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異世界奮闘記〜異世界転移はロマンと共に〜  作者: オーム
2章 初めの数歩
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6話 ようこそ、ギルドへ!


「……ここです」


マーズについて歩いて、約3分。

俺らは、大きな大きな立派な建物の前にいた。

扉も大きく立派で、見ていると、その建物の圧力で潰れてしまいそうだ。


「この建物?いったいなんの建物なの?」


時間的なことかも知れないが、建物に出入りする人はいない。


「すぐに分かりますよ……」


ボソッと呟くと、マーズは大扉の取っ手に手をかけた。




ギィィと扉が軋み、中から光が漏れだし、俺たちを照らす。


この建物は、いったいなんの建物なのか……!





がら〜〜〜〜〜〜〜ん…………


建物の中はとても広く、入ってすぐ右の所にカウンター、左の窓の側には机と椅子が並んでいて、一番奥にはこれまたカウンター……。

奥のカウンターの脇には、大きな掲示板が2~3個置かれていて、紙がいっぱい貼ってある。


なかなか施設としては充実していそうだが、人がほとんどいない。

窓側の席で食事をしている人と、机に突っ伏して寝てる人くらいだ。


そもそも、服がどうこう言ってたから、服を買いに行くんじゃないのかよ。



「マジでなんの建物なの?」


「今は人、少ないです。もう少ししたら……。」



そう言うとマーズは、奥のカウンターにせかせかと向かう。

まったく。



カウンターに向かうと、青い制服の、何がとは言わないが、タユンタユンの受付嬢さんみたいな人達が書類をまとめたり何やら話していたり……



「新しい冒険者の登録をお願いしたいのですが……」


え?冒険者?




冒険者!!!?



「ようこそ、アドベンチャーズギルドへ!

新規様のご登録ですね!」


「ちょちょちょ、聞いてないぞ!マーズ!!」


「どうしたんです?」



不思議そうに振り向き、首を傾げるマーズ。



「冒険者ってなんなんだよ!?つーかお前、俺に何をさせようとしてるんだよ!」



受付嬢さんが、キョトンとした顔になった。


冒険者……異世界物の物語では必ずと言っていいほど登場するメジャーな役職。

男なら1度は憧れるが、こうも唐突に話が進むと、頭が混乱する。

つか、アドベンチャーズギルドってなに!!!?


すると、困惑した様子の係の人が、説明を始めた。



「冒険者というのは、アドベンチャーズギルドに所属する組織のことです。

正式には、"アドベンチャーズギルド一般調査隊"というのですが、一般人や調査隊内部など、幅広く"冒険者"と呼ばれています。

主に未開の地の探索や動植物の素材の採集などが主な活動内容です__」


「ちょっと待ってください!

おい、マーズ!なんのつもりだよ、調査隊って……!」


早口の係の人を一旦止めて、小声でマーズに抗議する。

すると、相も変わらずキョトンしたような顔で見上げられた。



「……仕事、ないと思って。これなら、すぐに始められます。」


くっ、確かに……。俺的には、現世に戻るまでの間、何とかしてお金を稼いで、生活することが必要だ。

だが、冒険者って大変だよな?

死んでしまっては元も子もない。


いや、冒険者と聞くと、その響きに心が震えるのを感じる。



「ちょ、ちょっと待ってくれよ、少し考えさせてくれ!」


「うん。」



調査隊(冒険者)か、仕事内容は探索、採集って感じか。あとは戦闘にさえ巻き込まれなければ__

冒険って、どんだけ大変なんだろう。


「なぁマーズ、冒険者の事故って__」



その瞬間、やっぱり係の人が割って入る。



「残念ながら、全国の1年間で約200人以上が死亡、又は行方不明になっています。

クエストを受注していただいてから2ヶ月間生存が確認できないと行方不明、4ヶ月で死亡とされるのですが、行方不明者だけでも多い年では500人を超えることもあるんです。」



ね、年間200人!?

なるほど……やはり簡単な職ではないか。

そんなに危ないのに、資格とかいらないのか?



「どうですか?危険も伴います。でも、楽しいです。」


マーズが俺をじっと見上げる。上目遣いを使うとは、こいつ、やり手かもしれない。



「冒険者になるのに条件って__」


すかさず、係の人が早口説明を始めた。


「条件ですね!

まず1つ目に、11歳以上であること。

2つ目に、腕や脚等に障がいがないこと。もしある場合は、あまり動かなくても達成できるクエスト環境が揃った、別の隊に入隊が可能です。

3つ目に、自分の能力を冷静に判断できる方。

基本的にはそれくらいですかねぇ。」


「結構緩いんだな……」



11歳から冒険者になれるのか。じゃあ、マーズはたぶん、11歳以上か。

あ、いや、そんなの関係ない。どの条件も、俺なら突破できそうだ。

自分の能力をってのは少し心配だが。



どうするか……そうだ!


