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異世界奮闘記〜異世界転移はロマンと共に〜  作者: オーム
1章 未知の世界でさまよって
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プロローグ


「___えーと、じゃあこれでお終いかな?

では号令をしましょう!起立!!」


とある高校の、とあるクラスで、威勢のいい号令が教室に響く。しかし、その声も生徒たちの話し声でかき消され、椅子を引く音も相まって何も聞こえない。


「…………」


皆が起立したあとも黙って生徒たちを見渡す教師。しばらくガヤガヤしていたが、だんだんと喋る生徒が減っていく。


完全に皆が黙った時、教師が口を開いた。


「あ、あと、科学のレポートの提出期限は今日だったな。出てないやつ出せよ!それでは号令係、よろしく!」

「気をつけー、礼ー。」


再びガタガタと音が響き、「ありがとーございましたー」とか、「さよーならー」と教師に挨拶し、ゲームのことを話したり、部活に向かったり、1人で昇降口に向かったり……。



そんな生徒を目の端で見送りつつ、俺はリュックサックの中身を掻き回す。

が、友人に呼ばれ、その手は止まった。


「おいユウター、部活行くぞー!」

「部活ー?今日は休むって言わなかった?」


そういいながら、声をかけてきた友人に視線を向ける。

角刈りで優しそうな目つきのコイツは、まぁ悪いやつじゃない。結構フレンドリーで面白いやつだ。


「頼むよー、スマホ見ただろ?今日は先輩たちがみんなこねぇからさ、部室の掃除も大変なんだよ。」


部室の掃除……。俺は、美術研究部という部活に所属している。まぁ、説明する必要はないな。


んで、うちの部室はモデル人形に筆、パレットとか絵の具、鉛筆にチョークその他諸々が狭い部屋に散乱してて、掃除(片付けとも言う)が大変なのだ。


本当は休む理由なんてないが、ただ何となく、家に帰りたかった。


「むーりー。今日俺家で用事あるから。」

「あーっそ、別にいいさ!今度お前に掃除全部押し付けるからな、覚悟しとけよ!」


わざとらしいしかめっ面を披露し、(ドシドシと足音も残し)友人は去る。

ごめんよ、明日はちゃんと掃除するから……。


友人を見送った俺は、再びリュックサックを漁る。授業プリントが入ったファイルを取り出し、中を確認する。


……が、直ぐに俺の手は止まってしまった。



レポートがない……。

まぁ、どうせ他のファイルに……無い。


慌ててリュックサックの中身をひっくり返し、"あるものないもの"探し尽くす。

しかし、いくら探しても、所詮は"ないもの"で、見つかるわけが無い。


でも、こういう時って大抵、期限が間違ってたり。


祈るような思いで、黒板の端に貼ってあるレポートについてのプリントを見る。クラスメイトが邪魔で見にくかったが……。



1年2組 科学

レポート提出期限:10月13日木曜日17:30まで

期限をしっかり守って提出しましょう!



俺の日付付きの腕時計を見る。

13日、3時17分。あーあ、何かの間違いならいいのに。

と、心の中で頭を抱える。


あと、プリントの下の方の、勉強をしている様子のフリーイラストが腹立つ!


成績は落としたくないし、仕方ない。

初めから書き直す!


幸い、レポートの難易度はそこまで高くないから時間は大丈夫だろう。

こうなったらさっさと終わらせて、さっさと帰るぞ!



