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第五話:闇夜に動く影! オカマ剣士、忍び寄る魔物の襲来を前に

 あれから数日が経ち、タルーネ商業街は穏やかな日常を取り戻しつつあった。ルイナは店先で元気に商売をし、レイは華やかな衣装で街の噂話に花を咲かせる。ジュンも客寄せ程度に剣の舞を披露したりして、なかなか愉快な毎日だ。


 だが、その平和な光景を、闇に潜む目がじっと狙っていることに誰も気づいていなかった。そう、先日ジュンに一泡吹かされた大商人ガルバードの差し金による、新たなる陰謀が動き出しているのだ。


 夜も更けたある晩、ジュンはルイナ宅の一室で静かに横になっていた。ぼんやり天井を見つめながら、

「ふぅ、平和なのはいいけど、あの嫌味な大商人がこんな簡単に引き下がるとは思えないわね。」

 と呟く。空気にはかすかな緊張感が漂う。


 そこへ、廊下から足音が近づき、レイが部屋に滑り込んでくる。パタパタと派手な衣装の裾を揺らしながら、囁くような声で言った。

「ジュンちゃん、なんだか街外れの林で奇妙な声がすると噂になってるわ。魔物が出るなんて噂もあって、商人たちはまた怯え出してるの。」

「魔物ねぇ…。この世界、そういうファンタジーな存在もいるでしょうけど、タイミングが良すぎない?」

 ジュンは目を細める。あのガルバード、手下だけでなく魔物まで使って街を混乱させる気かもしれない。


 翌朝、街外れへ足を運んでみると、荒れた草むらに血のような染みが点々とあり、木々の合間から低い唸り声が聞こえる。早速ジュンが剣を構えると、ガサガサッと茂みから巨大な狼のような魔獣が飛び出してきた。


「わっ! 結構な大物じゃない!」

 魔獣は鋭い牙をむき、ジュンを睨み据える。気性が荒そうだが、ジュンはむしろ楽しげな笑みを浮かべる。

「なるほど、あたしにとっては丁度いいウォーミングアップかしら。さぁ、いらっしゃいな。」

 軽く腰を落とし、剣先をほんの少し下向きに構える独特のフェンシングスタイル。魔獣が突進してくる刹那、ジュンはほとんど残像さえ残さずに横へステップし、剣先で喉元を突く。ギリギリ致命傷にはしない、相手を牽制する絶妙な一撃だ。


 怯んだ魔獣が再び飛びかかるも、今度はジュンが回し蹴りめいた動きで側面から牽制し、その後ろ足をさっと叩く。まるで踊るような連続攻撃に、獣は次第に戦意を失う。最後にジュンは、まるで見せしめのように剣を頭上に掲げ、

「…オカマなめんじゃねぇぞ、ゴラ!」

 ビシッと決め台詞を放つと、魔獣は怖気づいてそのまま林の奥へと逃げ去っていった。


 ちょうど遅れて駆けつけたルイナとレイは、その光景を目撃して息を呑む。

「ジュンさま…魔獣まで追い払うなんて!」

「キャー、ジュンちゃんたら頼もしすぎるわ! ほんとに最強なんだから♡」


 しかし、ジュンは剣を収めて冷静な眼差しを街へ向ける。

「この魔獣、ただの野生じゃないわ。何かしらの手が入ってる。恐らくガルバードの仕業ね。あいつ、わざわざ魔獣を此処に放り込んだんだわ。」

 根拠は確固たるものではないが、ジュンの勘は冴えている。悪党が不自然に現れる魔獣…それは何らかの手段で操ったか、あるいはエサを撒いて街に誘導したのかもしれない。


 ルイナは不安げな面持ちで、

「そんなことまで…どうしてそこまで街を混乱させようとするのでしょう?」

「支配ってのはね、人々が恐怖と混乱に陥ったとき、一番簡単なのよ。わざと困難を作り出して、“俺に従えば安全だ”って言えば、人は弱って従うもの。汚いやり方だけど、古典的な手法ね。」


 レイが大きく溜息をつく。

「最低ね。お金と恐怖で人を縛るだなんて、話にならないわ! 何が大商人よ、オカマ剣士ジュンちゃんがいる限り、その企みなんて粉々よ♡」


 ジュンは静かに頷く。

「そうよ、あたしがいる限り、街の人を泣かせる奴は許さない。人情に厚いオカマがいるってこと、思い知ってもらうわ。ふふっ。」


 こうして、魔獣退治でさらに名声を高めたジュンは、ガルバードが裏で糸を引く陰謀を断ち切るべく、より深く調査することを決意する。街を牛耳ろうとする腐った商人相手に、金も暴力も通用しない“存在”がここにいる。そして、笑いと人情と、ほんのりした涙を携えて清廉なる道を進むオカマ剣士が、さらなる試練を迎えようとしていた。


 第五話、ここにてお開き。次回、暗躍するガルバードの計略が明らかに!?

 皆さま、乞うご期待。



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