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第5話 スタンピードは突然に

本日5話投稿の5話目です。

今日は冒険者ギルドに買い出しに来ている。セレスは勿論、ノルやレーナに必要な物資もあるんだよこれが。買い出しならば俺の役目だ。


俺たちが住んでいる街は国でも3番目の規模を誇るヴェルデと言う都市で人口は5万人くらい。それくらいの規模の街だとギルドも結構あってな。冒険者ギルドに魔術師ギルド、紡績に調理師、ノルの所属する鍛冶ギルドもあるな。


王都なんかだと鍛冶ギルドも鉄工、石工、木工とか分かれてるらしいがここでは職人ギルド的な立ち位置だ。だからこそ逆にノルなんかは色々作るのに便利だとか言ってたな。


レーナの所属する大学もあるし農業も盛んで非常に暮らしやすい。セレスは腕が立つから何度も王都への本拠移転を冒険者ギルドから打診されているが断っているのが現状だ。


それで冒険者ギルドは冒険者が採取したり狩猟したりした素材の仲卸を兼ねてたりする。商人ギルドとは丁々発止のやりとりが行われているとかなんとか。


なので家族全員なんやかんやと入用なものもあるため、たまに足を運ぶことになるってわけ。それなりに顔見知りもいるんだぜ。


あ、ノルもレーナも大学や工房で素材調達するのが基本なんだが個人的な研究や開発もやってるからな。その分だ。


そう言う訳でギルドに足を運んだわけだがなんかどうも騒がしい。


主夫スキル「噂話に耳が早い」が警鐘を鳴らしてきてる感じがするぜ。……このスキル絶対「内助の功」じゃないと思うんよ。


と言う訳で悪いとは思うが向こうで奥で話をしている職員の話に聞き耳を立てる。柱の陰に隠れてな。


スキル「主夫は見た」で俺の存在には気づかれないだろう。……これ最早「主夫」ですらねぇだろ。


「……どうやらスタンピートの前兆と思われる事象が報告されたらしいぞ。今マスターたちは緊急で会議だと。ちょっとまずいかもしれん」


「マジかよ!?そりゃ忙しくなるんじゃねぇか?まぁでもアレか、ウチにはエース様もいるしな。まぁなんとかなるんじゃないか?」


「いや、それが今回の目撃証言ではスライムが確認されたって噂がある。『断鎧絶壁』でも苦手な部類だろう。朝一の報告からすぐに会議に入ってまだ終わってないんだ。難儀しているのかもしれん」


「スライムだって!?スタンピートとの相性が最悪じゃないか!それならよっぽど大型魔物の方がマシだ。……結構ヤバいんだな」


「ああ、だからまだ一般には公開していない。下手すると一斉避難かもしれん。心の準備はしておけよ?これから数日は特にな」



スタンピート!?しかもスライムか……これは確かにまずい。スライムってのは異世界じゃ最弱かえらい強いかだが、ここのスライムは強い。


強いって言うか厄介か。基本的に物理に対し高防御で核をしっかりと壊さないと分裂する。なので出現時には量より質で対抗するわけだ。


それに対してスタンピートは大量の魔物が列をなしているわけで。これはいくら質が高い戦士でも一人で出来ることは限られる。つまり量で対抗する必要がある。


スタンピートにスライムが混じると量での力押しも難しくなるからかなり厄介なんだ。念入りな準備と作戦が必要になるだろう


ただ動きは鈍い。さっきの職員も数日先のような話しぶりだった。会議もまだ時間があるから念入りにやっているのだろう。


これはウチでも色々と準備が必要になるか?いや、すでにセレスは連絡を受けているかもしれん。もしかしたら会議にも参加してるな。


念のためだ。俺も一応出来る限りの準備をしておくか。まずは買い物を済ませて家に帰りみんなの帰りを待つとしよう。



「スタンピートが発生したわ。雑魚が多いけどスライムが混じってるのが問題ね。街への到着は2日後と予測されているわね」


家で保存食を作っていた俺だが、セレスが帰ってきたのでなにかあったか聞いてみるとやはりスタンピートが発生したとの話だった。


「そうか、それでセレスは討伐に参加なのか?今日はその話をギルドでしていたんだろう?」


「相変わらず耳が早いわね。ええ、私も今回の討伐メンバーに選ばれたわ。スライムさえいなければ小規模になるから街全体の避難はなし。それにスライムは遅れて到着するでしょうからまずはザコの掃討。コレは問題なく終了すると思うわ。ただ、スライムには準備がいるわね」


「俺のとこにも話が来たよ。明日は一日かけて外に出城を作る作業になると思う。朝早くから作業するから今日は早く寝るよ。飯は外で食って来たから大丈夫。というわけでお休み、父さん、母さん」


ノルは出城作りか。明日は日が昇るより早く出てくだろうから先に弁当作っておくか。レーナ特製の保存容器なら数日は出来たてだからな。


「大学にも話が来た。私は第一波に対して魔法を放つ役割になった。明日は一日ポーション作り。それと私は夕飯食べる」


レーナは魔術師としても一流だから声が掛かってたか。よし!みんなそれぞれ対策に追われるんだから力が付くものを作ろう!


