社交界デビュー~公爵夫人の輝きと義母の敗北
セリーヌ様の排除と、公爵様との絆の確立。公爵家再建の準備は整った。
そして、いよいよ、私の社交界デビューの日が来た。
「ロキシー。君は、まるで夜空に輝く星のようだ」
公爵様は、私が着付けを終えた部屋で、うっとりとした表情で私を見つめた。
私は、公爵領の職人が精魂込めて織り上げた、ヴィンテージ織物の最高級品である、美しい深紅のドレスを身にまとっていた。ドレスには、公爵家の紋章が、さりげなく、しかし誇らしげに刺繍されていた。
「ありがとうございます、公爵様。このドレスは、あなたの公爵領の誇りです」
公爵様は、私の言葉に頷き、私の手を優しく取った。
「さあ、行こう、ロキシー。今日、君は、公爵夫人として、この社交界に君臨するのだ」
公爵様は、以前の女々しい彼とは別人だった。彼の目には、私への愛情と、公爵としての自信が満ち溢れていた。
社交界の会場は、王都で最も豪華な侯爵邸だった。
会場に入った瞬間、すべての視線が、私たち夫婦に集中した。
私を見る貴婦人たちの視線には、「あの男爵家の娘が、なぜ」という驚きと、「あの美しいドレスはどこのもの?」という好奇心が混ざり合っていた。
私が、公爵夫人として、公爵様のエスコートで社交界に現れること自体が、セリーヌ様の権威が完全に失墜したことを、貴族たちに知らしめる行為だった。
公爵様は、私の隣で、自信を持って微笑んだ。
「皆様。私の妻、ロキシー・ヴィンテージをご紹介します」
彼は、堂々とした態度で、私を紹介した。
そして、社交界の中心で、公爵様は、ヴィンテージ織物のプロモーションを開始した。
「皆様。私の領地で生産された、このヴィンテージ織物をご覧ください。この光沢、この肌触り。これこそ、王国の誇るべき芸術品です」
彼は、私が準備した資料の内容を、淀みなく、熱意を持って語った。
貴族たちは、美しい織物に心を奪われ、公爵様の熱弁に耳を傾けた。
そして、私の元には、次々と貴婦人たちが集まってきた。
「公爵夫人様。あなたのドレスは、本当に素晴らしいわ!私も、ぜひあの織物でドレスを誂えたいわ」
「ええ、もちろん。公爵領の職人たちが、心を込めて織り上げます。公爵様が、皆様の期待に応えるために、この事業に、全力を注いでおります」
私は、公爵様をたてつつ、冷静かつ優雅に、織物の注文を取り付けていった。私の言葉には、男爵家で培った、確かな交渉術が活かされていた。
社交界デビューは大成功に終わった。公爵様の威信は回復し、ヴィンテージ織物の注文は殺到した。
そして、その夜。公爵邸に、一人の貴婦人が現れた。セリーヌ様が、バンテス様の妻にしようとしていた、侯爵家の令嬢だった。
「公爵様!聞いてください!セリーヌ様が、私に、公爵様がロキシー夫人とすぐに離縁し、私と結婚すると、約束していたのです!」
彼女は、半狂乱になって、公爵様に詰め寄った。
公爵様は、冷静に彼女を見た。
「侯爵令嬢。母上は、以前、公爵家の不正経理により、すべての権限を剥奪されました。母上の個人的な約束など、公爵家には一切関係ございません」
公爵様は、彼女に対して、毅然とした態度で、そう言い放った。彼の態度は、以前の女々しい彼とは、完全に決別していた。
「そして、私は、妻であるロキシーを愛している。彼女こそが、この公爵家にふさわしい、最高の公爵夫人です」
彼は、私を抱き寄せ、私の額にキスをした。彼の愛情表現は、真実だった。
侯爵令嬢は、公爵様の拒絶と、私の公爵夫人としての地位の確固たる証拠を目の当たりにし、顔を真っ赤にして、公爵邸を去っていった。
この一連の出来事は、セリーヌ様にとって、決定的な敗北となった。
彼女は、自室の窓から、私の活躍と、公爵様の変化を、すべて見ていたのだ。
私が、公爵様と手を携え、公爵家を立て直し、そして、公爵様から真の愛情を向けられているという事実は、彼女にとって、最大のざまぁだった。
私は、彼女の自室の窓を、静かに見上げた。
(義母様。これが、あなたが私にした、すべての嫌がらせに対する、私の「内助の功」でございます)
私は、公爵様を見上げ、優しく微笑んだ。
「公爵様。さあ、今夜は、私たちの成功を祝いましょう」
公爵様は、私を抱きかかえ、満面の笑みで、寝室へと向かった。




