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第7話 ギルドマスターは憮然と佇む

俺たち家族全員は今ギルドの一室にいる。ギルドマスター室だ。偉い人の部屋って緊張しない?


スタンピードは昨日のうちに完全に収束している。セレスがヒュージスライムを撃破した時点でスライムは全滅。他も僅かしか残ってなかったからな。


大量の魔物の残骸を前に疲れ果てて座り込むもの、助かったことに安堵するもの、嬉々として素材を採取するものなど様々な人間模様が見られたね。


周囲が近寄りがたいオーラを発しながら鉱石中心に素材を集めるノルベルト工房の面々。


この機会にアンデッド化現象の研究を進めようとして周囲に制止されるレーナ及び大学の面々。


まだ残ってる敵がいたらコッチ回して―、と剣を振り続けるセレス及び暴れ足りなかった精鋭チームの面々。


「お裾分け」スキルを使用してウチが取り過ぎていると思われないように周囲に根回しをしていた俺。賄賂じゃねーぞ?あくまでお裾分けだ。


激戦の後のご褒美とばかりに俺たち家族はそれぞれにはしゃいでしまったのかもしれん。怒られるのかな?だったら嫌だなー


「あのー、私たち、なにかやっちゃいました?」


こういう時は先に話して主導権を握ろう。そっちの方が精神的な負担が少ないはずだ。


「何かどころじゃない!分かって言ってるな?モーリス家が普通じゃないことは分かってた。分かってたが……異常過ぎる!まず絶壁!「断鎧」

……あぁすまん断鎧絶壁の剣豪セレスティーン。お前が凄いのは知っていた。ウチの所属だからな。王都冒険者ギルドへ何度も推薦したくらいだ。それにしたってだぞ?なんでヒュージスライム倒せてんの?おかしくない?スライムの体内って歩けるもんだったの?」


「質問が多すぎるわマスター。普通は歩けないわよ?スライムの体内なんて。ただジョージと一緒ならなんとかなったのよ。細かいことは企業秘密よ」


内助の功でも「一蓮托生」は俺たちの切り札だからな。夫婦の秘密だぜ?いや、ノルとレーナは知ってるから家族の秘密か。夫婦の秘密ってなんかよくね?って思ったけど仕方がないな。


「まぁそれを聞きたい訳じゃないからいいが功績がデカすぎる。《《褒章》》は王都にも確認中だ、時間が掛かるが少し待ってくれ。

それよりノルベルトさん。貴方、戦闘でもあそこまで強かったんですね。どうです?鍛冶ギルドから冒険者ギルドに乗り換えませんか?それともし良かったらなんですが、昨日の素材のことでですね?いや戦功は十分なのでお取りいただいても大丈夫なんですがウチにも少しでいいのでですね。分けて頂けるとありがたいなと思いまして、勿論!代金はお支払いいたします!」


「あぁ、それでしたら昨日は少しテンションが上がっちゃいまして、従業員ともども反省しています。そうですよね、取り過ぎですよね……冒険者さんたちがどうぞどうぞ、というので調子に乗っちゃいました。必要分をおっしゃってください、お納めしますよ。あと移籍は無しで」


大量の素材だったからな。それとスタンピードは普通、もっと被害が大きいんだ。何人か死亡したりすることも稀じゃない。


なので補償金とかに充ててくんだが今回は大怪我すらいないからな。ウィンウィンってやつだった。となると素材の分配の話になるわけか。


ノルも大人になったなー。父さん嬉しいよ。取り過ぎは良くないからね。一応根回しはしてるが限度があったらしい。


それとノルは戦えるけどセレスみたいに戦うのが好きって訳じゃない。戦った後の素材と物作りが好きな温厚な青年なんだ。


「レーナさんも智勇兼美の勇を昨日は理解しました。お兄様には断られてしまいましたがレーナさんに移籍の気持ちがあれば大歓迎ですよ?昨日の大学の行動については最早恒例行事なのでなにも言うことはありません。魔術師だけでもあれなのに学者はさらにあれですからな」


「私は研究することが多い。だから冒険者ギルドには移籍しない。それだけ」


レーナもノルと同じで戦うことが好きってわけじゃ……ないよな?案外好きそうな気もするけど気のせいだろう。


少なくとも研究の方が好きな子だからな。大学はレーナにとって最高の居場所だろう。この街を離れたくない理由の一つでもある。


王都にも大学はあるがコッチののんびりした空気がレーナには合ってると思うんだ。


「それとジョージさん、昨日のあの、なんですかあれ?大量の魔物の残骸が土に帰っていくあれ。それと収納も凄い量をお一人で運んでいたようでしたが。いや助かりましたよ?確かに助かりました。……ウチでポーター登録しません?最高ランク冒険者と同じ待遇用意しますよ?多分断られるんでしょうけど。ただ貴方への報酬をどうするかが悩みなんですよ。所属団体がないので困ってるんです。ただし功は大きい。差し入れとかいう食事も。恐らくですが食事効果があったと思うんですよ。明らかにウチの連中の動きも良かったですし。魔術師ギルドも言っていました」


