10 初の護衛
なんと今日は友達の誕生日なので2話投稿するのです!
討伐や採取のクエストは採ったものを報告、提出すればそれで達成になる。つまりゆっくり依頼を熟すことができるのだ。
昨日の今日でまた森に入るのは疲弊するし、トラウマ気味なので別のクエストをすることにした。
(西の風門ってこっちだったっけ?)
僕が泊まっている宿は南区にあるので場所的にはほぼ隣なのだが、街道を通ると複雑でなかなかに慣れない。地図を買っても良いけど二ポイントもするのであまり買いたくはない。
(あったあった。良かった、こっちで合ってた)
途中路地に入ったりもしたが、なんとか西の街道に出ることができた。しばらく歩くと風門が見えてくる。
「今日はよろしくお願いします」
門の手前には馬車が二台止まっており、先頭の馬車には屋根に届くまで荷物がぎゅうぎゅうに詰められている。もう一つの馬車には荷物はほとんど無く、屋根もない。
僕の他に冒険者が二人、セレスさんとエルフのシルフィーデさんがいた。もう一人いた好青年のムサビさんは用事があるらしくこのクエストには参加していない。
「もし魔物がでても、基本私たちが相手するからお前は出てくるなよ」
なぜか釘を差された。
(言われなくてもわざわざ死にになんて行かないし)
依頼者はいかにも商人な格好の商人で、場所は隣町までの護衛だ。ちなみにこのクエストで貰えるポイントは七だ。危険があるからと、場合によっては長旅になるかららしい。そうクエストの紙に書いてあった。
早速馬車に乗り込むとシルフィーデさんが御者をし、僕とセレスさんは荷台に対面で座った。カタカタと馬車が進み始め風門を抜けると道なりに進む。
(何事もなく終われば良いけど……)
フラグになるようなセリフを口には出さずただ思いながら、馬車はどんどん進んでいく。景色をずっと眺めていた僕だったが、森の中に入ってしまい興味を失った。欠伸を噛み殺しながら森の中に目を向ける。
(あの時いたブルーウルフは一匹だけだったから、まだあと十匹くらいは最低でも居るかも知れないんだよね……)
前に対峙したときは群れだった。でも昨日出くわしたのは一匹だけだ。まだどこかに潜んでいてもおかしくない。
「……昨日も思ったが、お前のその、左腕の傷は何だ?」
馬車に乗ってから一言も話していなかったので少し気まずかったが、セレスさんからまさかの質問が飛んできた。
僕は左腕を見下ろしながら右手で頬を掻く。左腕には爪で引っかかれたような跡が幾度もあり、見る人によっては気持ち悪いとさえ感じてしまうだろう。
「あ~、まあ動物に引っかかれただけですよ」
なんとなく本当のことを言ってしまうのは気が引け、誤魔化す。なぜ長袖を着なかったのかが悔やまれるが、暑いだろうと半袖にしたおかげで不便は特にない。
改めて見ても酷いものだ。完全には完治しなかったのだから、跡がこんなにもクッキリと残ってしまっている。
「そう、なのか?」
「――? 商人どうしたの~?」
突然前の馬車が止まったのでどうしたものかとシルフィーデさんが問いかける。
「ウサギが進路を塞いでんだ」
(兎なんかもいるのか、猫とか犬も居そうだなぁ)
そんな呑気なことを考えていると対面に座っていたはずのセレスさんがいつの間にか居なくなっていた。
「えっ」と思い御者の方を向くとこちらも居なかった。上半身を馬車の外に出し、先頭を見ると二人の影があった。耳を澄ますと会話声が聞こえてくる。
「あれは……」
「間違いない、惑わしラビットだ」
(惑わしラビット? なんか、弱そう)
僕の位置からその魔物は見えないが恐らく、商人の言ってたように兎の魔物なのだろう。
「逃げないってことは、メスか……」
「あちゃー、まずいね」
「さっさと仕留めるぞ」
先頭の馬車まで来ると顔だけ覗かせ、その光景を視界に入れた。
兎の額から角が伸びている。とはいってもそこまで大きくはなく七、八センチほどだ。中間らへんには何か光が反射している。
「『砂塵』」
と、シルフィーデさんが魔法を放った。地面から巻き上がった砂が惑わしラビットへ襲いかかる。周囲を取り囲むようにして擬似的な砂嵐ができあがった。惑わしラビットは焦ったように辺りをキョロキョロしており、どうやら逃げられないようだ。そこへセレスさんが剣を抜き、一瞬にして角を切った。
キィィィィ。
甲高い声を上げるとその場に倒れた。
セレスさんはソレに近づくと剣を鞘に納め、腰からナイフを引き抜く。何度か刃を突き刺すとキラキラした石のようなものを取り出した。
「先を進むぞ」
馬車に戻ってくると何事もなかったように進み始めた。
「さっきの、あの赤い石は何ですか?」
「これのことか? これはヤツの魔石だ。人で言う心臓だな」
ポーチから取り出すと手の平に置いて見せてくれた。大きさは五センチギリギリあるかないかくらいのサイズで、日に翳すとキラキラと輝く。
「森を抜けます」
前から聞こえ、僕は馬車の外に上半身を投げ出した。
森を抜けると一面、畑で覆い尽くされている。川も通っており、透き通るかのようなきれいさだ。
街の中へ入ると馬車は止まり、クエスト達成の報酬を貰う。
「さて、私とシルはこの街に少し滞在するが、お前はどうする?」
特に決めていなかった。ポイントを稼ぐことしか考えていなかったためなにも、宿すら考えていない。
「……僕も、この街に少し居ようかと思います」
「そうか……もし、何かあったら声を掛けてくればいつでも助けに行ってやる」
「もぉ~セレスってば、そんな言い方しないの。一綺が困ってたらいつでも頼って良いんだからね。じゃぁね」
そう言って二人と別れた。
少しずーつ、謎が出て来たねぇ~。というか個人的この話が一番重要な気がする()
え~、もう一話はいつも通り16~18時の間に投稿します。(忘れてたら3話投稿になりかねない……)




