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司令官

目を覚ますと、医務室にいた。あの後どうなったんだろう?いや、それよりアメリアは?

ぎゅっと目を閉じて深呼吸する……良かった、無事みたいだ。

僕は騎龍晶を見た。もう元の薄紫色に戻っていた。

「おぉ起きたのか。大丈夫かい?」

「ワイアット。うん。ありがとう。あの後どうなったの?」

「ショウラが援軍を要請してくれてたみたいでな。金龍部隊が来てくれたんだ。それで数の差であいつは撤退してったよ。」

「そうなんだ。ごめん、手間かけさせて。」

「謝ることは無いだろ?お前さんお手柄だったし。ビースも安心してお前に紫龍部隊長を任せられるって言ってたぞ。ところで、見たか?あれ。」

「あれ?」

「ほら、どす黒い紫色の光線だよ。あいつが黒魔術がどうのって叫んでてさ。」

「えっと……ごめん、見てない。邪龍をまくのに必死で。」

咄嗟に嘘をついてしまった。こんなのバレたら……想像するだけで背筋が凍る。

「そうかぁ。じゃ、俺はそろそろ行くな。お前さんの友人、サンドラだっけな?あいつにも伝えておくよ。」

「ありがとう。」

ワイアットは部屋を出た。僕はベッドから降りた。嘘みたいに体が軽い。全然復帰しても良さそうだが、さすがに医療担当者に言われるまではダメか。

再び騎龍晶を見る。すると、一瞬だけどこかの景色が映った。

『頼む!罪はしっかり償うから妻と息子には手を出さないでくれ!息子はまだ産まれたばかりなんだ!』

知らない記憶……いや、どこかで。辺り一面が緑色の火に包まれていてそれで目の前に怒りを顕にして剣を持った男がいた。その男も見覚えがある。でも確実に分かるのはこの声は……父の声だ。

僕は首に触れた。違和感のあるザラつき。横にある鏡で自分を見る。首には傷跡があった。物心ついた時には既にあった傷だ。

僕って……なんなんだろう。


「フリッグ、あなたよくそのことを私に話せたわね?」

「どういうこと?」

「私が1番総帥や他の皆と繋がってるのよ?もしバラしちゃったら。」

「君がそういうことはしないって分かってるよ。」

「何よそれ。もう。でも、モートリックに食われないようにね?」

「まさか。ちゃんと良い人悪い人の区別はつけるよ。」

「ねぇ、フロル……って言ったわね。」

「それがどうしたの?」

「話しに出てきたルーシーって名前、私はそいつと対峙したことがあるの。重傷を負ったのもそいつが原因。」

「君でも苦戦するんだ。」

「複数体邪龍を出されるなんて思ってもみなくて。そいつが幹部と言っていたの。多分、他にもいる。そいつら、思った以上に強いの。普通の邪龍より強い邪龍を複数体作り出せる以上、黒龍白龍部隊でも厳しいかも。」

「総帥が何とか出来ないの?」

「確かに総帥なら余裕でしょうね。でも、総帥が自ら動くのは城に危険が及んだ時だけ。総帥が戦うのは本当に最終手段なのよ。」

「実際に総帥が戦ってるところは見たことないけど、君がそこまで言うなら本当に強いんだろうなぁ。」

「私の天と地の差もあるから。」

僕はチラッとステラがいつも身につけているペンダントトップを見た。会った時はただの鉄か銀あたりかと思ってたけど、鉄隕石だ。どうやって手に入れたんだろう。


あれから数日が経ち、ついに僕とサンドラは部隊長となり、僕は一般部隊司令官となった。

今日は初めて司令官会議で僕とステラ、総帥と対面だ。リーブが言っていたのはこれか。

「失礼します。」

「入れ。」

中に入ると。ステラは既に居た。何か資料を見ているようだ。そして資料を机に置き、僕の方を見た。

「……え?」

「あっ。」

そういえばステラに司令官になるってこと言ってなかった。

ステラは驚いた表情をしていたが、すぐに真剣な表情になった。

敬礼をし、自己紹介をする。

「この度一般部隊司令官に着任することとなりました。紫龍部隊長フリッグと申します。」

「黒龍部隊長精鋭部隊司令官ステラだ。」

今まで聞いてきたステラの声とは違う男性らしい太く鋭い声で初対面を装う。

「座れ。」

返事をし、着席する。リーブの言う通りだ。空気が重い。とにかく重い。

「精鋭部隊の近況はどうだ?」

「はい。まず、銀龍部隊、赤龍部隊からジュンブレス王国の幹部と言われる者が出現していると報告があります。私が担当する深夜任務でも遭遇しました。」

「ほう。それで?」

「どの部隊も重傷者数名、負傷者多数報告が挙がっております。幹部の出現により、我が国が危機に陥る可能性が大いにあると見てよいでしょう。」

淡々と話が進んでいく。僕も報告し、今後について話し合う。正直言って会議中のことはほとんど記憶にない。普段会うステラと全然違うのと、総帥が恐ろしくて詰まってしまう。それにこんな真面目なことは柄じゃないから慣れない。こんなんでやって行けるのだろうか。そして会議が終了し、僕達は総帥に敬礼した。まず精鋭部隊であるステラが総帥に一礼し、部屋を出る。次に僕も同じようにした。

部屋を出ると、少し離れたところにステラが壁によりかかって僕の方を見ていた。苦笑いしながら言う。

「なんで教えてくれなかったのよ。あの場で素が出るとほんとえらいことになるから勘弁して。もう。」

「ごめん。伝え忘れてた。ってか、君いつもと全然違うじゃん!」

「あれがいつもの私よ。そろそろ離れましょ。ここに長居してると誰かに見つかるわ。」

僕達は一旦別れた。

「司令官会議どうだった?」

コモンエリアに入るや否やサンドラが話しかけてきた。

「リーブの言う通り空気が重くてほとんど記憶に残ってないや。」

「はは!それ大丈夫かい?」

「う、うん。メモは取ってるから。」

「その方がいいね。あ、聞いてよフリッグ。オイラ積極的に働くおかげで任務がたくさん貰えるようになったんだ!」

「よかったじゃん。調子はどう?」

「うん!サイコーだよ!この前なんか厭世部隊たくさん追っ払っちゃった!」

「すご!僕はちょっと苦戦しちゃうな。戦闘好きだと強くなりやすいのかな。」

「フリッグ、何も落ち込むことは無いよ。君は類稀なる才能の持ち主だ!レガーレ、オイラは未だに扱えない。それに、それは君の良いところだよ。戦闘好きは負傷し易い。死んだら元も子もないからね。」

「ありがとう。君が友達でよかった。」

モートリック

都市伝説で語れる狡猾な生物。多種多様の生き物に姿を変えることができ、弱い生き物を装って騙された生き物を食らう。そのため、他者を信じすぎるといつか騙される。という意味のことわざができた。

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