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第六十九話 忘れ人


 俺達は魔浄教団員を緋丹夫妻(+《プラス》一人)に預け、俺達は路地を抜け大通りに出て少し歩く。

「ふぅ……ここまでくればいいんじゃない?」

 瑠璃先輩の言葉を聞き、俺達は足を止め、気を緩めると同時に、近くのベンチに腰を下ろした。すると瑠璃先輩は、俺達に向かって突然頭を下げた。

「二人とも、助けてくれてありがとう」

 公衆の面前であるため、仰々しいお礼ではないものの、そう真っ直に言われ、俺達は頭を上げるよう促した後に、少し恥ずかしいながらも「「当たり前です」」と言った。そして俺は切り返しを行った。

むしろ遅くなりました。すみません」

 俺が頭を下げると、続いて静も頭を下げる。それを見て、瑠璃先輩は大きく狼狽ろうばいした。

「えっ!別に遅くないわよ!時間的にはまだあったし……とにかく頭上げなさい!」

 俺達はそう言われ頭を上げると、あわあわと大きく狼狽した瑠璃先輩が視界に映る。俺達はそれに満足し、話をシフトチェンジした。

「それじゃあそろそろ服を買いに行きましょうか」

「そ、そうね?」

 いまだに狼狽していた瑠璃先輩は、俺の話題転換に多少疑問を持ちつつもすぐさま乗っかった。

「誠、服を買いに行くの?」

 そう言えば、色々あって瑠璃先輩に紫穂が提案してくれた事を話せていなかったなと思い、俺は瑠璃先輩に紫穂のことも含め話した。話をすると、瑠璃先輩は驚きを見せるも紫穂の話を少し詳しく話すと、納得したように頷いた。

「そう……誠、あの名家のお嬢様と同じ教室だったのね」

「はい。今回は名家の名前を使って中に入れてくれるそうです」

「成る程。それでパーティ用の服を買いに行くわけね。良いわよ、行きましょうか」

 瑠璃先輩は了承し静も同意、行動するために席を立とうとしたその時、何かを忘れている。そんな気がした。まぁ良いかと立とうとしたとき、俺はふとある一人の男を思い出す。

「あ……朝雲」

 俺の呟いた言葉を聞いて、立つために腰を上げていた二人は「「あっ……」」と声を上げ、ベンチにコテンと落ちる。すっかり忘れていた朝雲を、回収もとい呼び行くため、俺達は重い足取り、例えるなら、犯人は現場に~のような気分で、噴水広場へと戻った。少し長い時間をかけながら現場へと戻ると、そこは野次馬であふれていた。その中に見た事のある青年を見かけた。

「朝雲、おいっ朝雲」

「?どうしたんですか誠さんそんなコソコソとして」

 俺達が少し腰をかがめ、微妙な体勢で朝雲に話しかけた俺を不審そうに言う。俺は「後で話すから」と言って腕を引っ張り広場から離らかす。そして広場外の街道を歩きながらこれまでの話を要約し話した。朝雲はしっかりと話を聞いていたが、現実味が無いのか激しい反応は示さなかった。

「ま、この話はあの人たちに任せるから、後でいいとして。取り敢えずはパーティに行くための服を買いに行くか」

「そうね」

 俺の言葉に全員が賛成し、服屋に向かった。この服屋は、今回のパーティに見合った値段である、ブランドショップである。

「わっ、高そうなお店」

 瑠璃先輩が、尻込みをしつつも興味深そうに言う。

「高いですが、そこら辺は経費で落として良いみたいなんで、高い服を買っても大丈夫ですよ」

 俺がそう言うと、静は「おぉ~」と言って真っ直ぐ中に入っていく。

「躊躇ないわね、静ちゃん」

 と言いつつも興味があるのか、瑠璃先輩はキョロキョロとしながら入っていった。

「俺達も行くぞ」

俺の言葉に朝雲は素直に「はい」と言ってついてきた。

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