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14 食堂

渡された食事を持って、空いている席に座る。というか席が空く。


「アルバート殿下、どうぞこちらの席をお使い下さい」

「第三王子が来たぞ、スペース確保して!」


ねえ私の婚約者ってどういう人なの?まだ二年間しか通ってないんだよね?


「クリスティナちゃん、アルバート殿下はとっても魔法が強いんですよ。氷の王子って呼ばれてて、さっきみたいに笑うことなんて滅多に無いんですからね。ファンも多くて、人気なんです。あ、もちろん恋人の噂とかはありませんよ。安心してください」

「ん。確かに強そう」


フレンチクルーラーとポンデリング、どちらを先に食べようか吟味しながらクララの話を聞き流す。彼女はお昼からなんか焼いた肉っぽいのを注文していた。多分ハンバーグ亜種とかそんなもんなんだろうけど、君よくお昼から重いの食べられるね……。

でもこれはいい発見だ。王子はいつも爽やか系王子をしているわけではないのだ。顔を合わせるたび甘ったるい言葉をかけてくる王子だけど、人前ではまともだというなら良かった。さすがにみんなの前で王子発言はされる側としては恥ずかしいものがある。


「クリスティナ、口にクリームが。僕が拭き取ってあげよう」

「あ、すみません」

王子のハンカチで口元を拭かれる。うん。予想はしていたがこの人、私に対しては自重する気無いな?ほとんど初対面だというのに、私の何を王子は気に入ったのだろう。幼い頃からの婚約者効果で刷り込まれているのだろうか。分からん。


そして王子、ハンカチを自分の口に持っていってクリームを、パクッ。


信じらんない。この王子カップルとかがやるやつを十二歳で実行しやがった。やばい。私は前世でも付き合ったりした事は無かったのだ、この手の刺激に対する耐性が一切ない。自分でも顔が赤くなっていくのが分かる。私の好みはもっとおじさまとかだとは言え、王子もかなりの美形なのだ。

私の口についてたクリーム食べられた!

うおお。胸がドキドキするっていうか、頭がぐるんぐるんするっていうか。初めての食堂で、一人だけドレスでとかは今はもうどうでもよくて。さっきまでクララとばっかり喋っていたはずなのに王子から目が離せない。そうか。私、この人の婚約者なんだ。この人といちゃつく権利を持っているのは他ならぬこの私なのだ。

うわー。ドーナツの順番とか全部吹っ飛んだ。結局オールドファションは前に持ってくるんだっけ、締めに食べるんだっけ?顔が熱い。


「おおお……。お二人は本当に会うのが三年ぶりなんですか……?私初めて生でそれする人見ましたよ。ていうかそんなにいちゃつくんだったら私いらないじゃないですか。アルバート殿下がクリスティナちゃんと一緒に授業受けてくださいよ」

「それで仮にクリスティナの補佐を外されたとして、クララは満足かい?」

「ううん寂しいです」

「確かに四六時中ついて回りたい気持ちはあるけれど、クリスティナは今まで同年代の知り合いがほとんどいなかったらしいからね。同じ女の子の友達も必要だろう」


サンキュー王子。王子と二人で受ける授業は寝れる気がしない。未だに彼が私と話していた覆面の頭を吹っ飛ばした理由が分からないのだ。私の中での評価は、カッコいいサイコ野郎である。クララは、うん、何だろう。寝ても優しい注意で終わりそうな安心感がある。


「そう言えばクリスティナ、魔力測定の結果が出たと聞いたよ。どうだった?」

どうしよう。

寝てて半分くらいしか聞いてない。バトル展開をしないと心に誓った以上、大きすぎる魔力は私にとって害にしかならないのだ。大体魔力だけあっても、反射神経とかグロ耐性とかが必要な戦闘に私がついていけるとはとても思えない。最初に暗黒魔法とか闇系でないことを確認したら、あとは夢の世界だった。

「それがクリスティナちゃんすごいんですよ!魔力の属性は基本四属性を全て網羅していて、それに追加で何種類か適性があるそうです。量も私の3倍以上あって、データを宮廷魔力研究所の方に送って正確なものを測ってもらうとアルメーヌ先生がおっしゃってました」

「クララの三倍以上って事は……。僕の魔力量を既に超えているじゃないか!それは本当なの?」

「はい、なんでも百年に一人いるかいないかの逸材らしくて。先生、それだけに授業でクリスティナちゃんが寝痛い‼︎」


危なかった。王子に居眠りがバレるのはまずいなんて話じゃないだろう。足を思いっきり踏んづけると何とか止まってくれた。ほんとごめん後でおやつでも買ってあげよう。さっそく告げ口しようとしやがって油断も隙もない。次にクララが、何を言うか、ひやひやものである。心臓に悪い。


「……。僕の二倍以上……」


王子が嬉しいのと悔しいのが入り混じったような、複雑な顔をしている。そういえばさっきクララが王子は魔法が強いって言ってたっけ。ぽっと出の婚約者に簡単に超えられては納得いかないのも当然だろう。しかし悲しいかな、私は転生者なのだ。魔力チートなんて、異世界七つチートが一つ、基本中の基本である。

ちなみに他の六つは言語チート、勉学チート、愛されチート、直感チート、知識チート、努力チート、能力チートである。私個人の見解です。そして一つ多かった気がする。

安心しなさい王子。私はこの異世界を戦闘系に持って行くつもりは無い。二人で適当に恋愛して早く結婚してすれ違わないうちにハッピーエンドまで走り抜けよう。


「大丈夫ですよ殿下。私は無益な争いをするつもりはありませんから」

「ぐはっ……」

「クリスティナちゃん、超上から強気発言です……。慰めようとしたんですか?多分そうですよねそうだと言ってください。アルバート殿下に精神的ダメージが入っています」


なんか失敗した?まあいいや。王子は最悪手放してもどうにかなるキャラクターと見た。人生諦めが肝心。

本当に、本当に困った事があれば魔石を売ればいいって何かで読んだ気がする。その時は魔力にもお世話になるだろう。問題は、今世と前世で読んだものが頭の中でごちゃ混ぜになっているせいで、どれがこの異世界にあってどれが無いのかが今ひとつ分かって無いところである。確か魔物は居なくて、精霊も居ないけど聖女は存在して、魔法はある。悪魔も半々くらいで存在する。今のところこれくらいか。


「魔物ですか?辺境とか、人気が無い場所には普通に居ますよ。さっきの授業で軽く触れてたじゃないですか。クリスティナちゃん、一体いつから寝ていたんですか……?」

「クリスティナが拐われたあの森は、山賊が住み着いていたとは言え王都の郊外のようなところだったから。さすがにそのくらい人里に近ければ、魔物はほとんど出ないんだよ。僕たち王族や貴族には、人々を魔物から守る義務もあるからね。そのため魔法の訓練を受けるんだよ。」


へー。マカロンを頬張りながら頷く。と言う事は後数回の戦闘は避けられないという事?まあ慣れたら慣れたで生存確率が上がるからね。


氷のなんとかみたいな二つ名で呼ばれてる王子より魔力があるなんて、ひょっとしたら戦闘系も案外捨てたもんじゃないかもしれない。そう思った。間違って、そう思ってしまった。


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