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出会い

私の好きな小説『エラゴン』にとても影響を受けた作品です。

自己満で書いた小説なので語彙等おかしなところがあれば教えていただけると嬉しいです。

僕の名前はフリッグ。20歳だ。ケナル村で暮らすごくごく普通の人。いや、普通の人とはちょっと違うかもしれない。何故なら僕は……

「おいフリッグ!!この前金貨50枚くらい用意しろって言ったよな?」

「何だこのチンケな金は。銀貨10枚とか舐めてんのか?」

「き、金貨50枚なんて、到底用意できないよ……。」

そう、僕は他の男性よりも弱い。力も性格も。

僕はこの2人、ここのヤンキーみたいなやつによく虐められてる。幼い頃から。

2人はいつものように僕を殴ったり蹴ったりする。でも今日はいつもと違うような気がする。

「あなた達、何をしているの?」

2人が手を止めた。声のする方に顔を向けると、1人の女性がそこに立っていた。

「なんだお前。女がこんな時間ほっつき歩いてるとか、誘ってんのか?」

今は皆がもう寝静まる時間だ。夜は厭世部隊の活動時間だから男性でも危ないのに。

「誘ってるように見えるなら目の病気を疑った方がいいかもね。ってそうじゃなくて、何故彼に暴力を?彼は罪人なの?」

「雑魚だから躾てやってんだ。」

2人は僕から離れると、女性に近づいて羽交い締めにした。まずい。何故抵抗しない?僕はフラフラになりながら起き上がって、助けようとした。僕を虐めていた1人が女性の顔を拳で殴ろうとすると、女性は拳が顔面に直撃する瞬間、頭だけを傾けて、拳を交わした。あいつの拳は相方の顔面に直撃した。

「痛ってぇ!おめぇ何しやがる!」

「は?知らねぇよこいつが交わしたせいだ!というかそもそもきつく締め付けろよ!」

言い争いが始まり、僕は唖然としていた。すると、女性は僕の手を掴んだ。ハッと我に返る。

「来て。」

「え?あ、うん。」

辿り着いたのは、村から少々離れた、ケナルの森がすぐそこにある一軒家だった。女性は扉を開けると僕を招き入れた。

「え、えぇと……。」

「あぁ、ここ私の家。」

頭が真っ白になった。一瞬の間を置いた後、僕は言った。

「え、ちょ、君の……しかも女性の?いや、流石に。」

母さんや親戚のおばあさん以外にあまり女性と関わったことの無い僕は酷く動揺した。それもそうだろう、助けられた挙句、いきなり家に招き入れられるなんて。

「ご好意というものは形はどうであれ受け取っておくべきよ。」

「そ、そうだね。」

何を賛同しているんだ僕は。

「とりあえず座ったら?お茶入れるから。」

「ありがとう……。」

賛同してしまったからにはしょうがない。仕方なくソファに座った。

お茶が出る頃には大分心が落ち着き、頭の整理もできた。改めて僕は言った。

「あの、助けてくれてありがとう。」

「こちらこそありがとうね。」

「え?どうして君が?」

「助けてくれようとしたでしょ。羽交い締めにされた時。」

「気づいてたの?」

「まぁ。私、よく周りの状況を一度に沢山見るのが得意なの。そういえば名前教えてなかったわね。私はステラ。」

「僕はフリッグ。」

「フリッグ、よろしくね。」

「……うん。こちらこそよろしく。ステラ。」

なんとも不思議な感じがする女性だった。というか、僕は村から出たことは1度もないのに彼女を見たことがない。

「ねぇステラ、見たことないけどどこから来たの?」

「ん?あぁ〜仕事が長続きしちゃって……かれこれ数十年、やっと実家に帰ってこれたのよね。でも、1年後また仕事に戻らなきゃ。」

「大変だね……どんな仕事をしてるの?」

「王国で色々とね。」

「へぇ〜。凄いね、僕が言うのもなんだけど、君若そうなのにそんな仕事をして。」

「お父さんの跡を継がないと行けないから。あなたは何か仕事はしてるの?」

「えっと……お恥ずかしながら僕はまだ……。好きな仕事が見つからないんだ。だからなんだかんだ1人で自給自足の暮らしをしてる。」

「まぁ、職につけるところと言えば街か城下町に移り住んで店を経営するくらい。人が多いから変わった店でも、しょぼい店でも売れる。……あなたの御両親は?」

「……亡くなった。まだ小さくて危険だからって僕を置いて食料を確保しに行ってたんだけど……厭世部隊に殺されたって聞いて。それで近所に住む親戚の所で育ててもらったよ。」

