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形見

「わぁ〜!凄い。父さん、もっと高いところに行きたい!」

「こらこら、これ以上高くはできんよ。危険だからな。」

「えー。けちー。」

夕陽がキラキラと輝く。地上に住む生き物達はアリンコのように小さかった。私はブルブルっと身震いした。寒い。

「おっと、空高くいると寒いからな。フレイム、頼んだぞ。」

すぐ下には赤い龍、フレイムがいた。夕陽が限界まで沈んだ紅色の目をしている。角が輝くと、暖かくなった。

夕方からは夜になるまでが早い。一気に辺りが暗くなった。

「父さん、僕もライダーになれるかな。」

父は私をグイッと天高く体を持ち上げた。その上には満天の星空が広がっていた。

「ハッハッハ!あぁ、なれるとも。お前は俺にとって……いや、世界にとって希望の星だ。ステラ。」


「遅いわね〜、ロッド。今日は有休をとって帰ってくるって言ってたのに。」

叔母さんがそう言った。母は私が3歳の時に病死してる。

「そろそろ帰ってくんじゃねぇかー?」

叔母さんの旦那さんが言う。正直言ってこの2人は好きじゃない。父が働いてる間は2人が家に来て私の面倒を見てくれるが、いつも父のことを悪く言う。私のことも。

今日は私が9歳の誕生日だ。そのために父は今日、有休をとって帰ってくるはずだった。でももう夜遅い。

コンコン。と玄関の扉をノックする音が聞こえた。

「あら、帰ってきたんじゃない?」

叔母さんが扉を開ける。しかし、そこに立っていたのは父ではなく1人の兵士だった。封筒と箱を持っている。そして何か話しをしていたが、よく聞こえなかった。叔母さんは口元を押さえ、驚きの表情をあげる。そして兵士は、穏やかな表情で私に近づいてきた。

「ステラかい?」

「うん。」

「これ、お父さんからの誕生日プレゼントだそうだ。」

「父さんは?」

「……お父さんね、今日任務が多いらしくて帰れなくなっちゃったんだ。だから私が代わりに。」

「そんなぁ。楽しみにしてたのに。でも任務ならしょうがないよね。困ってる人達がいるんだから。」

そう言いながら、私は箱を開けた。その中身を見た瞬間、私の中で何かが壊れた。中に入っていたのは父のペンダントだった。黒い革紐に、三本の爪が銀色に輝く丸い石を掴んだ龍の脚を象ったペンダントトップがぶら下がっている。これで父の身に何が起こったのか理解した。父はいかなる理由があってもこれを外すことは無かった。いつの日か私が欲しいとせがんでも、これだけはあげられないと言っていた。

「兵士さん。あり……ありがとう。」

「?それじゃあ失礼します。」

「わざわざありがとうございます。」

叔母さんがそう言うと兵士は帰って行った。

「叔母さん、私もう寝るね。」

「え?えぇおやすみなさい。……あの子私っ子だったっけ。」

自分の部屋に入ると、腰が砕けたかのように一気に崩れ落ちた。ペンダントトップをぎゅっと握りしめ、涙がポロポロと溢れ出る。お父さん嘘だと言って。私を……1人にしないで。


それから私は心を閉ざしてしまった。でも、私の面倒を見てくれる2人から邪心だけは感じていた。今まで気にしなかったのに、途端に怖くて仕方なかった。

そんなある日、黒い服を着た男達が家に入ってきた。私とお父さんの思い出の家を踏み躙るかのように。私は階段からリビングの様子を見た。

「ガキは女なんだっけ?」

「えぇそうです。」

「なら、大人になるまで我慢しろ。」

「分かりました。」

すると、私とリーダーらしき男の目が合った。私はすぐに死角に隠れた。

「ほう。蒼い眼か。これは高く売れそうだ。蒼い眼をした者はそんなに居ないからな。」

私は座り込んで足を抱えて顔を伏せた。

お父さん、助けて……助けて!


