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その猫の秘密  作者: onyx
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横須賀市巨大生物災害レポート1

 これは、俺が個人的に纏め上げた、あの災害に関するレポートだ。開示されている情報と、ネットで一時期噂になった信憑性のない情報、海外サイトからの記事も混ざっているので、どれだけ真実に迫っているかまでは分からない。

 別にこれをネットに掲載したり、週刊誌に持ち込む気もない。ただ、身内を奪い去ったあの事件にどんな背景があったのか知りたいと言う欲求から、俺は今も情報を集め続けていた。


 発端は横須賀市が灰燼に帰す三週間も前に遡る。硫黄島周辺で訓練(政府公式情報)をしていた海上自衛隊のP-1哨戒機(第4航空群所属機)が、海中に謎の音紋(熱源との説も)を探知した。過去のデータベースに該当しない音紋だったため、P-1は訓練を中止して直ちに追跡を始める。

 位置が急に変わったり消えたりするこの目標(政府公式情報)をP-1は数時間に渡って追跡するも、途中でソナーから反応が完全に消失。応援に駆け付けた味方着と共に捜索を行うが、発見は出来なかったそうだ。

 それから少し経って、硫黄島分屯基地から島の周辺で異音が多発しているとの報告が舞い込んだ。硫黄島は火山活動のある島なので、それに関連した自然現象かとも思われたが原因は不明(気象庁は地震等を観測していない)である。更に3日後、島の近くを航行していた米海軍の車両貨物輸送艦(ワトソン級・艦名はダール)が謎の事故(父島在住のアマチュア無線家がSOSを確認)によって沈没した。海外サイトでは某国の潜水艦によって攻撃されたのではと多数の書き込みが見られる。

 乗員の多くは硫黄島分屯基地の隊員たちによって救助されたが、この事故が切欠となり海幕と空幕は基地に対して人員や機材を一時的に本土へ引き揚げるよう命令。分屯基地司令からの上申(在日米軍も一枚噛んだとの噂)もあった事で、輸送計画は大急ぎで練り上げられた。

 深夜の内に呉から第1輸送隊の輸送艦が出港(ミリタリー系の掲示板に「おおすみ」等が出港するのを見たとの書き込み多数)し、夜明けと共に空自のC-2やC-130、海自のC-130R等の各輸送機が硫黄島へ向けて離陸(各基地周辺で異様な離陸数の目撃情報)していった。


 最初に異変を確認したのは、空自のC-2輸送機(政府公式情報)だ。硫黄島からのSOSが舞い込み、非常に不安定な通信から聴き取れたのは「巨大生物」と言う4文字の言葉(例の父島在住アマチュア無線家もこのSOSを確認)だけだった。帰りの燃料も考えると急ぐに急げない中で(急いで出たため燃料不足で、硫黄島で補給をする予定だったらしい)輸送機は硫黄島までの距離をジリジリと詰めていく。そして硫黄島が見え始めた時には、島から登る幾重もの黒煙が風防越しに確認(ニュースで放映)出来た。

 島へ近付くに連れ、2つの巨大な物体が蠢いているのが分かり出す。それは基地を踏み潰し、口から吐く光線で硫黄島の大地を抉っていった。パイロットは緊急事態を宣言して後続の各機へ警戒(周辺を航行中の民間機へも・民航各社の公式発表あり)を促しつつ、司令部への報告とその光景(ニュースで放映)をカメラに収め始めた。

 硫黄島分屯基地を破壊し尽くした2体の巨大生物は、背中のトゲが特徴的な二足歩行型と、セイウチのような牙が生えた這って動く種類(Wikiに写真あり)に分けられた。輸送機の存在に気付くのも時間の問題と思われたそこへ、海を割ってもう1体の巨大生物が出現。これこそ、横須賀で二足歩行型と死闘を繰り広げた、四足歩行する黒い巨大生物である。

 基地を襲った2体と海から現れた1体は敵対関係にあるらしく、上陸と同時に激しい格闘戦(Wikiに映像もある)へ発展。動きの遅いセイウチ型は執拗に攻撃を受け、大きなダメージを追った。もう1体は特にそれを庇うような行動はしないものの、敵意を剥き出しにして攻撃を加えている。

 横田基地から輸送作戦支援のため飛来した在日米空軍のC-130Jもこの光景を目撃し、直ちに基地司令部へと報告が駆け上がる。本土で統幕と在日米軍司令部の間で情報の刷り合わせ(日米地位協定について密談が行われたとの噂)が行われている間も事態は進行。上空と洋上でその成り行きが見守られる中、3者の戦いに1つの決着が着いた。黒い巨大生物の執拗な攻撃に耐えかねたセイウチ型は海へ逃走。それを追い掛けて海に飛び込む黒い巨大生物を、二足歩行型が更に追跡する形となった。

 

 海へ逃げたセイウチ型を、最も距離の近い位置で航行中だった海自潜水艦「なるしお」へ追跡命令が下る。在日米軍は第一級の臨戦態勢に移行し、横須賀から第七艦隊の空母「ロナルド・レーガン」とミサイル巡洋艦2隻の機動打撃部隊が出港。「なるしお」は位置をトレースし続けて報告を繰り返した。

 翌日の昼前、小笠原諸島の東方50キロ地点で人類と巨大生物の第1回となる戦いが繰り広げられた。これの戦いは公式に「小笠原諸島沖対巨大生物海戦」と呼称されている。

 空母「ロナルド・レーガン」が搭載するF/A-18の航空攻撃が幾重にも繰り返されたが効果は皆無。搭載弾薬を全て使い果たしたため、巡洋艦2隻がトマホーク巡航ミサイルによる攻撃を実施した。何度か海に潜ってかわされるも、それなりに効果がある事が判明。しかし2隻はトマホークも撃ち尽くし、ハープーンで追撃を加えたが撃破には至っていない。主砲程度の火力でどうにもならない事は安易に想像出来たため部隊は反転。何故か横須賀には帰港せず、佐世保を目指して西進を開始。一説によると、空母の喪失を恐れての措置らしかった。

 しかしこの時点でセイウチ型がほぼ満身創痍である事は、3隻の乗員だけでなく戦闘機パイロット、監視を続行していた「なるしお」乗員も確認済みだった。ここに来て在日米軍は次の一手に踏み切り、太平洋で作戦行動中だった原潜「シカゴ」を呼び寄せ、最大射程から再びトマホークによる攻撃を行った。日本の領海内であるため、流石に熱核弾頭の使用は憚られるがこの攻撃でセイウチ型は撃破され、大量の出血と肉片を「なるしお」が確認している。


 上記の戦闘に関する記録はホワイトハウスの報道官が記者会見で報告しており、そのニュースは世界中を駆け巡った。日本政府も「なるしお」が記録した情報と刷り合わせ、正式な発表を行っている。


 どうしてここまで米軍の行動が迅速だったのかは後述しようと思う。今は取りあえず、時系列に沿って起こった事を纏めたい。

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