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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

水   ※実話です。覚悟してください。

作者: motimoti

読書後の精神面をも含む超常現象への一切の責任は負いかねます。

それが始まったのは、去年の夏だった。アパートに引っ越してきて三か月ほど経った頃だ。台所の蛇口から、水が少し鉄臭い匂いを放つようになった。古い建物だからだろうと気にしなかった。


ただ、その匂いは日ごとに強くなっていった。水を口に含むと、錆びだけではない何かが舌に残る。ぬるりとした感触。濾過器を買ってみても変わらなかった。


夜、洗面台で顔を洗っていると、水の流れる音に、かすかな「声」が混じっている気がした。最初は気のせいだと思った。疲れていたのだ、と。けれども翌晩も、またその次の晩も、同じように水音の奥から「…かえして」という囁きが聞こえてくる。


ある晩、眠れなくてキッチンの蛇口をひねった。コップを満たしたその水の中に、髪の毛のような黒い糸が浮いていた。思わず吐き出したが、喉の奥には確かに髪の毛が一本貼りついていた。


管理会社に連絡した。業者が来て調べたが、「問題はない」とだけ告げられた。水質検査の紙を渡され、「飲んでも大丈夫ですよ」と笑われた。


だが、数日後、隣の部屋の住人が救急車で運ばれた。吐血して倒れていたらしい。しばらくして、住人は戻ってこなかった。


それからというもの、水道をひねるたびに、あの匂いが強くなる。夜、シンクに水をためて覗き込むと、私の顔ではない顔が映っている。白く濁った目が、こちらを見上げている。


 私はもう水を口にしない。買ってきたペットボトルでしのいでいる。だが風呂や洗面は避けられない。皮膚に触れるたび、冷たさではなく、誰かの手のひらの温度を感じる。


 いまもこうしている間も、背後で水道の蛇口から、ぽたり、ぽたりと音がしている。


閉めたはずなのに。

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― 新着の感想 ―
>皮膚に触れるたび、冷たさではなく、誰かの手のひらの温度を感じる それは確実にただの水ではない!←何を今さらなツッコミ 温度があるということは、きっとそれは幽霊とかではなく、何かべつの生き物だ!←…
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