これは『ユーキ』の話
私は死んだ。
事故で女の子が轢かれそうになったところを助けた時に、代わりに死んでしまった感じだ。
そしたらなぜかわからないが赤ん坊になっていた。
戸惑りながら、どうやら魔法やら剣やらがある、中世的な異世界に来てしまったことが分かった。
俗に言う「異世界転生」というやつだろう。
まあ、異世界だとしてもまだ生きれるというのは嬉しかった。それに魔法やら剣は憧れだった。しかもどうやら私は「チート」らしい。イケメンで魔力も体力もセンスもあった。
そして私はその力によって、都市にある国立学園に通うことになった。
「ユーキさん、あそこのカフェに寄りませんか?」
今、私に声を掛けたこの娘は公爵家のマリーだ。
輩に絡まれていたところを助けたら、身分差もあるのに仲良くしてくれるようになった。良い子でかわいいし気も合う。この学園でとても仲良くしてくれる娘だ。
「マリーさん、前をよく見て・・・」
「あっとっと・・・!?」
「危ない!」
・・・ドジっ子なところもかわいい。
とっさに体を支えてしまったがセクハラとか大丈夫だろうか?
「あ、ごめんなさい。石につまづいて・・・」
「いいですよ、それよりごめんなさい。つい支えちゃったんですけど・・・」
「助けてくれたんですから、そんなこと言わないでください。ありがとうございます。」
・・・いい娘だ。セクハラとか言われるかもと思ったからホッとした。
マリーと一緒にカフェに入り、美味しそうなケーキを注文した。
さすが都市・・・!こんなに甘いものがあるなんて・・・!高いけど・・・!
「さっき助けてくださったし、私がユーキさんの分も買いますよ」
「いいですよ、そこまでのことではないし、自分の分は自分で買いますよ。でも気持ちはありがたくもらいますね」
異世界でもいい子と友達になれるのは嬉しいなあ。
じーんとしながらケーキを待つ。
この紅茶、いい匂いで美味しそうだ。
「思うんですけど、ユーキさんって変わってますよね」
「・・・え?」
「あ!悪口ではないですよ!・・・えへへ」
ど、どこらへんかを教えて欲しいんだが!?
自分的には変なところはないと思うけど、元は異世界人だからなあ・・・
何かやらかしたんだろうか?
「・・・ユーキさんって女の子をはべらかしたり、力とかを自慢しなかったり、私の周りにいた男の子と違いますね」
「だって女の子・・・というか人とは誠実にしたいし・・・力とかは自慢するものじゃないですしね」
そうか、男の子って力って自慢するよな。元の世界ではしなかったことだからその発想はなかった。
それにハーレムねえ・・・この世界ってまだ男尊女卑が強いから、ハーレムみたいなのって元の世界よりも出来やすいけど・・・
ケーキを食べてカフェを出た私達は学園の方に足を向けた。
「あれ?大声がしませんか?」
マリーがふと足を止めて周りを見渡す。
私も周りを見渡した。
「・・・あの路地裏ですね」
路地裏の近くに行き、身を隠して注意して聞くと、どうやらナンパらしい。
ただ、女性が必死に断っているのに男が無理強いしようとしている。
しかも女性が2人に対し、男は3人。
他の人は男が不良で怖いのか遠巻きにしている。
「助けようか・・・マリーさんは危ないので遠くに」
「憲兵さん呼びましょうか?」
「あの人達、私達と同じ学園の生徒だから、あまり大事にすると学園の名に傷がつくと思うし、あれぐらい大丈夫ですよ」
「・・・駄目そうだったらすぐ呼びますからね?」
いい子だ・・・
私はマリーにうなづいた後、男達に声を掛けた。
「女性が嫌がってるでしょう。やめましょうよ」
「ああ!?・・・あ!お前あの優等生か!邪魔するな!!」
「何でお前の言うこと聞かなきゃならねえんだよ!それに前から、そういう鼻にかけたとこが気に食わねえんだよ」
「怪我したくなきゃさっさとどっか行け、優男」
駄目だこの人ら・・・この世界でも流石にここまでは珍しい。
「ほら、暇だろ?遊ぼうぜ?」
男性が女性の手を無理に掴んだ。
ひっと悲鳴を小さく上げた女性を見て、つい女性の手を掴んだ男性の腕をとっさに掴んでしまった。・・・しょうがない。
「ほら、やめましょうって」
「ああ!?・・・!」
私に腕を掴まれた男性が、私の強い力に青い顔になった。
「邪魔するなよ!!」
別の男性が私に殴り掛かった。
私は男性の腕を掴んだまま、片手で力を受け流して男性を転ばせる。・・・派手に転んでるなあ・・・
「て、てめえ!」
残った1人が小剣を出した。
女性が悲鳴を上げ、他の仲間の男性が止めようと声を掛かる。
しかし、面子が潰れたからか、勢い良く私に小剣で切り掛かってきた。
「ユーキさん!!」
マリーの声が聞こえる。
「怪我させないで!!」
「手加減はしましたよ・・・うん」
目の前で男性が伸びているのを見ながら、返事をした。
さすがに片手はきついかと思って、強化魔法を自分に掛けてただ殴ったんだけど・・・
やっぱりこの体だと強化魔法要らなかったかなあ・・・
「ユーキさんが男性を勢い良く殴った後、男性が壁に勢い良く当たって、男性が勢い良く倒れた様に見えました」
「・・はい。後で回復魔法掛けます・・・ごめんね・・・友達に・・・」
「いや、流石に今のはあいつの方が悪い・・・」
「ああ、そうだな・・・」
ナンパ男すら引いてる・・・伸びてる男に回復魔法を掛けたら、とっとと何処かに行ってしまった。
これだと女性も引いてるだろうなあ・・・謝ろう。
「・・・ごめんね、大事にしちゃって・・・」
「い、いえ!全然!ありがとうございます!」
「本当に助かりました!」
おや?引いてない?
「お礼を・・・!いえ、もしよろしければ・・・!」
「おっほん!さあ!早く学園の寮に戻りましょうか!!」
「え?はい、そうですね」
女性の言葉を遮ってマリーが大声を上げる。
女性は何を言おうとしたんだろう?
「でも男性って、どこでもあんな人いるんだね」
異世界でもそういう男性いるんだなあ。
「やっぱり変わってますね」
「え?」
何かおかしいこと言っただろうか?
「ユーキさんって良いところですけど、女性目線なところありますよね」
「そりゃあ」
元の世界では『女性』だったからね。
異世界転生で女性が男性ってあんまり無いな〜!ハーレムってその場合百合・・・?
って思いながら書きました!・・・本格的に恋愛になるときは注意書きするのでご安心を!