見習い
次の日になり、入団式が始まった。国王の長話が終わると、今度は王子の。その次に総師の長話があった。重要なこと以外ほとんど聞いてなかった。そして部隊の紹介をしてやっと終わった。
「な、長かった。」
「分かる。」
「はぁ。サンドラ、最初の授業って何か分かる?」
「ドラゴンと合同授業なんだけど、ペアを組んで他のライダーのドラゴンと会話出来るようにするって奴だ。」
「ふーん。それをして何になるの?」
「他のドラゴンとの意思疎通は重要だぞ?ドラゴンは使い方によっては伝言にもなる。遠く離れていても、念じれば伝わるからね。仲間が遠くにいたとして、どういう状況なのかを伝えられる。」
「おー、便利だな〜。手紙を書かなくてもいいってことだもんね。その次は?」
「基礎魔法の特訓。その次が座席授業のドラゴンとライダーについて。その次は歴史だ。」
「へ〜。よく知ってるね。」
「入団式の後の授業は必ずこれをやるんだって。さ、そろそろ始まるから少し急ごう。」
僕達見習い生は離着陸の元に集まった。ドラゴン達は既に待っていた。
アメリア。昨日はどうだった?
ドラゴンの住処について色々と教わっただけです。見てください。鞍を着けて貰ったんですよ。
あ、ほんとだ。いいね、似合ってるよ。
ありがとう。
「皆〜!集まったか〜?早速だがペアになってくれ〜!」
教官がそう叫ぶ。サンドラの言う通り、他のドラゴンと会話するための特訓が始まった。サンドラのドラゴンは茶龍のロースだ。でもこのドラゴン、どこかおかしい。前脚がとても小さい。ドラゴンなのに、翼で身体を支えていて、まるでワイバーンだ。
「ロースさ、生まれつきなんだ。卵が届いた時、渡してきた人に言われたんだ。卵を保管してるところに厭世部隊が入り込んでいたみたいで、ロースの卵は邪龍に傷つけられたって。それで前脚に障害を持って産まれちゃった。ロースは気にするなって言ってくれるけど、でもやっぱりオイラは辛いよ。本来なら健康体で産まれてきてくれるはずだったのに。」
僕は何も言えなかった。ドラゴンもちゃんと生き物なんだなと思い知らされたし、身近に障害なんていなかったから、声をかけるにも、失礼なんじゃないかって。そういう考えも、きっと失礼なんだろう。大事なのは、変に特別視せずに普段と変わらずに接することなんだと思う。
フリッグ。お主はそういう考えが出来るライダーなのだな。
え、ロース?
いかにも。
「あれ?その感じもう君たち会話出来たの?いいな〜。1度他のドラゴンと会話できるようになったら、ペア関係無しに他のドラゴンと会話出来るんだって。」
「へ〜。ロース。フリッグだ。よろしくね。」
あぁ。
そんなこんなで、苦戦しつつもサンドラもアメリアと会話できるようになった。
「アメリア凄い声綺麗だな。女性の中の女性って感じするよ。」
「でしょ?僕も初めて声聞いた時ちょっとびっくりしたよ。」
ふふ、お世辞をしても何もございませんよ。
「お世辞じゃないよ。本心だ。」
ありがとう。
そしてどんどん授業が進んで行った。基礎魔法の特訓だ。最初なのでまずは炎を出せるようにと教官から教えられた。初めて扱う魔法は呪文を唱えないといけないそうだ。使えるようになったら唱えなくても念じるだけで使えるとのこと。ドラゴン達は離れて基礎能力である炎ブレスを吐けるように練習していた。
次はライダーとドラゴンについての座席授業だ。実技じゃないため退屈だった。寝てる者もいたけど、ここは学校とは違う。容赦なく叩き起されてた。
ライダーは人のようで人では無い騎龍人という種族に別けられている。魔法を扱えて高い身体能力、ドラゴンの飛行速度に耐えうる強靭さに視力の発達、長寿と。見た目以外は人では無い。そして、ライダーの証。またの名を騎龍晶というものが幼龍に初めて触れた場所に埋め込まれるのだという。石の色は相棒のドラゴンの副色との事。僕の場合ラベンダー。サンドラは薄茶色だ。
ドラゴンは色族によって強さが決まるとの事。現在分かっている強い色が順に、黒と白、金と銀、赤と青なのだと言う。これらの色は卵が出来にくく、基礎能力が非常に高く、意見が合わないことが非常に多いのだそう。そのため精鋭部隊になるのだと。それ以外の色は基礎能力はそこまで高くなく、強くなりにくい。これらは一般部隊だ。また、色族の副色によっても強さが決まる。こちらは精鋭色のみ明確に分かっており、それ以外は分かってない。だが、傾向として色族より薄いもしくは濃い色が強くなるとのこと。そしてドラゴンは寿命が無く、外傷もしくはライダーの死亡によって死亡する。食事も必要無いそうだ。
次は歴史。ライダーの誕生からだ。と言ってもライダーの誕生は神話の時代まで遡る可能性があるから事実と異なる可能性がある。
ドラゴンは神々のお使いとされていて、ダヴィンレイズ王国の善い行いを見込んでドラゴンの卵を初代国王に渡してライダーが誕生したという伝説がある。しかし現代ではドラゴンは王族をもう選んでないとの事。しかしつい最近、王子がドラゴンに選ばれたそうだ。それによって国中はかなり大騒ぎになったのだとか。
今日の授業を全て終えると僕はフロアの広場でおやつを食べながらのんびりしていた。
「ねぇフリッグ。この後時間ある?」
「ん?特に無いよ。」
「じゃあ今から城下町の散策に行かないかい?きっと楽しいよ。」
「ほんとに?うん!行きたい!」
「じゃ、準備しよ!」
精鋭色の一番強い副色は以下の通り。
黒・深紅
白・紺碧
金・向日葵色
銀・勿忘草色
赤・橙
青・水