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1:なんてことない日常

 


ーーーーーーーピピピピッ!




AM7:30。


けたたましい耳障りなアラームの音が聞こえて目を覚ます。




1、2、3、4、5、


はぁ、起きよう・・・。




目覚めは少し億劫ですぐには起き上がれない。


心の中で5秒数えて起き上がるため心の準備をするのだ。




私、白川音夢しらかわねむはどこにだっているようなただのOLだ。


特筆した特技もなければ趣味もこれといってなく、仕事にやりがいは感じているものの仕事人間ではない。


プライベートも彼氏や伴侶がいるわけでもない気楽な独り身で、なにかに生きがいを感じているわけでもなくなんとなく日々を生きている。


退屈な毎日だが、つまらないわけではないしなにか事件が起きることのほうがよほど億劫なのでこれでも大方満足している。




歯磨きをして顔を洗って、身支度と朝食を済ませ8:30には家を出て出勤する。




「おはようございまーす」




「おはよーう」


「おはよー」


「おはようございます]




挨拶をしてオフィスに入る。


各々返事が返ってくる中自分のデスクに移動して腰を下ろす。




「ねー先輩!聞いてくださいよ!!」




着席するなり目の前のデスクにいる後輩、梓沢明あずさわあかりが声をかけてきた。


明るく人懐こい性格でお喋り好き。よく手入れされた落ち着いた色味の茶髪をポニーテールにまとめた猫目の可愛い系の顔立ちだ。


同性からも異性からも好かれやすい世渡り上手なタイプだろう。


強いて悪い点として挙げるなら、噂好き・ミーハーでお金遣いが少し荒いところだろうか。




「ふっふっふ、今日のネタはビッグニュースですよ!


なんと!!あの堅物課長に彼女がいたんです!」


「えー、それがビッグニュース?課長もいい年なんだし彼女のひとりやふたりやさんにんくらい・・・」


「違います違います!驚くのはそこじゃなくてですね、なんとその彼女、15歳も年下なんですって!」


「・・・おぉ、結構な年の差カップルだね。」




毎度毎度、どこから情報を仕入れてくるのだろうか。


ちなみに課長は少し離れたデスクで普通に仕事をしているので絶賛小声で会話中である。




「それでね、その彼女、どこで知り合ったと思います?アプリですよマッチングアプリ!


あの堅物課長がまさかマッチングアプリやってたなんて笑っちゃいますよね!あたし今日課長の顔見たら笑えちゃって仕事できないですよ!」


「こらこら、さすがに失礼だよ(笑)」




確かにイメージはないが、そこまでのことではないと思う。


会話の内容が聞こえているわけではないと思うが、先ほどお喋りをして仕事の手が止まっている私たちをチラッと見ていたので、そろそろこのお喋りも解散の頃合いだ。




「ほら、そろそろ叱られるから仕事仕事!怒りに来た課長見て笑っちゃったら困るでしょ(笑)」


「あ、それはほんとに無理です!叱られてても絶対顔にやけちゃう!仕事しまーす。」




仕事に戻った明を確認し、課長の視線もチラッと確認。


仕事に戻ったことを確認した課長はもうこちらを気にしてはいないようだ。よかった。










ーーーーーーーーー








AM11:30




昼休憩の時間である。


いつも同期の赤石萌あかいしもえと露原瑞奈つゆはらみずなとともにランチをする。


ちなみに、瑞奈は同じ部署だが萌は営業部と部署が違うためランチできる頻度は少ない。




いつものように瑞奈と一緒に会社のロビーまで行って萌と合流した。


そしていつものようにおなじみのカフェで日替わりランチを頼むのだ。




「これ見て!彼氏が買ってくれたバッグ超かわいくない?」




瑞奈がずいとスマホを差し出してきた。




「あ、これこないだ欲しいって言ってたやつじゃない?」


「そうなの!彼氏の前で世間話的に話しただけだったんだけど、こないだ記念日の日に買ってきてくれて!まじできた彼氏すぎない!?」


「うんうん、できた彼氏さんよねー。結婚はまだしないの?」


「プロポーズ待ちしてて、そろそろじゃないかなー?って♡」




それ半年前も言っていたと思うんだけど・・・。


本人は幸せそうなので水は差さずにおくか。


楽しそうな瑞奈を尻目に萌は今日のランチをハンバーグにするかドリアにするかで真剣に悩んでいる。


間違いなく瑞奈の話は聞いていないが、瑞奈は気にしていない。


瑞奈の話は基本恋バナ、それも彼氏ののろけ話が中心だが、仕事一筋の萌は興味がないのだろうと思う。




「決めた、今日はハンバーグにする。この後ちょっと大きい案件だから気合入れるわ。」


「そうなんだ?いつも大変だね」


「まあ大変は大変だけどその方がやりがいあるし。すみません、注文お願いします。」




萌はかわいらしい見た目に反して割とドライな印象を受けるクールなタイプだ。


派手できゃぴきゃぴした印象の瑞奈とは正反対。ふたりはいつもそれぞれ自分のしたい話を私にして、どちらかが話している時はどちらかが黙っていることが多いので、交互に私と話をしているような感じだが不思議と仲は悪くないのだ。










ーーーーーーーー






PM15:45




「すみません白川さん、ちょっといいですか・・?」




ランチタイムが終わり午後の仕事に戻ってバリバリ働いていると、先輩である藤堂嵐とうどうらんが声をかけてきた。


長身で細身のひょろっとした印象の眼鏡男性社員である。目立つタイプではないこの先輩は仕事はできるのだが、人によっては話しかけることができないコミュ障でよく私に仕事を振ってくる。


隣のデスクにいる瑞奈は仕事の合間に彼氏とLINEに興じているくらい余裕があるようなので仕事はそっちに振っていただきたいが、おそらくギャルっぽい瑞奈は一番話しかけるのに躊躇してしまうタイプなのだろう。




「なんでしょう?」


「ちょっと資料の作成をお願いしたいんだけど・・・」


「なんの資料ですか?」


「今度若年層をターゲットにした新商品を売り出したいらしくて・・、若年層にはSNS広告が一番手っ取り早いから各SNSの情報をまとめる必要があるんだけど・・・」


「なるほど分かりました。期限はいつまでですか?」


「それが、3日後で・・・」


「三日後!?それはまたタイトなスケジュールですね・・」


「そうなんだ!だから手伝って欲しくて・・・」




そういって見せてきたメモ用紙には情報をまとめないといけないSNSの種類が書かれていた。


いくつかのSNSに〇がついており、その〇がついた方を指さしておどおどした調子でつづけた。




「僕は最近でたこのSNS情報をまとめるから・・・、」


「分かりました。〇がついていない方のSNSを私がまとめればいいんですね、3日後の退社時間までに仕上げればいいですか?」


「あ、ありがとう・・。それで大丈夫・・。」


「分かりました。じゃあ終わり次第データを先輩のPCに送りますので。」




・・・今日は残業かな。










ーーーーーーー








PM20:00




2時間ほど残業をして会社を出たところである。


藤堂先輩から頼まれた資料の作成もなんとか期日に間に合わせることができそうだ。




本当になんの変哲もない、面白みのない日常。


これが私の送る毎日だ。映画やドラマだったら明らかに主役にはなれないモブAの人生。


ーーそれが私、白川音夢の日常である。













読んでいただきありがとうございます。

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