復帰
数日経ち、多少足が動かせるようになったためリハビリをしていた。痛みのせいか苛立つ。
「ふーむ。やっぱりライダーは治るのが早いね〜。これが人間だと、動かせるのはまだ数ヶ月はかかる。」
「人間があんなもん食らったら死ぬだろ。」
「8割がたは即死だろうね。そもそも黒魔術による圧縮破壊は物体によるものとは訳が違う。運良く潰された時に生き残れたとしても、体の中に黒魔術が入り込むからゾンビみたいになるか、蝕まれて死ぬだけさ。まぁその前にあいつらなら人間は噛み殺すっていうめんどうなことするよりもブレスで一掃してるだろうけどね。」
「なんでお前いつもニヤニヤしてんだ?」
「ん?いや〜戦闘狂の手に負えない君がこうして動きが制限されてるところを見るとおかしくってね。」
「殺すぞ。」
「嘘嘘冗談だよ。」
「ったく。疲れたからもう戻る。」
私は杖を使ってベッドまで戻った。
「完治したらボコボコにするからな。」
「それ前も言っていたけど、結局暴力振るわなかったよね。イーサンはほんとに殴りかかってきたけど。」
「お前が怪我すると助かる命も助からないからな。」
そう言いながら私は布を目に置いて暗くした。
「君のそういうところが色んな人を惹きつけるんだろうね。ま、戦闘狂なのはドン引かれてるけど。それじゃあ失礼するよ。」
レイサーが部屋を出ていくと、当たり前だが静かになった。
……フリッグ、来ないな。正式に加入したから忙しいのかな。それとも、私が重傷である報せが届いてないのか。いや、行くか行かないかなんて自由だから無理しなくてもいいんだけど……寂しいな。
すると、ガチャっと音が聞こえた。誰か来たのか。
「なんだ寝てるのか。」
「ん、イーサン起きてるよ。どうしたの?」
私は布を取ってイーサンを見た。
「なんかして欲しいこととかあるか?」
「ん〜特には。……あ、書き途中の本があったな。それ、取ってきてくれる?ペンも一緒に。続き書きたいから。」
「了解。」
そう言うとイーサンは部屋を出て行った。しばらくすると、戻ってきた。
「ほいよ。」
「ありがとう。お礼に…」
「また肉奢ってくれ。」
「また?……分かったわよ。でも前よりかは抑えてよね?ってまさかそれ目当て?」
「へーい。い、いやー?俺が肉好きなこと知ってるだろ?」
「まぁ。」
「じゃ、完治したらよろしくな。」
そう言うとイーサンは勢いよく出て行った。
「まったく。」
私は本の続きを書き始めた。邪龍についての本だ。
しばらく書き続けると、中身は完成した。後はタイトルと著者を書くだけ。ナイフを取り出し、表面の皮を薄く彫って字を書いた。
「これでよし。今度司書に頼んで本棚に入れてもらわないと。」
その後、イーサンに頼んで本を出すことが出来た。誰か読んでくれるといいのだが。
「大分足動くようになったんじゃない?そのまま片足だけで立ってみてよ。」
私は片足を浮かせて90度曲げた。もう片足もやってみる。
「片足ずつY字バランスをして、I字にしてみて。」
私は言われた通りにやった。まずY字。
「辛くない?」
「特には。」
これ必要なのか?……いや、こいつ珍しくニヤニヤせずに真剣な顔してるから多分必要なのか。
「じゃあ次I字。」
「はい。」
「普通に出来んじゃん。もう復帰しても大丈夫そうだね。」
「ほんとか?」
「そこまでできるなら平気だよ。あぁでも、念の為様子見ね。復帰した時、足が辛くなったらすぐここに来て。」
「りょーかい。ありがとうな。」
そう言うと私は荷物を持って医務室を出て行った。結局フリッグは来てくれなかったな。まぁ、単なる私の我儘だからいいんだけど。
部屋に戻ってくると、ドアをノックした。
「ステラ!お前復帰か!?」
「えぇ。世話になったわね、イーサン。ありがとう。」
「ほんと良かったよ。」
「ねぇ、ところで今点数ってどうなった?」
「……大分やばい。黒龍部隊、すんげぇミスしまくっちまってさ。……黒龍の方が上で約20点差。」
「あなた達何してんのよ。」
「あはは、すまんすまん。でもどうせお前が巻き返すだろ?」
「結局私頼りなのね。はぁ。で、肉屋はどこの?いつ行くの?」
「シャトラ。いつもんとこ。今行こうぜ?」
「まぁ、いいけど。またフリッグ達呼んでもいい?」
「……はぁ?まじで?」
「な、なんでそんな怖い顔するのよ。前一緒に行ったのに……分かったわ。」
そんなこんなでイーサンと一緒にお肉を食べた。イーサンとは割り勘でよく外食する。
夜になり、いつもフリッグ達と特訓してる場所で軽い運動をした。武器を扱いながら逆立ち等の技も使ってみる。足は本当に大丈夫なようだ。
グレイヴ、聞こえる?
