二話
二話になります!
よろしくお願いいたします!
「ここがママのかいしゃだよ」
案内された場所に僕はたどり着いた。
どうやらビルの中にあるようだ。
手を引かれ、緊張を感じながら中に入る。
あっという間に扉の前まで来てしまった。
「ママ!ただいま!」
えみちゃんが扉を開けた。
視界に真っ先に入ったのは、黒色のスーツを麗しく着こなした麗人であった。
「えみ、おかえりなさい。そちらの方はどうしたの?」
「このひとはまなじおにいちゃんだよ!ラムネくれた!あと、しごとやめたみたいでこまってるみたい!」
天真爛漫にはきはきとえみちゃんは説明する。
「あら、そうなの。ありがとうございます。そちらのソファーにおかけになって」
「ありがとうございます。失礼致します」
黒色の艶がかかったソファーにおずおずと腰かける。
「初めまして。私は黒井真由子と申します。便利屋毎楽の代表取締役を務めています」
「初めまして。大井戸愛慈と申します。よろしくお願いいたします」
「大井戸愛慈さんね。貴方の年齢は20歳だから、君付けで構わないかしら?」
「はい、問題ございません。一つお伺いいたしますが、どうして僕の年齢をおわかりに
なられたのですか?」
「私、そういった事がわかるのよ。人を深く見て、関わるを仕事をしているから」
端的な説明に、納得がいった。
「そうでございましたか。流石でございます」
「そう緊張せず、もっとリラックスして」
「ありがとうございます」
「貴方、仕事を探しているわね?」
「はい、仰る通りです」
「端的に言うけど、うちで働く?丁度従業員を募集していた所なの」
「ありがたい申し出ですが、初めて便利屋の仕事を致しますので、不安な所があります」
卒然、黒井社長は拍手をしだした。
「すばらしいわ、愛慈君」
「えっ?」
「今、貴方は今すぐ就職する場面であったにも関わず、自らの気持ちを端的に伝え、入社しようと
しなかった。流石ね」
「ありがとうございます」
「貴方の気持ちを汲んで、実際どんな仕事か体験してから入社する?勿論、働いた分の賃金を
支払うから心配無用よ」
「ありがとうございます!ではお願い致します!」
「わかりました。では、今丁度現場に向かう所だったから行きましょうか」
「はい!」
社長の車に乗り、現場へと向かう。
えみちゃんもついてきた。
「愛慈君、今日は草刈りと荷物の整理の依頼をされていてね、貴方にもそれを強力してほしいの」
「はい、承知しました」
「無理せずに、貴方のペースで」
「ありがとうございます」
「まなじおにいちゃん、頑張って!」
「ありがとう」
緊張しながら現場へ到着するのを待っていたが、いよいよ到着した。
「着いたわ」
車から降りると、綺麗で豪華な見てくれの一軒家が経っていた。
シミ一つない艶のある白色の塗装で、清潔感が非常に感じられた。
家の中から、小柄なお婆さんが出てきた。
「こんにちは。お世話になっています」
「こちらこそでございます。本日、彼も従業員として参加致しますので、どうぞ
よろしくお願いいたします」
「そうですか。初めまして、依頼主の澤田と申します。よろしくお願いします」
「初めまして。本日参加致します、大井戸愛慈と申します。よろしくお願いいたします」
「愛慈君、向こうに広い庭があるわ。そこで今草を刈っているから、頼むわ。
貴方の本日の役割は手間取りで」
「承知しました」
社長と共に現場へ向かう。
すると、辣腕に草を刈る青年の姿を認識した。
こちらに気付いたのかご本人は振り向いた。
「社長!お疲れ様です!」
「お疲れ。本日、彼も参加するから、よろしくね」
「新人ですか!おぉ!ありがたい!」
こちらまで歩み寄り、手を差し出した。
髪を金色に染めて、背も高く、二枚目の殿方だ。
「俺、眞名田麗人って言うんだ!よろしくな!相棒!」
「大井戸愛慈です。よろしくお願いいたします」
手を固く握りあい、深く握手する。
