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王国

「荷物はこんなものでいいかな。」

夕方になり、僕は荷造りをしていた。夜、この村を出発し、王国に向かう。アメリアは森の中で待機してもらっている。

再度荷物を確認し辺りを見回すと、軽く頷いて、手紙を書いた。旅に出ます。今までありがとうございました。ということだけを書き、家畜小屋の入口に置いた。家畜は村の人々皆で世話をする。僕は小屋に入ると、動物達に一言伝えた。

「皆、ありがとう。元気でね。」

荷物を持ち、村を出た。そして振り返って言った。

「皆さん、今までお世話になりました。」

こう見ると、寂しくなるな。……よし、行こう。ダヴィンレイズ王国に。

ダヴィンレイズ王国。最北に位置し、最も歴史が長く大きく、強い国。ドラゴン騎士団があり、ドラゴンと共に暮らす。

僕はアメリアと合流し、荷物を括りつけた。

「アメリア、重くない?」

私はドラゴンですよ?このくらいお易い御用です。

「ありがとうアメリア。」

僕はアメリアの背に乗ろうとした。が、どうやって乗るのだろうか。すると、アメリアは座り込んで乗りやすくしてくれた。

「あっ、ありがとう。」

お気になさらず。

「ちょっと、居心地が。ごめん、アメリアが悪い訳じゃ無いんだけど。」

無理もありません。本来なら鞍を着けてから乗るものですから。馬もそうでしょう。

「確かに。いきなり飛んで大丈夫かな。」

落ちたとしても私が捕まえますよ。

「うっ、ありがとう。まぁ、ここで落ちてたら騎士団なんてやっていけないよね。行こっか。」

その調子です。フリッグ。

僕はアメリアの背中に生えてる棘をしっかり掴むと、アメリアは翼を広げて羽ばたいた。アメリアはゆっくり飛んでくれた。

「うー、ちょっと怖いな。」

早くも地面が恋しくなった。というのも、空高くいると、風がビュービュー言っていて、飛ばされそうになる。

しばらく飛び続けると中央地帯を超えて北部地帯に差し掛かり、王国が見えてきた。辺りは薄らと明るくなっていた。

「腰が……痛い。」

もうそろそろですよ。

改めて辺りを見回すと、なんと他のライダーも数十人いた。ゆっくり飛んでいるから、僕と同じ入団手続きに来たのだろう。すると、猛スピードで王国に向かうドラゴンとライダーがいた。一般人なら恐らく見えない速度だ。ライダーだからなのか、僕はその一瞬を捉えることが出来た。

「あれ、ステラだよ!あの黒いドラゴン!見覚えがある!目元に紅の鱗が5つあった!それにゴツゴツした蝙蝠のような翼、尻尾の先端も斧のようになってた!」

それは深紅ですか?

「そう!紅よりも深い。」

黒龍族の中で最も強い配色ですよ。それにステラ……女性ですか?

「強い配色?……うん。ステラは女性だよ。とても美しい女性だ。」

なんとも変わったドラゴンが居たものですね。

なんという速さなのだろう、ライダーですら目で追うのが難しい。

ドラゴンがあのように速く飛ぶには、翼を畳んだ状態を維持しなければなりません。

「あの飛び方、皆できるの?」

いいえ。単に速く飛ぶことは可能でしょう。ですが、定期的に羽ばたきを入れないと落ちてしまいます。ですが最高速度になると、1度も羽ばたかずに飛べます。最高速度を出すためには畳み方を極めないと出来ない芸当です。

あまり意識してなかったけど、ステラってもしかして凄いライダーなのでは?

