第八十四話 救出の連鎖
教室の開放は順調に行われた。二年生の教室は完了し、三年生の教室へと向かうと、教室では騒ぎが起こっていた。
「おおぉぉぉ!」
俺達はその騒ぎに乗じ、一人ひとり確実に昏倒させていく。三年生達は、怪我をしている者が多かった。きっと速攻戦に失敗したのだろう。もしかしたら中に一味違う敵がいるのかもしれない。俺はそう考えながら魔浄教団員を昏倒させていくと、一人、いや、二人の殺気を感じ、後ろに跳躍した。すると、ちょうど足があった箇所に刃が突き刺さる。
「ちっ、今ので縫い留めたつもりだったんだが……」
スペツナズナイフ《・・・・・・・・》の柄を投げ捨てた男が、舌打ちをしながらそう言ながらコンバットナイフを取り出し、こちらへ走ってきた。
「和義!もう一人を!」
俺はとっさに指示をした。今いる魔浄教団員で、力を持っていそうなものは、こいつ以外にあと一人いる。そいつを和義に任せ、他は三年生と千姫に任せよう。そう思いながら俺はフォールディングナイフを懐から取り出し迎え撃つ。キンッと音が数回響く。両者ともに、攻撃をしては弾かれてを繰り返している。だが、向こうの方が少し優勢であった。俺はナイフ術をある程度しか使えないが、向こうはそれをしっかりと体得しているのだろう。技量の差があった。現に向こうは無傷だが、こちらは服が数か所斬られている。和義の方も同じようだ。まだ倒すには至っていない。……仕方ない、宗教徒もいる学校ではあまり使いたくなかったんだが……そう思いつつも、俺はタイミングを見計らって、手をを強く壁に叩きつける。すると、それと同期して、壁から岩の刃が伸び出てきた。『上位術式、爆刀凄創』の無詠唱である。魔浄教団員は無詠唱を初めて見たのか、明らかに動揺し、岩の刃が手の甲に当たり、コンバットナイフを落としてしまう。そのタイミングで俺は、フォールディングナイフを逆手に持ち、ナイフでも出来る剣術、『新藤悠漸流剣術初伝、龍頭刃尾』を行う。その攻撃は魔浄教団員の下顎に当たり、数秒の後に昏倒する。それを終わらして和義の方を見ると、和義も赤力術式を使い、魔浄教団員を倒していた。他の魔浄教団員も、三年生と千姫が倒していて、これで、教室をすべて解放した。そして俺は、和義に手伝ってもらい、魔浄教団員を同じ教室に集めていた。集め終わると、魔浄教団員の一人を起こし、聴取を始めた。
「『供述せよ、全てを話せ、包み隠さず、全てを語れ、貴方は、そう語ることしかできない、中位術式、課制告自』……さぁ、あんたらのこと、包み隠さず教えてもらおうか」
俺がそう言うと、目を覚ましていた魔浄教団員は、意気揚々と話す。
「はっ!俺がそんなこと話す訳ないだろう?」
「そうか……では、お前の他にこのテロに協力しているのは何人いる?」
「あのお方の護衛を足しても八十人ぐらいだ。……っ!」
魔浄教団員は、自身が簡単に話してしまったことに動揺しているようだ。俺はそんなことを気にせず、話しかけ続ける。
「あのお方とは?」
「聖使様に選ばれた魔浄人様だ。名前は知らない」
「他の魔浄教団員もか?」
「あぁ」
「次は、そいつらの今いる場所を教えてもらおうか」
俺は魔浄教団員に質問を続けた。……そして数分後。
「そろそろ三十分か……」
俺は魔浄教団からある程度の話を終え、壁掛け時計を見ながらそう思うと、外から中を覗く川蝉が目に入った。俺が急いで扉を開けると、川蝉は中へ入り、廊下の消火器の上に停まり話をし出した。
「“通達。川蝉、配置に着きました。学校内の情報を報告ください”」
「了解。報告します。生徒は全員ホームルーム授業だったため、テロリストからの解放に成功しています。テロリストは三十人確保しています。その他、テロリストとして学校に居る魔浄教団員は残り二十人。十人は職員室。もう十人は分離寄生命体の施設に居るようです。情報源は魔浄教団員ですが、赤力術式を使用しましたので嘘の可能性は極めて低いです」
「了解しました。分離寄生命体の施設を解放の後、職員室を迅速に解放します。あなた達は生徒と共に待機していてください」
「了解。待機します」