「……ごめんね、辛いことを思い出させてしまって。」

「いやいや、気にしないで。死んだって聞いた時は悲しかったし信じられなかったけど、今思うと母さんと父さんはあまりいい親とは思えなかったかも。」

「……?」

「あ、ねぇステラのご両親は?」

「私も両親がいないの。お母さんは私が3歳くらいの時に病死して、お父さんは……私が9歳の誕生日に戦死したの。」

「戦死?兵士なの?」

「えぇ。とても憧れていた人だったから、同僚さんから手紙が届いた時は来るものがあったわ。あなたと同じように親戚のご夫婦が私の家に来て育ててくれた。でも、私は親戚とはほとんど関わったことがなかったから、自室、2階ね。で引きこもってた。ここに来る時はご飯を食べたり、色々と教わるくらい。」

「えっと、暗い話しはやめにしよっか。」

「?他に聞きたいこととか無いの?」

「山ほどある……けど、それだとステラは辛くなるだけだと思うから。」

そう言うと、ステラはクスッと笑った。

「ど、どうしたの?」

「ごめん、ちょっとおかしくって。ふふっ、あなたは優しいのね。」

「えぇ?いや、君の周りに優しい人はいなかったの?」

「皆優しいわ。でもね、あなたのような優しさは初めて。私の周りにいる優しさは自分のため。言ってしまえば義務のようなもの。でもあなたは相手のことをよく考えてる。」

「その人も君のことを考えた上で優しかったら?」

「言ったでしょ、私は周りの状況を把握するのが得意だって。その状況って目に見える範囲だけに留まらないの。私があなたを助けたのも、帰ってきたばかりで家でゆっくり休んでたところにあなたの心情を感じたから。だから、どういう気持ちで私に優しくしてるのか分かるの。」

「えっと……つまりステラは思考が読めるってこと?」

「んー、ちょっと違うかな。私の場合思考じゃなくて心を読む方が近いかな。」

「そうなの?よく分からないけど。」

「何もしてなくても色んな人の心情を感じちゃうから、人混みに来るといつも頭痛くなったり自分の心を壊すことがよくあったの。でも今はコントロール出来るようになって、気が緩んでない時はいつもシャットアウトしてるわ。って、話し込んじゃったわね。そろそろ寝る?」

「うん。もう帰るね。今日はありがとう。恩は必ず返すよ。」

「帰るの?」

「え?いやだって迷惑だし、僕は男だし。会って間もない人……それも女性の家で寝泊まりとかさすがに。」

「ん?一緒に寝るのがそんな変?一応ベッドは親のを使えば足りるわ。」

「へ、変だよ。普通は男性と女性ってカップルとか夫婦でもない限りあまりくっつくのは良くないし……。」

「……?あぁ、なんかそんなものもあったわね。ごめんね、基本私の身の回り男しかいないからあんまり気にしてないの。」

「身の回りが男?……あのさステラ、君もしかして兵士だったりする?」

「まぁ、そんなところかな。」

「だと思った。羽交い締めにされといて抵抗しなかったり、殴られそうになった時も簡単に避けてたし……身のこなしが一般人じゃない。というか女性が兵士だなんて聞いたこと無いな……本当にステラは変わってるね。」

「よく言われる。」

「ごめん、嫌だった?」

「いいえ特には。自覚してるから嫌でもないわ。」

なんだかんだ僕はステラの家で寝た。会って間もないのに……僕は男で、襲われる可能性だってあるのに。ステラは何故?兵士だから負けないと確信してるのかな?でも寝込みを襲われたらどんな人でも抵抗出来ないような気がする。兵士はどうなのか分からないけど。

朝になると、早速僕はその事を聞いてみた。

「え?まぁ実際私よりも筋力ある同僚を返り討ちにしてるからね〜。」

「ど、どうやって?」

「襲われた時は容赦なく弱点に攻撃するわ。」

弱点……男の。彼女を怒らせない方がいいと思った。

「失礼を承知の上で言っちゃうんだけど、いつも襲われるの?」

「いや?最近は無いわ。周りが私に勝てないって知ってるからかも。でも入りたての頃はしょっちゅうあったわ。だって私は初めての……兵士だもの。」

「……?」

「なんでもない。」

「う、うん。じゃあそろそろ帰るね。」

「えぇ。ねぇ、また夜来ない?昼とかでもいいけど。」

「いいの?じゃなくて、どうして?」

「1年後また仕事なんだけど、ほら私、独りだから……始まるまで退屈になってしまうの。」

「うん。僕も独りだから分かった。」

「じゃあ助けたお礼はそれね。」

「え……ありがとう。」

そう言うと僕はステラに軽く会釈すると帰った。

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