パッと視界が明るくなった。

「あー、なんだ。ったく。」

視界に映るのは医務室の天井。私は起き上がろうとしたが、下半身に痛みが走って起きれなかった。仕方なく私は浮かせていた上半身を寝かせると、胸元に触れ、ペンダントトップを握った。

「……お父さん。」

以前も同じ夢を見た。重傷を負うと必ず見てる気がする。

女はドラゴンに選ばれない。ライダーになれないって知った時、私に更に追い討ちをかけたな。お父さんに裏切られたって……でも、小さい子供に現実を教えるというのはあまりにも酷だ。だから、私に嘘をついたのだろう。でも実際、ライダーになれた。多分こんな奇跡、この先二度と起こらないな。

あの黒服、あいつらは人を拐っては臓器売買してる奴らだ。特に眼玉を。私が司令官になった後、あいつらを徹底的に暴き出して社会的に潰したものだ。あれはスカッとした。

すると、ガチャっと扉が開いた。

「おや?やっと起きたのかい?」

「失せろ。」

「酷いな〜。治療したのはこの僕だっていうのに。君は僕に感謝すべきだよね。報酬は何かな?」

「医者は見返りを求めるものじゃないだろ。ってなんでお前が治療してんだよクソ。別の人にしろよ。あといい加減魔法で治せないのか?」

「治癒魔法ができる者は未だに居ないからしょうがないよ。それに僕が一番腕が良いんだから。それじゃあね〜。」

「レイサーおまっ…」

言い終わらないうちに出ていってしまった。

レイサーは青龍部隊の1人。ドラゴン騎士団の医療担当。こいつは俗に言う変態なのだが、一番腕が良い。

「正直その実力だけは尊敬する。」

しばらくぼーっとしていると、誰か入ってきた。グランクおじさんだ。

「目を覚ましたと聞いてな。大丈夫か?」

「平気よ。体動かせられないの辛いな〜。司令官試験までに治るといいんだけど。」

「痛みは?」

「まだ……ちょっとね。腰が結構痛い。」

「無事でよかった。」

「ありがとう。ねぇグランクおじさん、お父さんってどんな人だった?」

「前にも答えたじゃないか。」

「うん。また、聞きたい。」

「とにかく熱い男だ。情熱に燃えていた。誰に対しても優しく、戦うのが好きだった。……お前は友人にそっくりだ。その蒼い瞳もな。お前の父親はドラゴン騎士団を辞めてお前と共に暮らしていたいといつも言っていた。」

目を瞑り、深呼吸をした。

「お父さん……。ありがとうグランクおじさん。」

「気にするな。皆にも知らせておこう。」

そう言うとグランクおじさんは部屋から出て行った。

更に時間が経つと、外が騒がしかった。すると、扉が勢いよく開いた。

「ステラーー!!てめぇ何心配かけやがんだ!」

「イーサン…ごめんね。ちょっと油断しちゃった。」

「ったく。なんか腹減ってねぇか?飯持ってくるぞ。」

「あー、じゃあ…」

ガちゃっと扉が開いた。

「あ、膀胱に骨刺さって損傷してたから尿貯める食べ物飲み物はNGだよ。」

「レイサーお前いたのか。」

「出ていけこのド変態。」

「仕方ないじゃないか。あぁ別に膀胱に貯めてもいいけど、尿のせいで傷が馬鹿みたいに痛むから辞めといた方がいいよ。前にも膀胱傷負って僕の忠告聞かずに紅茶飲んだバカが激痛で泡吹いて失神してた。」

ニヤニヤと笑いながら言った。こいつはいつもニヤニヤしてる。何考えてるのか本当に分からない。

「お前が言うなら本当なんだろうな。じゃあ寝る。」

「なんだ面白くない。」

「うるさい。さっさと出ていけ。」

「え〜。」

「レイサー、いい加減にしないとボコボコにするぞ?」

「イーサン、君は相変わらず乱暴だね〜。分かったよ。」

そう言うとレイサーは出て行った。

私は目を閉じて考えた。

『お前は世界にとって希望の星だ。』

希望の星、何を思ってお父さんは私にそう言った?……いや、もう昔を考えるのはやめよう。

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