「愛慈っていうんだな!いい名前だ!早速だが愛慈!刈った草を軽トラに積んでくれ!」
「承知しました!」
置いてあるレーキを拝借して、早速草を集める。
集めた草を走って軽トラの二台に乗せる。
「おぉ!早いじゃねぇか!」
「良い動きだわ」
とにかく早く草を集めて乗せる。
「愛慈があんなに動くなら俺も相棒として負けてられねぇな!」
麗人さんが再び草刈り機を稼働させる。
麗人さんのお力に少しでもなれるように必死に動く。
麗人さんは体を誇大に動かさず、最小限の動きだけで草を綺麗に刈り取る。
これは相違なく場数をふんでいる証左。
「愛慈!まだまだ刈るからちゃんとついて来てくれよ!」
「はい!」
なんてすがすがしい人なんだろう。
気持ちいい方だ。
それから三時間ほどかけて草を刈り取る事に成功した。
「愛慈、敬服したぜ。新人とは思えない働きをしてくれたぜ。ありがとな!」
肩を組まれた。
「こちらこそありがとうございます。お力になれたら幸いです」
「頗る助かったぜ!それでこそ俺の相棒だ!」
麗人さんの中で僕は相棒になっているようだ。
「結菜、気配を消して近づいちゃ愛慈がすげぇ驚くぜ」
「えっ?」
服のすそを引っ張られた。
振り向くと、そこには比較的身長が小さめの女性がこちらを見据えていた。
つぶらな瞳に愛らしい顔をしている。
「お疲れ」
「あっ、お疲れ様です!」
「私、結菜。久喜結菜貴方が新人の愛慈ね」
「そうです。よろしくお願いいたします」
「愛慈、悪くない。さっきから動きみていたけど、麗人の足引っ張らず、頑張っていた。
是非、採用して然るべき」
口元をにやつかせる。その笑みに卑しさはなく、純粋な笑みだとしっかり認識できた。
「結菜、お前の言う通りだ。愛慈は須らく採用すべきだ。どうっすか社長!」」
「私は全然構わないわ。むしろ来てほしいくらい。いかがかしら、愛慈君」
僕の中で答えは決まっていた。
「はい!こちらこそお願い致します!」
「愛慈、よく言った。私今、荷物の整理しているから、助っ人求める」
「はい!お任せください!」
「おっしゃ愛慈!お前と俺のコンビネーションを存分に発揮しようぜ!」
結菜の後をついて、倉庫の中に入った。
中には段ボールなど様々な荷物が山積していた。
「ここを一人で、結菜さんが?」
「左様。一人でしていた。ついさっき溜まった荷物を廃棄場に持って行った」
「結菜もアビリティ高いぞ、愛慈」
「さすがですね、お二人共」
「一緒にお願い、麗人、愛慈」
「おう!」
「はい!」
三人で同時に取り掛かった。
とにかく倉庫の中の荷物を取り出し、結菜さんが運転する軽トラに詰め込む。
「愛慈、一ついい事を教えてやろう。今日社長が仕事終わり寿司につれていってくれるぞ」
「おぉ、久しく食べていなかったのでありがたいです」
作業しながら、麗人さんが教えてくれた。
仕事終わりの楽しみを胸に、荷物をひたすら出す。
三人のコンビネーションが奏功して、無事に終わった。
倉庫の中はすっきりして、新鮮な空気が入った。
「三人とも、お疲れ様。よく頑張ってくれたわね」
「今日もハードでございやしたよ、社長」
「でも、かなり貰えるから問題無し」
依頼主の澤田さんがお茶を用意してくれた。
「お疲れ様でした。ありがとうございます」
「とんでもないです。こちらこそご依頼賜り感謝いたします」
働いて渇いた喉を潤す水分がとても気持ちいい。
「本日の料金は、後日きちんとお支払いしますので、よろしくお願いいたします」
「承知しました。この度は便利屋毎楽をご利用いただき、誠にありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
僕達も社長の後に続いてお礼を伝える。
「さぁ、三人とも。軽トラも会社に戻したら、お寿司行きましょう!」
ありがとうございました!
引き続きよろしくお願いいたします!