とりあえず、マーズだって鬼じゃない。剣さえ振るったことの無い俺に、いきなりドラゴンの討伐に連れていかれたりなんかはしないはずだ。


ソワソワとしているマーズを見ると、やっぱり訳が分からないことをしそうだが、もしそうなったら、夜逃げするか。

そしたら、パン屋でもなんでもやろう。



「……分かったよ、やるよ__」


「はい!それでは、こちらの書類に必要事項をご記入ください!」



しぶしぶ承諾すると、あっという間に手元に紙と羽ペンが…………この受付嬢さん、仕事早すぎる!


「ほいほい、名前と生年月日に……あれ、これだけ?」


紙に書いてあったのは、冒険者の規約と、これだけだ。


「はい、ありがとうございます、ユウタさんですね!

それでは、今からユウタさんの調査隊証明書を作ります。

まずは、ユウタさん個人の魔力の診断です!」



魔力!?俺、魔力なんて持ってなさそうだけど……。



「では、この水晶にお手を掲げてください。」


ドスン、と目の前に置かれたのは、アイスクリームのコーンスタンドみたいなのに乗っかった透明の大きな丸い水晶。

スタンドの下側には、液体が入ったトレーが。


「えっと、これでいいですか?」


水晶に触れるか触れないかくらいに手をかざす。


すぐに異変は起こった。

水晶が透き通る水色に変化する。

なんだか美しいが、なんか水晶が冷えてる気がする。


あれ?俺のからだにも、少し異変がある……?

全身がなんだかだるく、でも、なにか力が湧いてくる……。


「はい、もういいですよ!」


手を離すと、受付嬢さんは、ピンセットで下のトレーから何かを取り出した。

同時に謎の倦怠感も無くなるが、少し体の調子がいい。


「それでは、10分ほどお待ちください。」


そう言うと、受付嬢さんは奥へ引っ込み、代わりの受付嬢さんがカウンターについた。




窓のそばの席につき、一休み。


「あー、腹減ったなー。

奢ってくれないかなー。」


向かい側に座ってるマーズにチラチラ視線を送るが、マーズは顔ごと逸らして完全にシャットダウン。


はァ、とため息をついた時、ワキに置いたリュックサックに肘がぶつかる。


あぁ、そういえば、昼間にパンをもらったんだ!

さっそくリュックサックに手を突っ込み、紙袋を引っ張り出す。

中身は、確かにところどころ焦げてたり、ヒビが入っていたりと、商品にはならなそうなものだった。

だが、飢えている俺には関係ない!



「……それ、どうしたんです?」


こえ?ひふはにはんや(これ?昼間にパン屋で)もはっはんらよ(もらったんだよ)



パンをいっぱいに頬張り、モゴモゴする俺を、ジト目で見るマーズ。


「はァ……」


突然、マーズが腕を組んで顔を埋める。

あれ、なんか変なことした?


ちょっと考えてると、微かにグゥゥと聞こえた。

そして、マーズが恥ずかしそうに小さくなる。


そうか、なるほどな。



「ほら、食うか?」


なるべく綺麗そうなパンを選び、マーズに腕を伸ばす。

すると、マーズがゆっくりと顔を上げた。



「……いいの?」


「当たり前だろ、仮にでも仲間だろ?」


「…………ありがとう……ございます。」



両手でパンを受け取ると、マーズはゆっくりと食べ始めた。


少しづつ、少しづつ……でも、必死そうにパンを食べるのを見ると、食料を口にすることさえ、久しぶりだったのだろうか。

やがて、マーズの両手から、パンはなくなった。


「もっと食うか?」俺はマーズの手元に紙袋を押しやる。



「……あなたの分が……無くなります……。」


「気にするなって。俺はなんも食わなくても、あと3週間くらいは生きれるからさ。」



しってるか?人は水だけで3週間くらいは生きれるんだぞ!(目眩などの症状がでたり、危険だからやるなよ!)


勢いよくそう言うと、マーズの表情が少しだけ和んだ気がした。


「……じゃあ、あと一つだけ……」


パンに手が伸びた瞬間、大扉が開き、青のマントに、背中に剣を背負った人が入ってきた。

その人は奥のカウンターへ行くと、受付嬢となにやら会話し、カウンターの近くに置いてある大きな掲示板を眺め始めた。


あほひほほうへんひゃ(あの人、冒険者(?))


へー、冒険者って、ほんとにアニメとか漫画みたいな格好をしてるんだな。



かっこいいなー、とか思って見てると、入ってくる入ってくる。思い思いの装備に身を包んだ男に女。

あれだけ空いていた席も次々埋まり、いつしか話し声とか笑い声しか聞こえなくなった。

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