第六話 依託所
靴を履き、俺らは学校の施設の一つである『分離寄生命体依託施設』通称『依託所』に向かった。生徒は、朝登校前に依託所に向かい、半身ともいえる分離寄生命体たちを預け、授業に集中し、帰りに迎えに行くということをしているのだ。依託所に着いた俺たちは、玄関前右手の階段を上り、扉を開け、中に入る。するとそこには、依託員と話していた威勢のいい初老の国語女教師、恵澤 吉実先生がいた。
「恵澤先生、こんにちは」
俺たちが挨拶すると、恵澤先生は依託員から目を外し、こちらを見た。
「はいっ、こんにちは!今日はみんなで帰りですか?」
はきはきとした返事に俺たちは「はい」と答え、それを確認し歩き出した恵澤先生の後を追った。依託所の奥に向かうと、まるで森林の一部を切り取ったのではないかというほど広く美しい室内庭園のような空間についた。そこには、鳥にワニ、蛇や猿の形をした分離機生命体が、楽しそうに走り回ったり、飛び回ったり、ゆっくりと寝ていた。俺たちが中に入ると、ほぼ全ての動物がそれぞれの行動で入ってきた人間を確認している。その中から、針鼠と、ガゼル、ハイエナ、カツオドリや、六メートルほどの象、そして、小さい鳥と、狼の七匹が、俺たちのもとに向かってきた。
「全員来ましたか?」
恵澤先生が、確認するためにクリップボードを取り出した。俺たちはそのことに気づき、横一列に並び、先生の確認を待った。
「永津希さんの針鼠、守刺、信楽さんのガゼル、鈍勇、麻霧さんのハイエナ、独徒、工藤さんのカツオドリ、飛嶽、遠見さんの象、華昇、椎名さんの鳥、薙摘、新藤さんの狼、天風……はい、全員確認しました。気をつけて帰ってね」
先生の言葉に、俺たちは、「はい」と答え、幻想的な依託所を出た。