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第11話 チートな里帰り

家族会議から一週間。準備も終了した俺たち家族はセレスの故郷であるエルフの里へ向かうことになった。


ノルが一番大変だったかもしれない、工房内のアレコレがあったからな。俺もお土産大量生産に追われていた。


レーナは学長への報告だけで良かったらしい。正直羨ましい。セレスは……マスターから色々言われたらしいが結局は押し通した。


こっちから行くわけだが向こうから呼ばれた体にしてたな。そうなればギルドは干渉できない。


エルフの里っていうのはなんていうか治外法権的な場所だ。バチカンみたいな感じかな。ただ場所は国内にあって国内にないというか。


あそこに行くにはちょっと特殊な方法になる。一般的には迷いの森から定められたルートを通り向こうの許可を得てから入国?入里するわけだが。


ウチの場合は精霊を介して連絡を通しておけばどこからでも行けると言えば行ける。セレスは精霊との交信が出来るのだがエルフのなかでもこの方法を取れるものは少ない。セレスと両親、両方が加護持ちだからこそ取れる方法と言える。


そして治外法権的な場所であるがゆえに、里での役職を持てば他の国でもその役職が使える。つまり貴族にならずに普通に生活が出来る。


勿論、里での仕事は増える訳だがそれって数年に一度あるかどうかというレベルの仕事でしかない。なので今回の目標は里で何かしらの役に就くこと、となる。


まぁ里にいる人は大体なんかしらの役に就いてるからな。それ自体はあまり問題ではない。問題は……いつ帰れるか、だ。


その理由はまぁ行けば分かるだろう。そして俺たちはその覚悟を決めて今まさに転移の寸前という状態なのだ。


「みんな準備は大丈夫?忘れ物は無い?一度向こうに行ったら暫くは帰ってこれないわよ」


「うん、何度も確認したから大丈夫だよ。俺はそもそも持ってくものは少ないからね」


「私も大丈夫。必要なものは向こうでも手に入るし」


俺も準備は万端だ。さて、それでは久し振りに行きますかエルフの里。そしてセレスに合図をして精霊の導きにより俺たち家族はエルフの里へと転移した。


自宅の中から行けるのは便利ではあるよね。帰った時の掃除も心配ない。レーナが状態保存の魔法を掛けておいてくれたからな。


そして俺たちは特に大掛かりな演出もなく瞬時に変わった目の前の景色に懐かしさを感じつつ実家へと向かうのだった。




「あらー久し振りね、ノル、レーナ。セレスももう少し顔を見せに来なさいな。あ、ジョージさんお土産いつもありがとうね。今回も《《ゆっくり》》してらっしゃい」


「おお、レーナ!ノル!よく来たな!連絡を受けてからずっと待ちわびてたぞ。本当にもっと会いに来てくれればいいのになぁ。いつでもきていいんだぞ?今回も《《ゆっくり》》していけよ?」


セレスの母ロザリーさんと父のエドモンさんが俺たちを歓迎してくれるのはいいんだが、ゆっくりが不穏に聞こえちまうんだよなぁ……


「入って入って、それで取り敢えずお茶でも飲みなさいな。あ、お菓子食べる?色々用意しておいたのよ?それとレーナには見せたいものがあるのよ。おばあちゃん新しいお花を植えたんだけどね。花が咲いたら薬効もある花なのよ。何かに使えるんじゃない?」


「薬効には興味がある。花はいつ咲くの?」


「そうねぇ。だいたい2カ月くらいかしら?咲いてからは1ヶ月は持つから。それに裏庭いっぱいに植えたから数も十分にあるわ!存分に研究してね」


「私は居られるけど……。みんなが、無理じゃないかな?」


おがあちゃんの植えた花で孫が研究をする、微笑ましい光景じゃないか。


「そうだノル!この前来た時にお前が気に入ってたコメな!あれ今年は沢山作るからの。もう少しで取れるからそしたら腹いっぱい食ってっておくれ。出来も良さそうでな」


「じいちゃん、コメが取れるのはまだ先じゃないかなぁ……来る途中に田んぼは見えたけど……」


「なんじゃ、ほんの数ヶ月じゃないか。そんなすぐ育つんだからジョージ君の教えてくれたコメってのは素晴らしいな!世界樹の実なんて数年はかかるぞ?」


エドモンさんの家庭菜園?いやコメつくりは立派な農業だと思うがそれはそれとして。エドモンさんの作る作物は美味しいからな。ノルの気に入った作物を作るなんて良い爺さんだよな……時間の感覚はバグってるけど