そんな話しをしていると、ドラゴンの住処前の大広間、離着陸に着いた。僕と同じような他のライダー達も降り立つ。ステラは……流石にもういなかった。

「よぉー!君たち!これで全員か?点呼するぞ〜!」

野太く、おちゃらけた声が響く。声のする方に向くと、ちょっとぽっちゃりして髭が濃い男性と、一頭の青いドラゴンがいた。一人一人とドラゴン達の名前を呼んでいる。しばらくして僕達の名前も呼ばれた。

「全員いるな。ダヴィンレイズ王国へようこそ!オレはバーラット。こいつはランジェス。オレの相棒だ。オレはドラゴン騎士団の教官だ。まぁ基本的に軍の特訓を指導してるんだが、見習い生優先で今回は軍の皆には自主的に特訓をしてもらってる。何か質問は?」

すると、1人のライダーが手を挙げた。

「あの、教官は1人しかいないんですか?」

「君は、サンドラか。あぁそうだ。というのもな、教官はライダー一人一人の心の支えになるような者じゃないと適任じゃない。そういう奴はオレ以外にいなくてな。居たとしても大抵の奴は他の任務で忙しくてな。そんなこんなで一人でやってるって訳だ。」

「ありがとうございます。」

「他には……いないな。よし、じゃあ皆!着いてこい!ドラゴンの皆はランジェスに着いていけ。」

アメリア、また後で。

えぇ。

僕らは教官の後を着いて行った。地下に行くようだ。

「ここは城の地下だ。ライダー達は地下で暮らしている。」

凄い、地下なのに暗くない。それに窓もある。土しか見えないのかと思ったけど、ちゃんと外が見える。魔法で映してるのだろうか。しばらく歩くと、地図の前に来た。

「ここは総師の部屋だ。この後挨拶する。気をつけろ?総師はめちゃくちゃ怖い。怒らせないようにな。そしてこの地図、こっちが地下の地図だ。地上の城内と同じくらい広い!あぁ、見習い生の内はコモンフロアとエリートフロアには行かないようにな。一般部隊専用と精鋭部隊専用のフロアだ。ルールで絶対ダメという訳じゃないが……痛い目を見ることになる。こっちがグラダリウス大陸の地図だ。よし、挨拶をするぞ!」

教官は扉をノックした。

「総師。失礼します。」

「入れ。」

「新しいライダーが入団しましたのでご挨拶に参りました。さ、皆入るんだ。失礼のないようにな。」

部屋に入り総師を見ると、少し怖い。少々長めの白髪。真っ黒な目に、真っ白な瞳孔。顔中はキズだらけで、額には緑色の菱形の石が埋め込まれていた。多分、ライダーの証。

僕達は一列に並ぶと敬礼した。

「ダレスだ。ドラゴン騎士団総師。見習い生だから過ちは大目に見といてやるが、正式に軍になれば容赦はしない。」

総師は何か資料を見ながら表情を一切変えずに渋い声で淡々と言った。

「……下がれ。」

「失礼します。」

僕達は部屋から出た。そして、あるフロアに来た。

「ここは見習い生専用のフロアだ。ここで寝泊まりや勉強をする。よし、皆!リボン付きのバッジと部屋の鍵をやる!来い!」

僕達は適当に並んでバッジを貰った。

「相棒のドラゴンと同じ色の部隊紋章だ。これは軍に入っても使われるから大事にするんだぞ!リボンは魔法で着けられてるから外せないようになってる。よし、皆各自自由にしてくれ。明日は入団式の後授業だ。それまでしっかり体を休めとけよー?」

そう言うと、教官はフロアを出ていった。

見習い生は毎年少ないから一人一部屋らしい。僕は鍵の番号を見て、荷物を置きに行こうと歩き出した。すると、誰かが声をかけてきた。

「ねぇ。」

「ん?君は……あぁさっき質問してたサンドラ、だっけ?」

「うん。そうだよ。えっと、友達になって欲しいんだけど。」

「え?いいけど、どうして?」

「オイラ予め色々復習しててさ、最初にやる授業は必ずペアでやるみたいで、君とペアになりたいな〜って。」

「他にいないの?」

「ダメ?」

「い、いやいや、ダメじゃないけど、なんで僕なのかなって。」

「んー、何となく。あ、君が話しやすそうだったからってのもあるかも。」

「ふーん。よく分からないけど、いいよ。」

「サンキュー!よろしく、フリッグ!」

「うん!よろしくサンドラ!」

ダヴィンレイズ王国のモットーは『インスィエーメ・コン・ドラッヘ/龍と共に』

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