第七十九話 川蝉の達成報告
「“通達。サラマンダー班、バイオレット班、無事妻子を救出しました。エルブ班は次の行動に移ってください”」
「了解」
俺は川蝉の通達に返答し、松川利斎の自宅のインターホンを押した。
「はい?」
インターホン越しに先日聞いた声が聞こえる。
「松川先生、俺ですパーティの時話した……」
「あぁ、君か!待ってくれ、今出る」
松川 利斎は俺の言葉が終わるより早く、動き出す。そして扉を開ける。
「他に誰かいますか?」
俺は監視役は居るのかの暗に聞く。
「あぁ、まだ来ていないよ」
「そうですか。では、単刀直入に言わせていただきます。松川先生の妻子の救出に成功しました」
俺の言葉に、松川利斎は少し唖然とし、その後理解が追い付いたのか、ぷるぷると体を震わした。
「そう……なのか。ありがとう!」
その表情に俺が少し微笑むと、うっすらとだが背後から走る音が聞こえる。俺はその音が近づききった所で、後方に回し蹴りを行う。タイミングはばっちりで、鈍器を持った男の横顔にクリーンヒットする。男は地面に叩きつけられて唸る。一応受け身は取っていたようで、死んではいない。そのことを確認していると、周囲から五人の魔浄教団服を着た男達が現れる。その男達を見て、松川利斎は動揺を見せる。きっと、この男達が監視者だろう。その中の一人が、静かに、だが通る声で話す。
「こんにちは、川蝉さん。妻子の救出お疲れ様でした。ですがここまでです。妻子の奥歯に小型爆弾が仕込んである。そろそろ爆発する時間だ。解除してほしければ俺達の指示に従ってもらおうか」
男はニヤニヤと爆弾の存在を明かす。俺は表情一つ変えずにに戦闘態勢を取る。
「あまり川蝉をなめるな」
俺はそう言うと、男達に向かって走った。男達は俺が攻撃してくることを察知して、戦闘準備を取る。俺は一番近くの魔浄教団員に右拳を突き出す。魔浄教団員は殴りかかってきた時の対応で、受け流そうと、俺の拳を叩こうと手を振るう。だが俺はその手を突き出した右手で掴み引っ張り、鳩尾に膝を食い込ませる。そしてそのまま魔浄教団員を倒し、横から迫っていたもう一人を裏拳で倒す。残りの魔浄教団は動揺を見せた。俺はその機を逃さず近くの魔浄教団員を殴り飛ばす。さすがにその行動で他の魔浄教団員は動き出す。その瞬間に俺は相棒の名を呼ぶ。
「天風ッ!」
俺がその名を呼ぶと、魔浄教団員達の背後から天風が現れ、一人を前足で、押し倒す。そして天風の方を向いた最後の一人を、蹴り飛ばし、戦闘を終えた。俺が一息つくと、天風に地面へと叩きつけられた魔浄教団員が、体をピクリとも動かせずに言葉を発す。
「これで、勝った、と思うな……周りには、まだ、仲間が……」
「周囲にいた魔浄教団員の確保終わった」
魔浄教団員の言葉を遮って、静達が魔浄教団員を抱えて現れた。それの気づいた動けない教団員は「なっ……」と掠れた声を発す。
「“通達、妻子に取り付けられた爆弾の処理が完了しました”」
魔浄教団員は遂に言葉を発しなくなった。精神的ショックで気絶してしまったようだ。
「それでは妻子の下へ向かいましょう」
俺は魔浄教団員を拘束しながら言うと、松川利斎はビクッと反応し「あ、あぁ……」と声を発して、裏道に入る俺達についてきた。