エルフは別にすごい長寿って訳じゃない。人間より少しだけ長生きかもしれない程度だ。ただ老化は遅い。義両親も俺より若く見えるくらいだ。還暦過ぎてるのに。


それなのに時間の感覚が俺たちとは全く違う。年取ったから1年が短いってレベルじゃない。里の人はみんな基本的にこんな感じなんだ。


というのも里に原因があるのかもしれない。里だし、基本は森から入るから普通は気づかないが、この里って島なんだよな。


それも結構デカい。人口は数千人だけど四国くらいデカい。ただみんな魔法も使えるし移動には困らないらしい。セレスだって車移動並みの速さが普通だからな。


そんでもって自然は豊かだし世界樹っていうチート植物があるせいで作物の実りも素晴らしいものがある。


さらにエルフが趣味で作る工芸品は高値で売れるし生活に困ることなんてない。そもそも仕事しなくてもいいくらいには適当に生きていけるチート種族アンド環境なのである。


だからか里の皆さんはおおらかで平和で、そしてのんびり屋さんなのだ。のんびりでは済まないほどに。


因みにセレスはエルフではトップクラスの不器用アンドせっかちである。なので里を飛び出して冒険者やってたってわけ。


ウチの家族ではレーナが一番適性が高いだろうな。俺も主夫としてのんびりと生きている方だがベースが現代人だからなぁ。流石に子の里での生活はスロー過ぎる。


そんでもって島であるゆえに移動手段というか入島手段は特定の場所か精霊を介しての転移となるわけだ。船での移動では数週間かかるだろう。


なので帰る時も転移になるわけだがコレがなぁ。里の人から送って貰わないといけないわけで。


俺たちにとって里帰りって数日とか長くても一週間くらいの感覚なんだけどこの人たちにとってそれは「えっ?もう帰るの?」って感覚。


もちろん軟禁してるわけじゃないので頼みこめば返してくれるがあの表情を見るとな、罪悪感がえぐいんだ。


それにこれはどこの世界でも同じなのかもしれないがじいちゃんばあちゃんにとって孫はとてもかわいいし色んな事をしてあげたい気持ちが伝わってくる。


さっきから二人とも孫に対してあれやこれやと世話を焼いたりプレゼントしたり話をしたりしてるしね。


と言う訳でここに来るとなかなか帰れない。あと一日!もう少しだけ!と向こうから頼まれてなんだかんだ伸びちゃうのが常なんだ。


セレスが冒険者と言う自由業かつ収入も十分だったからってのもあるけど。去年はもうノルもレーナも仕事してたから1週間で帰ったけど落胆した義両親の顔は見るに堪えなかった。


今回はこちらからのお願い事もあるし準備も十分にしてきたから一カ月くらいは滞在できるかもしれない。ノルだけは先に帰るかもだけど。


レーナが残れるならまだ大丈夫かな?娘夫婦だけ残るのも微妙だよね、それでもこの人たちには嬉しいんだろうけど孫が先帰っちゃうのって寂しいだろうなと思う。


俺もそろそろそんな思いに駆られるのだろうか?ちょっとだけ不安になるな。孫に嫌われたら寝込むかもしれんぞ?ショックで。


そんなことを考えながらまったりと過ごし夕食も食べ終わった俺は気が付いてしまった。


お願い事の話まったくしてねぇ。早速この里のスローな感覚に引きずられてしまったのかもしれない俺は


まぁ明日話せばいっか。どうせまだ暫くいるんだし。と布団の中で思うのだった。

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