を計画した。公爵様は、私を同行させることを、一切躊躇わなかった。彼は、私を「最高のパートナー」として信頼してくれていた。
公爵領に到着し、私たちは、すぐに織物工場へと向かった。
工場は、最新の設備を導入したにも関わらず、生産効率が極めて悪かった。職人たちの表情は暗く、活気がなかった。
「ロキシー。どういうことだ。これだけの設備があるのに、なぜ生産が追いつかないんだ?」
公爵様は、眉をひそめた。
私は、すぐに問題の核心を見抜いた。
「公爵様。問題は、設備ではなく、職人たちの待遇です。彼らの賃金が、王都の平均賃金よりも遥かに低く抑えられています」
帳簿を調べると、職人たちの賃金が、不当に安く設定され、その差額が、工場を管理する旧体制の幹部たちの懐に入っていることがわかった。これも、セリーヌ様の影響を受けた旧体制の腐敗の一部だった。
「なんと卑劣な……!私の領民を、こんな風に苦しめていたとは!」
公爵様は、怒りを露わにした。以前の女々しかった彼ならば、ここで「どうしよう」と途方に暮れていただろう。だが、今の彼は違った。
「ロキシー。すぐに彼らを呼びなさい。私が、公爵として、この不正を正す!」
私は、公爵様の指示に従い、不正に関与していた幹部たちを工場の一室に集めた。
公爵様は、彼らを前に、堂々と、そして威厳を持って言い放った。
「お前たちの不正は、すべて把握している!お前たちは、私の領民である職人たちを搾取し、公爵家の威信を傷つけた!」
彼は、不正の証拠を突きつけ、即刻解雇と、搾取した金額の全額返還を命じた。
幹部たちは、公爵様の毅然とした態度に、反論の余地もなく、ただ震えるしかなかった。
「そして、職人たちには、本日より、王都の平均以上の賃金を支払う。彼らが、最高の織物を生み出せるよう、公爵家が全面的に支援する!」
公爵様の宣言に、工場全体が歓喜に包まれた。職人たちは、心からの拍手と歓声を上げた。
「公爵様、公爵夫人様!これで、安心して最高の織物を織ることができます!」
職人たちのリーダーは、私たちに深々と頭を下げた。
この一件で、公爵様は、領民たちの心をつかんだ。そして、私は、公爵領における「真の支配者」としての地位を確立した。
公爵様は、領民たちの前で、私を称賛することを忘れなかった。
「この改革は、すべて私の妻、ロキシーの助言によるものだ。彼女こそが、この公爵家を救ったのだ!」
彼の言葉に、領民たちは、私にも熱い視線を送り始めた。
その夜。私と公爵様は、領地の別邸で、二人きりの時間を過ごした。
「ロキシー。君のおかげで、私は、本当に変わることができた。君は、私の内助の功だ」
彼は、私を抱きしめ、感謝の言葉を囁いた。彼の愛は、日々深まっているのがわかった。
「公爵様。私の目的は、あなたを、誰もが認める最高の公爵にすることです。これからも、二人で、この公爵家を、王国一の領地にしましょう」
私は、彼の髪を優しく撫でた。
女々しかった彼が、私の内助の功によって、自信と愛情に満ちた頼もしいヒーローへと変貌を遂げた。私の逆転ざまぁ計画は、最高の形で実を結び始めていた。




