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Reターンズ・クエスト  作者: 転香 李夢琉
第四章 新国家誕生

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37 ここには居ないはずの人物

37 ここには居ないはずの人物


 目を覚ますと森の中にいた。普通に考えれば夢子さんの領域の外、そして中に入ろうとすれば外に戻される。僕は街へ向かって歩き始めた。

 一ヶ月前とはいえ、五年後の世界なのは変わりない。僕には未知の場所だ。何かあっても対応できるようにしておかなければ。

 いつでも抜けるように左手で左の鞘を掴み周囲に視線を零す。


(なにもいない……か)


 一瞬視線を感じたが気のせいだったようだ。僕はフードを目深に被り先を急ぐ。しばらく歩いたがやはり視線を感じる。まっすぐ森を出る道ではなく、遠回りをしてみたが感じてしまう。殺意では無いようだから無視しても良いのだろうがこうも着けられているようだと気になってしまう。


「そこにいるの誰? なんの用?」


 しばしの無言。すると諦めたのかガサガサと木々が揺れた。


「……なんだ、気付いていたのか」


 そいつは姿を現した。フード越しに顔を伺うと僕は思わず声を上げそうになってしまう。


(なんでセレスさんがこんな所に……今セレスさんに関わっている暇は……?!)


 ため息を付きながらそう思った矢先、僕は努力が()()()()()()()()()()思ってしまう。なぜなら、セレスさんにあの髪留めが付いていたからだ。今訊くのは状況的におかしい。せめて親しくなってから、もしくはセレスさんのテンションを見極めてからだ。


「……なぜあなたがここに? ここは魔獣の森ですよ」


「それはこちらのセリフだ。お前こそこんな所で何をしている?」


(そう簡単に情報はくれないか……)


「僕はただここに用があっただけ、今から街に帰るところですよ」


「ほう……なら、同行しても良いな?」


「……ええ、もちろん」


 ちょっとまずいな。ここで断ることも出来たが一触即発だった。この判断は正しかっただろう。街に戻ったらすぐさま人探しを始める予定だったがしばらくはお預けかも知れない。変に警戒心を持たれるよりは良いかと思い僕はフードを脱ぐと顔を見せた。


「おまえ……会ったことあるよな?」


「さあ? なんのことだか」


 記憶が多すぎていつどれで、どんな風に会ったかという点については本当に分からない。とにかく、今はセレスさんから出来るだけ情報を聞き出さないと。


「逆に訊いても良いですか? あなたはここで何をしていたのですか?」


 一瞬目をピクリと動かしたのを僕は見逃さなかった。


「まあ、森の調査だ。たまたまお前を見つけてな、つけていただけだ」


 嘘、かな。でも本心も混じっているはずだ。下手に話を合わせようとするとボロが出るかも知れない。相づちだけ打つと街に着くまで会話は生まれなかった。


「疑って悪かったな。またどこかで」


 それだけ言うとセレスさんは歩いて行ってしまった。これだけで解放されたのはラッキーだ。


(はぁ、良かった。とりあえずは大丈夫そうかな)


 視線は感じない。僕はどこに居るかも分からない人探しを始め……た?


「え……?」


 僕の目の前に、建物の前で頭を振ってキョロキョロとしている人が居た。髪はショートで、服装は一見制服に見える私服。不安そうに頭を動かしている。僕は思わず身体が反射的に、本能的に求めて動いた。


「――陽彩(ひいろ)!!」


 勢いのまま僕は抱きつく。陽彩は僕に気付いて居ないのだろう、焦っている様子だ。


「だっ、誰?! や、辞めて! 離れて!」


「僕だよ。一綺だよ、陽彩……」


 そこでようやく僕は腕を解き、肩に手を置くと目を合わせる。


「……い、一綺? 本当に、一綺なの……?」


「久しぶりだね。陽彩」


 再び僕らは抱き合った。うれしさのあまり僕は涙を流すとなぜかおかしく、笑いが込み上げてくる。町中ではあるがそれほど人通りは多くないので、見られていないと言っても過言ではない。

 しばらくそのままで居ると僕らは身を解き、疑問をぶつけた。


「どうして陽彩がここに?」


「それはわたしのセリフ! なんで一綺が()()()()()()()()にいるの?」


 一瞬ディスピアエデンがなんのことなのか分からなかったが、そういえばこの世界の名前がそんな感じだった気がする。


「僕は五年前にこの世界に召喚されたんだ」


「五年前?! ……にしては見た目に変化が……」


 まあ、そうなるよね。なんて説明したら良いのか分からない、というか難しいな。めんどいので割愛しよう。


「そこは気にしないでくれると助かる。それで陽彩は?」


「? 私はね、一ヶ月、二ヶ月前? に召喚されたけど、今日は召喚された次の次の日みたいなの」


 信じたくは無いけど、やっぱりそうだったのか。タイムリープする条件は掴めていないようだし、まだそこまでこの世界について知らないのだろう。やはりここは彼氏として……って違う。そもそもなんで陽彩までこんな世界に来てるんだよ。


「そうだ、一綺会ったら聞こうと思ってたんだけどね。私のおじいちゃんのこと知ってる?」


「陽彩のじいちゃん? う~んチラッと?」


「おじいちゃんの遺書にねこんな文があったの『いつきくんだけは必ず守る。腕の傷を治せなくてすまなかった。また逢うことがあれば帰してみせよう』って。どういうことか分かる?」


 腕の傷を知っている?! いやいや、そのことなら一時期噂にもなったし知らない人は居ないか。でも、()()()()()()()()()()()は……うん? 待てよ。


「じいちゃんの名前……じいちゃんの名前はなんて言うんだ?!」


「どうしたの急に? 幽鬼だよ。湊幽鬼(ゆうき)


「ゆうき……そうか。じゃあやっぱり……」


 今までのことが繋がった。陽彩のじいちゃんが初代勇者で、僕のことを助けてくれた。で、日本に戻った後も完全には治してあげれなくて死ぬ前の遺書にその後悔を書いた。孫である陽葵と彼氏である僕が召喚されたのは何かしらが近かったから? 血縁的にはどこと繋がってるかなんてそもそも知らないし、だとしたら関わりのある人物ってことか。


「ゆうきさんは確か数年前に亡くなってたよね?」


「う、うん。何か分かったの?」


 亡くなっていて好都合というのは些か語弊があるが、これでほぼ確実にこの世界にいるかも知れない可能性が高くなった。


「――僕たちはこの世界から帰れるかも知れない」

ここいらずっと出来たてのまま投稿してるな

また明日ねぃ──

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