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氷の公爵家に嫁いだ私、実は超絶有能な元男爵令嬢でした~女々しい公爵様と粘着義母のざまぁルートを内助の功で逆転します!~  作者: 夏野みず


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義母の不正を見抜く~公爵家の秘密会議

 バンテス様から、公爵家の会計報告書の一部を手に入れることに成功した。しかし、それは最新の一ヶ月分のみ。肝心な古い帳簿は、相変わらず裏の書斎にある。


(まずは、手元にあるこの最新の報告書から、問題点を洗い出すしかないわ)


 私は、セリーヌ様に命じられた「社交の勉強」という名の裏庭の倉庫に籠り、バンテス様から受け取った書類と、裏書斎で解析した古い帳簿のメモを照らし合わせる作業を始めた。


 その夜、裏書斎で私は驚愕の事実を発見した。


「公爵様の私的な趣味の費用……いや、これはセリーヌ様の社交費だわ」


 古い帳簿には、『美術品購入費』として計上されていた巨額の支出が、最新の報告書では『領地事業の投資費用』という名目で、同額が再度計上されていた。


(これは、二重計上だ!しかも、支出先が全く違う)


 さらに、過去数年分の帳簿を遡って見ると、セリーヌ様が、公爵領の資金を私的な贅沢のために、定期的に横領していた痕跡が見つかった。彼女は、公爵様が領地経営に無関心であることを良いことに、資金を自由に動かしていたのだ。


(これが、公爵家が傾いている本当の原因の一つ!)


 翌朝、私はバンテス様の執務室へ向かった。公爵様は、書類の山に埋もれて、疲れ果てた顔で頭を抱えていた。


「公爵様。お疲れのところ申し訳ございません」


「ロキシーか……。君には、こんな苦労ばかりかけて、本当にすまない」


 彼は、心底そう思っているようだった。


「公爵様、お話ししたいことがございます。公爵家の財政の件です」


 私は、用意周到に作成したメモをテーブルに置いた。セリーヌ様が立ち入らないよう、執務室の鍵が閉まっていることを確認している。


「この資料をご覧ください。これは、過去三年の公爵家の支出における、ある特定の項目を抽出したものです」


 バンテス様は、半信半疑といった様子で、そのメモに目を落とした。


「これは……『領地再建のための予備費』の支出が、毎年異常に高額になっているな。しかも、支出先の記載が曖昧だ」


「はい。そして、この予備費の支出日と金額が、義母様の社交費の請求書と、完全に一致しているのです」


 私は、さらに追及した。


「公爵様。義母様は、ご自身の贅沢のために、公爵家の公金を横領しています。これは、公爵家の財政を傾かせている最大の原因の一つです」


 バンテス様は、顔面蒼白になった。彼の美しい顔が、恐怖と絶望に染まった。


「ま、まさか……母上が?そんなはずはない!君の勘違いだ、ロキシー!」


 彼は、取り乱したように、私から目を背けた。母親の不正を認めることが、彼の女々しいプライドをさらに深く傷つけるのだろう。


「公爵様。この事実から目を背けてはいけません。もし、この不正が外部に漏れれば、公爵様の威信は失墜します。公爵家は、取り返しのつかない窮地に立たされます」


 私は、彼の肩にそっと手を置いた。


「あなたは、立派な公爵にならなければならない。あなたを、誰もが尊敬する公爵にしたい。そのためには、まずこの膿を出し切る必要があります」


 彼は、私の手を見つめ、それから私の瞳を見た。


「君は……どうして、そこまで私に尽くしてくれるんだ?君は、母上から、あんなに酷い仕打ちを受けているのに」


「私は、あなたの妻ですから。そして、私は、公爵様が、ご自身の弱さと向き合い、困難を乗り越えられる方だと信じています」


 私は、彼が求めている「承認」を、言葉で与えてやった。女々しい彼は、誰かに認められることで、初めて行動に移せるタイプの人間なのだ。


 バンテス様は、しばらく呻くように考え込んでいたが、やがて、深く息を吐いた。


「わかった……。信じたくはないが、君の用意した証拠は、あまりにも具体的だ。どうすればいい?私は、母上とどう対峙すればいいんだ……」


 彼の声は震えていた。


「公爵様。あなたが義母様と直接対決する必要はございません。それは、公爵様の威厳を保つためにも避けるべきです」


 私は、すかさず、事前に考えていた策を彼に提示した。


「すべて、私が裏で手を回します。公爵様は、私が進めるすべての行動に、ただ「公爵としての承認」を与えてください。公爵様のお名前を使わせていただきます」


 彼は、目を見開いて私を見た。


「君が、母上と戦うというのか?それはあまりにも危険だ!」


「危険ではありません。私は、公爵様という「盾」を持っていますから」


 私は微笑んだ。


「公爵様は、何も心配なさらず、ただ、私にすべてをお任せください。そして、公爵様は、ご自身の公爵としての責務に集中してください。それが、私への、何よりの助けとなります」


 彼は、私の決意に圧倒されたように、静かに頷いた。


「ロキシー……。君は、本当に、私の妻なのか」


 彼の瞳に、初めて私に対する、単なる「同情」ではない、複雑な感情が宿ったのを見た。

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