……ステラか。聞こえてる。
ごめん、すぐ無事なこと知らせなくて。
ふん。お前のことだ、どうせ無事なことくらい分かってる。それに、無事じゃなかったら俺もとっくに死んでる。
確かに。
もう復帰してるのか。
お、正解。よく分かるわね。
何年一緒にいると思ってるんだ。
それもそうね。ねぇ、一緒に稽古しましょうよ。
やれやれ。治りかけだってのに。
ありがと。場所は…
まだ何も言ってない。いつもの特訓場所だろ。視界共有ですぐ分かる。
しばらくすると、グレイヴがやってきた。
「やるのは空中稽古ね。」
やれやれ。
私はエルテノ・レガーレで天高く舞い上がった。体の大きなグレイヴがもうあんなに小さく見える。
グレイヴー!早くー!
やれやれ。
グレイヴも私の元まで飛んできた。
じゃ、始めま…しょ!?
私の真横スレスレにグレイヴの鋭利な尻尾が飛んできた。
油断大敵だ。
不意打ちなんて卑怯!
敵の前だと不意打ちだらけだろ。
あはは、確かに!
そう言いながら私もグレイヴに攻撃した。グレイヴは器用に翼で受け流す。
私達はお互い翼や尻尾を打ち付けあった。私には騎龍武器もある。
他のライダー達がやらない事、それは相棒のドラゴンとの稽古だ。ドラゴンと戦うことなど無いため誰もやらない。私とグレイヴの絆が人一倍強くなったのもおそらくこれのおかげ。最初はいつも地上で稽古をしていたけど、エルテノ・レガーレを扱えるようになってからはよく空中稽古をする。ずっとやってると、お互い考え方が似るのか、よくシンクロして中々決着がつかないことがある。大体私が負けてる。だって持久力はドラゴンの方が全然あるんだもの。
なんだ、もう終わりか?復帰したてで体力落ちたか?
「まだまだよ!」
私は素早く動いて翻弄する戦い方をした。グレイヴの方が圧倒的に体が大きいから、すばしっこく動かれる方がグレイヴにとって面倒だ。たまに透明化魔法も使ったりして。でもこの魔法は視界共有で見られるからすぐバレる。
ちっ、それやめろ。目が回る。
ふっふーん。私の動きについてこれるかしら?
始めたての頃は、グレイヴの大きな体に逆に翻弄されてよく攻撃が当たってたな。でも徐々に当たらなくなって、自分が成長してるのを感じてとても嬉しい気持ちになった。意外とこれ、邪龍にも応用が効くのよね。
すると、また大分時間をかけてしまったのか、体力の限界が来て、思わずエルテノ・レガーレを解除してしまった。
落ちる!と、思いきや、グレイヴが背中に乗せてくれる。いつもそうだ。地面に降り、グレイヴからも降りた。
「ありがとうグレイヴ。楽しかったわ。」
俺もだ。
「またやりましょ!」
あぁ。




