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魔法使いの名付け親  作者: 玉響なつめ
第三夜 この世は不思議なことばかり!

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 入ってきたのは先ほどのマオと、もう一人、年かさの女性だった。

 二人とも麻の葉模様の着物に白いエプロンを身につけた、まるで和風メイドカフェからやってきたような服装だったので三ツ地家で働いている人なのだろう。

 

「お茶をお持ちしましたぁ。若いお嬢さん方なので、洋菓子のほうがいいかなって思ったんですけど和菓子のほうがよければそちらもお持ちしますう」

 

 どことなく気が抜けるような語尾を僅かに伸ばした喋り方とへにゃりと笑う姿。

 そして頭の上で猫耳がぴょんと立ち上がり、尻尾まで見えているあたりもう隠すつもりもないらしい。

 

 そんな彼女の様子に、共に現れた年かさの女性がため息を吐いて可紗たちに丁寧なお辞儀をした。

 

「マオがお客様方に失礼をいたしましたこと、お詫び申し上げます。申し訳ございませんでした」

 

「……可紗さん、明石さん、彼女たちはうちで働いているマオと、真白さん。二人とも、猫又の一族なんだ」

 

「ねこまた」

 

「平たく言うと、猫の妖怪ですう。そちらのお嬢さんが人魚さんで、あんまりにも綺麗でおいしそ……じゃなかった、お珍しかったのでつい本性のほうが強く出ちゃいまして……申し訳ございませんでした!!」

 

 へらりと笑ったまま言葉を重ねるマオだったが、隣の真白にちらりと視線を向けた瞬間、頭上の耳がぺたんとして土下座した。


 力関係を目の当たりにした可紗は目を丸くしてなにも言えなかったが、汀にとってはこれが日常なのだろう。

 驚く様子もなく呆れたようにやりとりを見守るだけだ。

 

 ただ、謝罪を受けているウルリカのほうはどことなく怯えたような、だけれどそれを悟られたくないらしくビクビクしながらも目を吊り上げている。

 

「い、いいわよ。許してあげるわ、ワタシは寛大な人魚ですもの!」

 

「ありがとうございますぅ」

 

 ウルリカが許したことでほっとしたのだろう、マオが満面の笑みを浮かべている。

 そんな彼女たちの様子を見ながら、可紗は声を潜めて汀に尋ねた。

 

「……人魚って寛大とか関係あるの?」

 

「さあ……ぼくも人魚に会ったのは初めてなんだ。河童とかならあるんだけど……」

 

「えっ、河童とかもやっぱりいるんだ! じゃあ私たちが気づいてないだけで、結構人じゃない人ってそこいらにいる感じ……?」

 

「まあそうだね」

 

「汀様、もしかしてそちらのお嬢様は……」

 

「ああ、普通の人間だ」

 

「なんてこと」

 

 可紗と汀の会話を耳にしての確認だったのだろう、だが真白の表情はとても歓迎しているようには見えない。

 困惑しながら可紗が汀を見て、真白へと視線を向ける。

 そんな彼女たちの様子に、ウルリカとマオも気づいたらしく黙って見ていた。

 

「……こちらは同級生で、柏木可紗さんと明石ウルリカさん。明石さんは二人も気づいているだろうが、人魚の血を引いている」

 

 最終的にはため息を吐いた汀が、真白を説得するかのように説明を始める。

 

 さすがにウルリカが呪いをかけたところについては、ちょっとした行き違いの末に可紗を巻き込んでしまったというような形で濁してくれた。

 

「……なるほど、事情はわかりました」

 

「幸いにも可紗さんは、お知り合いに人外の者がいるらしくてね。寛容に受け入れてくれたんだが……」

 

「さようでしたか。どのようなお知り合いで?」

 

「……昔、母が危ないときに助けてくださったご縁なんです。今も、親しくさせていただいています」

 

「まあ! それはそれは……。良い縁に恵まれたのですね」

 

 人ならざる者が気まぐれに人を助ける寓話はいくつも存在する。

 それらをなぞるような可紗の話に、真白もようやく優しい笑みを見せた。

 

「実は、三ツ地の家はこの地で古くから人と結びつきの深い家柄になります。それで、そこに縁を持とう、あるいは人と仲良くすることをよく思わない者たちが人の子を操り近寄る例が絶えず……」

 

「あ、そうなんですね」

 

 同調するような返事をしたが、可紗にはよくわからない。


 古い家柄というのも大変なのだろうなと思いながら、可紗は嵌めっぱなしにしていたお守りの指輪を外し、真白に見せた。

 

「これ、その人からいただいたお守りなんです」

 

「……とても、大切に思われておられるのですね。大変失礼いたしました、このように想われる方が三ツ地を害するはずもありません」

 

 にっこりと笑顔を見せた真白が指輪を返してきたので受け取り、再び嵌めた可紗は小さく首を傾げた。

 もらったときは綺麗な指輪だと思ったし、ジルニトラやヴィクターは『気休め程度だから』と言っていたが、見てわかるものなのだろうか。

 たしかに汀の結界に対して影響力があったとは思うが、可紗にはよくわからない。

 

 汀はそんなやりとりを見守っていたが、可紗たちの話が落ち着いたのを見計らっていたのだろう。ぱんっと手を打った。


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