第七十話 経費で落ちる?
「ねぇ誠!こうゆうのはどうかしら?」
服屋に入って数十分後、俺は自身のタキシードを選んでいた時、後ろから瑠璃先輩の声がした。振り返ると、一着のドレスを着て、感想を求めてきていた。俺はそれに少し思考して返答をした。
「とても似合っていると思いますよ。色合いが髪と合っていて良いですね」
瑠璃先輩が着ていた服は、空色のフレアラインドレスで、フレンチスリーブやジュエルネックにより、肌の露出はあるが清楚感もあり、可愛いと言う言葉が似合うドレスであった。俺の言葉に瑠璃先輩ははにかんだ笑顔で「そう?じゃあこれにするわ」と言った。
「じゃあ私この服に合うアクセサリーとか選んでくるわね」
瑠璃先輩は頬を紅くしたまま、嬉しそうにアクセサリーのコーナーへ歩いて行った。俺も早く服をきめなくては。そう思い視線を服に戻そうとした時、近くにいた朝雲と目があった。朝雲はあまり服には目をやらず、周囲の人を見ている。そんな朝雲に俺は質問をした。
「朝雲は、服買わないのか?」
「はい。私は礼服持ってますので」
俺の言葉に、朝雲は当たり前だというように言った。そう言えば朝雲家は名高い貴族だったなと、しがない超下級貴族の俺は思った。そんなことをしつつかれこれ数十分。
「お会計二百十二万九千八百円です」
「「「た……高っ!」」」
俺、瑠璃先輩、静は、想像を超えた高さに素っ頓狂な声を上げてしまった。
「三人分で一式買ったんですから、このぐらいしますよ、むしろ安い方です」
その中一人朝雲は平然としていた。……俺も平静にならなくては、どうせ人の金なんだ。罪悪感がない、と言うかとっても罪悪感があるのだが、織曖さんもこれを予想して経費で落としてくれると言ったのだろう。
「請求書払いでお願いします」
「ではこちらに記入お願いします」
俺はそこに織曖さんの名前を書き、その他詳細を書いて渡した。そして荷物を持って外に出た。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
そんな言葉を背中に受けながら、俺達は織曖さんに心の中で謝りながら、次の目的地に向かった。