「あぁ、私への報酬なら特に考えなくても大丈夫ですよ。私の功と言ったって内助の功ですから。もしあれなら妻の《《褒賞》》に多少でも乗せて頂ければ。食事効果?は自分でもよくわかりませんね。ホワイトベリージャムはレーナにしか渡してないですし。あ、それと私も冒険者ギルドには所属しませんよ?主夫って結構忙しいんですよ。」


「そうですよ!父さんが主夫辞めちゃったらウチはとんでもないことに……食事だって母さんには無理だし外食ばっかになっちゃうし!他の家事だって父さんがいなかったらどうにもならない!父さん?稼ぎなら俺やレーナだっているんだし母さんも稼ぎはいいんだから考えちゃだめだよ!?」


「私は小さかったからおとんの来る前のことは知らない。でもいない生活は考えられない。ギルドに誘うマスターは悪い」


「私だってジョージに家のことやって貰わないと仕事まともに出来なくなるわよ!……ただノルは後でお話ね?」


家族の強烈な勢いの抗議にマスターは冷や汗を流してるな。正直すまん。主夫としての俺を必要としてくれてて嬉しいよ本当に。


「すみません!すみませんでした!いや本当は昨日の皆さんのご活躍に感謝を伝えるためにお越しいただいたのですが、つい勧誘してしまって。それと差し当たっての《《褒賞》》も用意してありますのでお渡しいたします。断鎧もそんな睨まないでくれ。明日からはまたいつも通り頼むよ?しかし断鎧は分かっていたが家族のみなさんも並外れていましたな。恐らくは皆さんが思っている以上に。では、今日はここまでということで。

改めて昨日のスタンピードへの協力、感謝申し上げます。」


最後のセリフはわざわざ立ってしてくれるとは、本当に感謝を伝えるだけだったみたいだな。緊張して損したぜ。


俺たちも起立しそれぞれに挨拶をかわし、俺たち家族は憩いの場である我が家へ帰る。臨時収入あったし今日はすき焼きにでもするか?



――――――――――――――――――――――


「……帰ったか。で、実際のところはどうなんです?ギルド長?それと学長も」


ジョージたちが帰った後のギルドマスター室には鍛冶ギルド長、魔術師ギルド長、大学長の3人が入ってきていた。


「鍛冶ギルドは実力主義だからな。他の親方連中だってノルベルトのことは認めてる。ウチのギルドじゃ桁違いに稼いでるし抱えてる職人だって多い。それでも文句はねぇな。最年少親方だが誰もが認めてる。ただ、流石にウチの規模じゃ収まらなくなってきてる。完全に独立してもらうか王都か、だな」


「大学としては特に問題はないですな。研究者はみんなそれぞれ独立独歩で他人に興味なんてありません。研究費も他と一緒。個人研究分は自分でやりくりしてますし個人で取った特許に大学は干渉しませんしね。学生時代から見てますしわが校の誇りでもある、ずっといて欲しいと思っておりますな」


「魔術師ギルドとしては大学が羨ましいというか最早妬ましいですよ。恨めしいかももです。……昨日のことで言えば魔術師たちの証言に嘘はありませんよ。彼女の魔法技術以上の者はギルドにはいません。いや、王都の本部にいるかも疑問です」


「ですよねぇ。まずノルベルトさんですが。昨日の大砲だって凄いじゃないですか?恐らくすぐに軍が正式採用するでしょう。それに個人の戦闘力もとんでもなかった

この街ではセレスの次が彼でしょう。それに工房で作ってる家電でしたっけ?あれだってこの街にいる貴族から王都に伝わってるでしょう。

 絶壁だってずっと前から王都へいくことを推薦、というか王都からのスカウトが何度も来ている。

 レーナ嬢だって魔術師ギルド本部に知れればスカウトが来るでしょう?あの魔法は王宮魔術師すらスカウトしたいところでしょう。

 そしてジョージ殿。あの人は影に隠れていたが少なくとも冒険者目線では世界最高峰のポーターになり得る。そして昨日の料理だ。今日は来ていないが調理師ギルドだって目を付けるかもしれないし魔術師ギルドだって心中穏やかじゃないでしょう?」


「確かにポーションを超えていそうなあのジャムの報告には驚きました。いくらレーナ嬢が魔法技術に優れていると言っても環境魔法を30分以上かけ続けるなど正気の沙汰ではない。あの家族は異常です」


「今回のスタンピードの結果は王都に報告中です。絶壁は以前より様々な功績があったので叙勲は間違いないでしょう。家族の功績も含めれば叙爵もあり得る。正直ヴェルデに収まる家じゃない。部下として扱い切れない!王都へ移住して貰った方がいいのですが……」


「いずれにしても沙汰は王都が出すんです、我々に出来ることは待つことのみ、ですな」


「「「そうですなぁ……」」」


大学長は別にいてもいいだけどなぁと思っているが他の面々は優秀過ぎる部下や同業者の扱いに悩んでいるのだ。


とは言え彼らに出来ることは少ない。問題が起きないことを祈りつつ王都からの連絡を待つしかないのだ。


臨時報酬にウッキウキで出て行ったジョージたちとは裏腹に思い足取りでそれぞれの仕事場へと帰っていくのであった。

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