02 初クエスト
「──ここ、かな?」
木で出来た扉を押して中へ入る。異世界の図書館なのだからそれほど量はないのだろうと(勝手に)思っていたが、そんなことはなかった。見渡す限りの本、本、本。
とりあえずカウンターに行って声を掛けた。
「すみませーん」
「はーい。どなたですか?」
「この、クエストをしに来たんですけど」
そう言うとパッと顔を明るくさせ、両手を顔の前で絡ませた。ほのかに頬が赤い気がする。
「本の整理ですね。困ってたんですよ~、助かります」
僕は案内され、後ろを着いて行く。ここで一つ気付いたことがある。かなり内装がしっかりしていることだ。二階への梯子、壁に吊り下げられたランプ。一部の本には鎖が巻きついていた。
と、モノ珍しくキョロキョロしていたせいかもう着いたみたいだ。扉を開けられ足を踏み出す。
「……これ、全部?」
ツッコミを入れる余裕すらなくポロッと言葉が吹き出してしまう。
「はい! 返す棚はこのメモに書いてるのであとはよろしくお願いしますね」
「え、あ。はい」
矢継ぎ早にどんどん言われ僕は返事をするしか出来なかった。いや、返事すらも扉を閉められた後に言ったのでほぼノーカンだが。
( まじか……精々20冊くらいだと思ってた自分を殴りたい。100、いや200くらいか?)
机の上に積み上げられた様々な本を見て思わず絶句する。
この部屋の中央に大きな机が一つあり、ソレに向き合うように椅子が対面に二つ置いてある。壁際には動く棚があった。足がタイヤになっていて持ち運びが楽になっている。これら以外には特にめぼしいモノなどはなく、一気に現実に戻された。
(メモって、うわぁ……めんど。こんなん見ただけで頭痛くなってくるわ、はぁ……始めるか)
渡されたメモ、というか本を捲るとまるですべてのページが目次になっているかのようだった。
○○の本……Aの棚
○○の本……Bの棚
と、どこのページを開けてもこれだった。僕はため息を一つ零すと腕まくりをする。
「『騎士王の伝説Ⅱ』はBの棚で、『黒繭』がEの棚ね……お、『魔力の練り方Ⅰ』こんなのもあるんだ」
手頃のモノから仕分けていく。ある程度溜まったら、動く棚へとりあえず収納しマップを見ながら本棚へと返していく。また部屋に戻ると仕分けし、収納し本棚へと返す。この繰り返しが地味にしんどい。
(――ああ、もう! めんどくさぁい! まだ半分も終わってないし。ほんとに言ってるこれ? 雑用クエストでこれだと、討伐とかだと一日じゃ終わらないんじゃないか?)
疲労が溜まり思わず机に突っ伏す。愚痴を言うほどの体力はまだ残っているが、身体的に余裕がない。
「──あれ? ここは……って寝てたぁ?!」
机に突っ伏していたらいつの間にか寝てしまっていた。誰かに起こされたのじゃないだけマシだろう。
欠伸をしながら伸びをすると残りの冊数を数え始める。
(うわぁ……まだ100冊くらい残ってんじゃん。何してんだよ寝る前の僕。終わらせてから寝てよ……)
まだまだ終わる気配がなく肩を落として落胆する。
(もうひと頑張りだ)
頬を叩いて気合いを入れると、また仕分け作業からスタートした。
――二時間後。
「やっと、終わったぁ……」
今度こそ全部の本を返し終わると机に突っ伏し、腕を伸ばす。途端眠気が襲って来、やることも終わったことでそのまま抗うことなく瞼を閉じてしまう。
「――。――――てください。起きてください」
「ん……?」
落ちてくる瞼を何とか持ち上げ身体を動かす。
「おはようございます。無事に終わったみたいですね」
「クエストっ!?」
寝ぼけていたのかハッとしたように声を上げる。完全に覚醒すると口元に垂れていた涎を手で拭く。
「クエストクリアですよ。おめでとうございます、そしてありがとうございます」
「あ、いえ」
僕は少し照れくさくなり頬を掻く。すると何かを差し出してきた。
「これが報酬の一ポイントです」
一円玉程のコインとともに。手の平に収まるサイズのカードを一緒に渡された。全体的に青色で、上下を区別するためか黄色い横長の線が中央より上に入っている。受け取るとなんとなしに裏側を見た。
(ポイントが十貯まると緑色になり、三十になると赤色になる……その機能要るかな?)
よく分からないがポイントカード(?)を手に入れた。
そして無事、初めてのクエストを何事もなく達成することができた。僕はしばし達成感を覚えリラックスしたように息を付く。それから図書館を後にした。
3話目は昼頃に投稿します!
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ではまた後で