俺はみんなのフォローをするのが役目だからな。やれることを精一杯、だ。





色々な準備に追われた二日間が終わり今日はスタンピートが街に到着する日だ。昨日のうちに完璧に作られた出城に俺たち家族と討伐メンバーたちは待機していた。


「しかし、流石は『週刊要塞』とまで言われるノルベルト工房だな。僅か一日でここまで頼もしい出城が仕上がるとは」


ギルドマスターがノルの仕事を褒めてるな。俺の息子は凄いんだぜ?もっと褒めろ。


「それでは作戦を通達する!敵の第一波はウルフが中心と思われるが概ねは小型~中型の魔物だ。ここは魔術師隊の大規模魔法で対応していく。その後は大型の魔物の対策になるのが通常だが今回はスライムも確認されている。そこで大学より提供された魔物寄せの香で敵を分断。引き寄せられた大型の魔物は前衛中心に対応する。そして香の影響を受けないと思われるスライムには『断鎧絶壁』を中心に精鋭部隊が当たる。以上だ」


ギルドマスターからの最後の確認にうなづき討伐メンバー全員がすでにうっすらと土埃の見える前方に顔を向ける。


あと少しではっきりと視認が出来る距離になり魔術師隊の魔法が連発されていくことになるだろう、しかし。


「ロングレンジアイスレイン」


愛娘レーナにとってはうっすらと見える範囲は射程距離だ。レーナの詠唱とともに遥か前方に氷の雨が降り注ぐ。


「あ、レーナ今回はちょっと待ってって言ったじゃん!って仕方ない。こっちも行くぞっ!仰角45度、全砲門射撃用意。5,4,3……てぇぇええっ!!」


ノルベルト工房の新作大砲が従業員や冒険者たちの操作により火を噴き敵集団に対し超長距離砲撃を行う。


ドォオオおおン!!とここまで着弾の音が届くが魔物たちにとっては、たまったものじゃないだろう。向こうからはかすかに城壁が見えているくらいだろう。


そこから致命的な攻撃が間断なく降り注いでくるのだから。


「流石は『智勇兼美』大学の誇る若き至宝レーナ嬢よ。この距離からの魔法攻撃とは。それにノルベルト工房の武器も実に頼もしい。

アレ?儂、流石と頼もしいしか言ってなくない?おいっ!お前ら!冒険者の意地も見せろよっ!?接近戦では活躍しろよ!」


ギルドマスターがウチの家族を賞賛しているのは実に誇らしい。ふふっ、こんなこともあろうかと家族会議やったり準備してきたんだぜ?


冒険者たちも発破掛けられて顔が引き締まったな。まぁその部隊には「巨鎚巨匠」のノルベルトさんも交じってるからな。


手柄と言うか素材欲しがってから大活躍することだろう。冒険者さんたちにもぜひ頑張って頂きたいところだ。


それでもスタンピートの物量はすさまじい。抜けて来た魔物たちがそれなりの数で迫って来る。


しかしレーナを筆頭に魔術師隊の魔法でなかなか近寄れなさそうだしある程度近づいた魔物も出城備え付きの射撃武器の餌食だ。ここまでは順調、だな。


「よおし、第一波はほぼ壊滅。ここからは大型も来るぞ!ノルベルト工房は魔物寄せの香の射出用意だ!前衛も全員準備しとけっ」


ギルドマスターから指示が出ると全員が事前の想定通りに動いていく。そして射出された香によって大型の魔物は少し逸れて進軍して来る。


さらにその後ろにはスライムも見えてくる。ウチの奥様の出番だな。


「行くわよっ!」


言うが早いがまさしく風のごとき速度でスライムの群れに近づき核を切り伏せていくセレスだ。追うように精鋭のメンバーもスライムと交戦を開始していく。


「紫電一閃!」


セレスは機動性に優れている。スライムの緩慢な動きでは捉えられないし更に剣技による正確な剣閃はスライムを分裂させることなく的確に数を減らしていく。


思っていた以上に順調だな。大型の魔物は冒険者の部隊によって討伐されてってるしなんとかなったか。


そう思ったのが悪かったのか?スライムの群れの中にひと際大きな個体が現れる。おいおい、あんなサイズのスライム見たことないぞ?


「ヒュージスライムっ!?」


セレスの叫びが戦場に響くとギルドマスター含め全員の顔が凍り付く。


……どうやらヤバい魔物が混じっていたらしい、ここからが正念場かもしれないな。

拙作をお読みくださいましてありがとうございます。

本作はカクヨム様にて先行完結済みの作品でございますので全16話完結まで、お付き合いくださいましたら幸いです。

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