レポートを書き始めてすぐは、クラスメイトがおちょくるように声をかけてきていたが、それもいつしか聞こえなくなった。



そして……


「はぁ、終わった……。」


出来上がったレポートを手に取り見ると、思わず声が出る。

それにしても、誰もいない教室でひたすら文字を書くことがこんなに辛かっただなんて……。


廊下に出ると、窓から曇り空を介した青白い日が差し込み、遠くから運動部の掛け声とホイッスルが聞こえる。

帰宅部の連中はやるべきことを既にやっていたようだ。


職員室に駆け足で向かい、レポートを提出。

ぽっちゃりした先生がメガネを抑え、レポートをジロジロ見ている。

やはり、こんな先生は首にかけたタオルと丸メガネが良く似合う。


「んー、ギリギリだったな。次からは気をつけろ。」

「すいません……。」


予想以上に時間がかかり、現在時刻、ほぼ17時と、今から帰るにしてもしんどい時間。

俺が文句を言う筋合いはないが……。

もっと早く提出してれば良かったな。


そう思ってると、自然と足取りが重くなる。

いつもしんどい駅の階段はさらにしんどく、息が軽く荒くなる。


家から最寄りの駅に到着し、その後も黙々と歩き続ける。

そのままいつも通り歩き、家に帰る予定だったが……。


車の少ない交差点に到着し、信号を待つ。俺以外には、向かいの歩道にピンクの派手なおばちゃんがいるだけだ。

ここは家から比較的ちかいのだが、おばちゃんは見たことない。


あんな人いたっけかな。そう思って観察していると、信号を渡った少し先に、普段は後目に通り過ぎる小さな路地を見つけた。


ふむ、たまには別の道を選ぶのもいいかもな。


信号が青になり、できるだけ自然に、その小さな路地に足を踏み入れた。


俺の身長より少し高い位のブロック塀に囲まれ、少し圧迫感を感じる。

たぶん、閉所恐怖症の人じゃ発狂するんじゃないか?

足元も舗装こそされているものの、ヒビが入ったりしている。


日は沈みかけ、さらに曇ってることもあり、この路地は薄暗い。

しばらく歩いて気づいたんだけど、分かれ道が多いいね。


自分でも分かるほど気分が高揚し、ステップをふむように歩いていた。


まるで、日本とはまったく別の世界に迷い込んでしまった感覚だ。

ほんとなら迷子になるくらいだと面白いが、残念ながら俺のスマホにはマップがついている。

帰りに迷うことはないだろう。



薄暗く、人の気配もしない……そんな路地を右に左に、と曲がりくねりながら進んでいく。が、ウキウキした俺の足は止まった。


目の前に、汚い空き地。はぁ、行き止まり……か。


もう帰ろう、引き返そうと考えた時、一瞬、俺の目に光が飛び込む。


もう一度空き地を見回す。

草がボウボウな所もあれば地面がむき出しのところもあり、土地の周りをフェンスで囲ってある。


逆立ちしたって分かる、一般的な空き地だ。

それに、光るようなものも、光を鋭く反射するようなものもない。

強いて言うなら空き地を囲む家の窓くらいだが、よく考えたら、今は日が出ていない。


ただ、道に面した場所にはフェンスとかはなく、簡単に侵入出来そうだ。

実際、空き地には至る所に何かの空き缶が落っこちている。たぶん、不良さん達の吹き溜まりなのかな。


一瞬、元来た道に足が向きかけたが、俺の関心は開放的な空き地に向けられたままだ。

強引に身体を空き地に向け、少し探索することにした。



暫し、人が来ないか心配しながら、何も無い空き地を歩き回る。

わかっていたが、何も無い。


つまらん、実につまらん。とか思った瞬間、また、何かが光った。


反射的に光の方向を見ると、空き地の奥の方で、周りより一層、草が生い茂っていた。


草を踏み倒し、そこへ向かうが、何も無い。

しかし、確かに何かが光っている。どういうことだ?

いや、自分に問いかけたって分からないぞ。

もう一度、辺りを見回す。


そして、やっと気づいた。

何も無い空間が光っていた。


僅かな光の加減で、()()の輪郭に見えた。


周りをぐるりと回ってみたが、不思議なものだ。どの角度から見ても、見事な亀裂。


口で言い表せるものでは到底ない。


スマホで写真を撮って見ても、ちゃんと亀裂が見える。


さて、これはどうするべきだ?普通に考えて、誰かを呼ぶか、知らぬふりをするか……。


でも、立ち入り禁止とか事情聴取とか、きっと面倒事になる。

そうなる前に、やりたいことをやってみるのがいいかもしれないな。


ちょっと迷ったが、まずは何かで突っついてみることにしよう。


足元の草をむしり、近ずけてみる。


……好奇心が災いしたのか、それまで拳ほどだった亀裂は、聞いた事のない音を響かせ、縦に裂けるように拡がる。


ビビって手を引っ込めるが、裂けた中心がめり込み、強く光ったかと思えば、今度は真っ黒になった。


そこに吸い込まれるように風が吹き、空き缶が転がる。

いや、引き込まれるに近いかもしれない。


いやいやいや、冷静になってる場合違うし!

ダイ〇ン級の吸引力が吸い込むのは、俺も例外じゃない!


吸引力に抗うように踏ん張るが、ふと、足元が見えた。

ステンドグラスのように足元が屈折し、ぐにゃぐにゃとねじ曲がる。


「わわっ!」


慌てて片足を引いたのがまずかった。



「うわっっっ!」


片足だけになった下半身がバランスを崩し、咄嗟に目を瞑り、転ぶの衝撃に備え__。


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