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Reターンズ・クエスト  作者: 転香 李夢琉
第二章 繰り返す時間

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16 二度目の護衛

はい。



 帰ってからポイントを貰いにギルドへ行くとセレスさんがいた。


「あっ……」


(っぶない。まだ知り合ってもないのに声かけるところだった)


 あわよくやらかすところだった。それにしても何をしているのだろう。

 するとだんだん思い出してきた。


(あ、そっか。ここで討伐かの依頼受けてあの森付近にいたんだ)


 僕が前にゴブリンの討伐で森の奥に入り、ブルーウルフに襲われ逃げたところでセレスさん達に出会った。つまりそれが今日だ。点と点が繋がっていくのは、なかなかにおもしろい。あの時こっちに行っておけばが実際に出来るのは、ちょっと楽しい。


(ん? ……待てよ。と言うことは明日、護衛クエスト受けるのか)


 ギルドの日付を見ながらそんなことを考える。

 そこでふと思いついたことがある。前回はブルーウルフのおかげというかブルーウルフのせいで知り合えたが、森に行かず知り合わなかった場合、明日の護衛ではどうなるのだろう。普通に考えれば他人同士、ただ護衛するだけの仲間ということになる。


(他人……か、僕は憶えてるのになんだか寂しいな……)


 そんなことを思いつつ、僕は報酬を貰いに空いた受付へ入る。普通に報酬を貰うと少しギルド内を見渡した。

 剣士、魔法使い、ドワーフ、エルフ……様々な種族、職業の冒険者がいる。


(今さらながらに気付いたけど、なんでセレスさんしかいないんだ? シルフィーデさんや、ムサビさんもいない……)


 前回は三人とも僕と別れた後一緒に帰っていたはずだ。それとも、もう二人とは別れた後でセレスさんだけがまだ残っていたという可能性もなくはない。なんにしろ、セレスさんがシルフィーデさんと一緒に居ないことが珍しく思ってしまう。

 ──待てよ? ……一番最初、サーペントタイガーと戦ったときに二人は居なかった。

 セレスさんが指揮をとっていた。

 髪が短かった。

 心なしか良く喋っていた。

 ()()()()()()()()()()()()()。ただ、これだけでは単に戦闘時だったのでそう言うのは関係なく話していたという推測もできる。謎は深まるばかりだが、とりあえず僕は宿屋に帰った。


(どういうことなんだろ……いや、明日になれば分かることか)


 僕は目を瞑ると眠りについた。


 ──目が覚めると違和感ではなく、嫌な予感がした。無性にイライラする。なにに苛ついているのかは分からないがとにかく歯ぎしりをする。食事を済ますと何かに駆り立てられるように護衛クエスト待ち合わせ場所、西の風門へ向かう。

 走り、路地を抜け、一直線に飛び出すと目の前に二台の馬車があった。そこに一人に人影が見えた。息を整え、歩いて行くとソレが誰かを理解したとともに、嫌な予感が的中してしまったのじゃないかとソワソワする。


「今日は……よろしくお願いします」


「ああ、よろしく」


 微笑みながらセレスさんは言った。僕はどんな顔をしたのだろう。セレスさんは頭を傾げ「なんだその顔は?」と聞いてくる。


(あのセレスさんが……笑顔に)


 そこであるモノに気付いた。前まではしていなかった、髪留めを付けていることに。僕はソレをよく知っている。誰が付けていたのかも、鮮明に憶えている。そして短くなった髪。

 声が震えているかも知れない。

 だが聞かなければ。

 彼女たちの身に何があったのかを。


「その……髪留めって……」


「あぁ、これか? これは……親友の形見なんだ」


 髪留めを外し、寂しそうに撫でる。


「彼女の……彼女たちのおかげで私は生き残った。だから暗いとダメなんだ……私が、彼女の分まで明るくいないと……」


(そっか、だから……)


 言動と、行動とが、過去との違和感にようやく繋がった。

 未来は変わるし、僕の行動で線が出来る。これは言わば僕が二人を殺してしまったと言っても過言ではない。


(もう一度戻らないと……僕が、僕がシルフィーデさんを助けるんだ。あの笑顔を、セレスさんの為にも……!!)


 戻るとはいっても、条件が分かっていない。恐らくポイントを百集めることは条件の一つだろうとは思うが、戻れたとしても前みたいにうまくいけるとは思えない。なんにしろ、情報を集めなければ。

 馬車に乗り込むと僕は今後の、次のタイムリープでの事を考え始めた。

 まずは情報だ。今まで放置してきたあれこれを北区に行って収集する。それから、今向かっているズイッヒャーハイトでも、暗殺の件のを調べる。やることは多い方が良い。次に戻ったときに万全の状態で僕は挑む。失敗は許されない。ちゃんと戻れるかの心配はもちろんあるが前回と同じようなことをすれば勝手に条件を満たすだろう。


「商人どうしたんだ?」


(これは確か……惑わしラビット。セレスさんが討伐してすぐおわ、り……?)


 御者にいるセレスさんは座ったままだ。僕は脳を回転させる。もうすでに商人は兎が道を塞いでいることを言っている。ならば、セレスさんが討伐しに行くのが歴史通りじゃないのか? 僕は前戦力ではなかったし。


「……討伐しに行かないんですか?」


 恐る恐る、僕は聞いてみた。するとぎこちなく返事をする。


「あ、ああ。そうだな」


 一瞬だけ見えた横顔は、どこか焦っているような不安そうな顔だった。僕は心配になり、後を追う。前と同じ、馬車横から顔を覗かせ見る。

 剣を抜き、惑わしラビットを一刀両断。剣を振り下ろした風圧で砂埃が辺りを舞う。晴れると、そこに惑わしラビットの姿は無かった。あの一発で仕留めれていないのはセレスさんを見れば分かる。まだ剣を構えたまま周囲に視線を送っている。


(惑わしってことは、幻影を見せられている可能性もあるのか? 前はあんなに簡単に倒していたじゃん)


 と、そこでようやく僕は思い出した。あの時、シルフィーデさんが兎を魔法で囲っていた。もしかしたらソレ以外、対処法がないのか?


(よく分からないけど、こんな所で時間を食われてる暇はないんだ)


 僕は息を殺し、周囲に目を向ける。


(見つけた)


 懐からナイフを取り出すとダーツの要領で投擲した。風を切り裂くような音を出しながら後頭部へヒット。兎が声を上げ、セレスさんはすぐさま振り返ると今度こそ剣を振り下ろした。ホッと僕は胸をなで下ろす。セレスさんはこちらに向かって歩いてきた。


「これはお前のナイフだろう? 悪いな、助かったよ」


 そう言って僕にナイフを返してきた。受け取ると懐に入れる。そのままセレスさんは僕の横を通り過ぎ、馬車へ戻っていった。僕も馬車へ戻ると先頭の馬車は進み始めていく。

 やはりというべきか、その後は何事も起こらずズイッヒャーハイトに到着した。報酬を貰うと、いつの間にかセレスさんが居なくなっていた。探すべきか、放っておくべきか悩んだが今の僕に出来ることは何もない。諦めて情報収集を始めた。


 

明日もいつも通りです。

ブクマや評価お願いしまーす(*´ω`*)

ではまた明日──

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