表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界奮闘記〜異世界転移はロマンと共に〜  作者: オーム
1章 未知の世界でさまよって
6/31

4話 ウィンの街

ウィンの街の大きな門をくぐり抜けると、不思議な光景が広がっていた。

石レンガで構成された大きな道路の左右に、木や石でできたヨーロッパ風の家が立ち並ぶ。そして、多くの人が店のショーウィンドウを覗き込んだり、立ち話をしたり……。


服装も中世のヨーロッパ風で、変な感じだ。と思ったが、この世界においては俺が変なのか。


中でも目を引くのは、ピカピカの鎧と剣を背中に担いだ強そうな人や、紺の帽子にカラスのような黒い羽を差し、黒に近い紺色のマントをはおり、長い杖を持った魔法使いのような少女などなど、現実では信じられない格好をした人たちだ。



まるで、昔話の世界に迷い込んだよう……。



ん?なんか道行く人達が俺を見ている……?


気のせいだと思いたいが、俺とすれ違う人、立ち話をしてるおばさん、路上で小さな屋台を開いているおじさん……どんなに忙しそうでも、目がしっかり俺を見ている……。


ま、まぁ、それもそうだよな!街の人達みんなが……なんて言うかな、オランダやヨーロッパの民族衣装に近い服装なのに、俺の服装なんて、訳分からないよな。

ピチっとした学生服に、ブカブカのヘルメット、左手にはボロボロの剣。


そのまま大通りを直進してると、大きめの橋があった。その橋も渡ると、中央に大きめの噴水があり、周辺に少し木が生えてるいい感じの広場に到着。

奥の方に馬車が3、4台泊まってるのを見ると、馬車の乗合ひろばにも使われているのだろう。


ともあれ ひと休み!


噴水の脇にはベンチが設置されていて、疲れていた俺にはありがたい!


「ふぅー、よっこらせ……」


思わずおじいちゃんみたいなセリフが口からとび出て、少し恥ずかしくなる。

……まぁ、これで最悪、泊まるところがなくてもここで寝れそうだな。

あ、もしかして、いや、もしかしなくても夜は冷え込むよなー。


どうしたらいいんだろう……。



現実的に考えて、まずやることは食料の確保だろうか。

いや、食料を買うための通貨を手に入れることか?


よし、まずは職を探すか!例えば、パン屋とかで働けば、もしかしたら(まかな)いを貰えるかもしれない。

……どうかな。


とりあえず、少し休んだから、街を歩き回って見るかな。

ベンチから立ち上がって、大きく伸びる。すると、身体の奥から不思議な力がみなぎるの感じた。

背中のリュックサックも俺の身体も軽くなり、ウキウキと足が進む。


不思議な感覚だ!


