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第五十八話 深夜出勤
「じゃあ行ってくる」
「「行ってらっしゃい」」
俺はシャツとジーンズを着、上から同じく黒のロングコートを羽織り、形態変殻させて刀になっている天風を帯刀し、彩芽と千姫に見送られ家を出た。その後、少し予定時間から遅れたため、ある詠唱を始める。
「『跳躍を容易くし、疾走を安易にする、この便宜なる風は、我が身に使える、忠実なる風也、風は我が身に侍り、躍動を扶ける、中位術式、風躍』」
そう唱えると、俺の体に風が集まる。それを確認して跳躍すると、通常時の数倍の跳躍を見せ、民家の屋根上に着陸する。そして俺は、集合場所へ走り出した。