とにかく、この街はかなり大きい。迷わないように、あまり遠くには行けなさそうだ。


さて、これからの事を真剣に考えながら街をさまよう俺だが、いくつか不安なことに直撃。

まず、俺は、メガネをかけてる。メガネの度数はあまり高くないけど、無いと生活は少し厳しい。

つまり、もしメガネが壊れたら、どうしよう、ということだ。

うーん……



その時、鼻が軽く潰れるのを感じ、冷たく硬いなにかにぶつかる。


「へぶっ!」


いつの間にか目の前にすごいガタイのオッサンがいた。

背中には、先端にトゲ鉄球がついた棒を担いでるのが見える。

全身を骨のようにゴツイ鎧で固めたオッサンはとんでもなく冷たい目で俺を見下ろす。


「あっ……すみません……」


あまりの迫力に、唾を飲み込む。

これって…………



「なんだ、珍しい二ィちゃんだな。ちゃんと前を見ろよ。」


ごついおっさんはそのまま会釈し、何事も無かったかのように歩いていった。


なっ、揉め事にならない……。助かったのか少しつまらないというか、複雑な気分だ。



さてさて気を取り直して、本当に不思議な街だ。

狭い路地や大通りが網のように広がっていて、道を覚えるのは大変そうだ。

というか、規模がデカすぎて、街というよりかは、王国。城はないけどね。


大通りは活気に溢れていて歩いているだけでも楽しいけど、路地裏に入ると薄汚い樽や木箱が散乱してたり、小瓶が転がってたり、怪しいお店があったり……。


街の明暗というかな、活気のあるところと無いところ、面白いくらいハッキリしている。


……それで、さっきから何かを感じる。

気配かどうかは感じたことないからわかんないけど、物凄い圧力というか……。

まさか、この世界の精霊とかに取り憑かれてたり。

まあ、考えすぎということにしよう。というか、そう信じたい。


でも、ワイワイとする街の中で、明らかにおかしい物が、俺にまとわりついている……。




ふと、俺の鼻が勝手に動く、ヒクヒク動く。

匂いだ!パンの匂いがするぞ!焼きたてだ!


これは助かるぞ、パン屋のアルバイトを考えていたんだ。

現世ではバイトなんてしてなかったけど、何とかなるよな。


匂いを辿ってアチコチ歩き回ると、オシャレな看板を掲げた店を見つけた。

看板には金色でゴールドパンズと書かれていて、窓から中を覗くと奥の方の棚にずらりとパンが並んでいる。

やっぱり、変な感じ。知らない文字ってわかってるのに、看板の文字がちゃんと読める……。


さて、入店するんだけど、このままじゃまずい。

ヘルメットを外し、リュックに詰め込む。

変な感じにリュックが膨らんだが、問題ないだろう。


店の隣の庭にはテーブルや椅子が置いてあって、店で買ったパンを、すぐに食べれるようだ。

現に、2、3人の男女グループが楽しそうに話しながら何かを食べている。


そぉ〜っと扉を開くと、カランカラーンと扉についた鐘が鳴る。

すると、「いらっしゃいませー!」と、カウンターの奥からエプロンを着けた若い男の人が現れた。

やべっ、緊張する!


「あのぉすみません……ここで働けませんか?」




やめて!沈黙しないで!慌てて変なことを聞いてしまった!





やめて……



「あ、えっと……今は人手は足りてるんで……」


「あっ、でっ、ですよねー……はは」


「あ、あはは……」



はァ、何やってるんだろ。



「あなたもしかして、この街に初めて来たんですか?」


「はい……あと、道中に財布を落としてしまったみたいで……」


「なるほど……大変でしたね……。そうだ、よろしければ、うちのパンを少し持っていきませんか?」


「え、いいんですか!?」


「といっても、切れ端とか少し焦げたりしたようなのでいいですか?」


「はいぃ、もう、喜んで!!!」



ということで店から出た俺の腕には、いっぱいの訳ありパンを詰め込んだ大きな紙袋。

腰の骨が擦り切れるほどお店の人にお辞儀しても、感謝しきれないよ。

兎にも角にも、これで明日くらいまでは持つだろう。

ところで、話によると、このパン屋はあまり繁盛していないらしい。

確かに客は少なく、従業員らしき人も少なかった。

どの世界でも、商売は難しいのだろう。





で、広場に戻った頃には夕日が辺りを照らしている。

そこらを駆け回っていた子供たちも親に連れられ家に帰り、街がだんだん静かになる。


そして、予想通り、肌寒くなる。これは困ったな。


食料は少し手に入ったものの、暖を取れなければ、最悪、死んでしまう。

こんなことになるなら、オークの集落に留まるべきだった……。


やれやれ、今更悔やんでももう遅い。

こっちに来る間は昼間だったし、奇跡的に猛獣に遭遇しなかったが、今度はどうなるか分からない。


ベンチに立てかけておいた、カルスさんから貰った剣を引き抜く。

傷だらけの刀身だが、夕日を鋭く反射している。


強度も十分そうだし、1晩街の近くで火でも起こして明日を迎えるか__



「……もしもし、ちょっといいですか?」


突然、ボソッと声をかけられる……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