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第五十五話 予想以上の盛況

 それから数時間後……

「こんにちは~!」

 彩芽の家に次々と生徒が入ってくる。すでに会場にいる生徒は、三十人を超えていた。

「すごい人数集まったなぁ」

 眼を細くしながら会場の端で周りを見渡している和義が言った。

「ん。すごい数」

 真十花は少し眠たそうな様子で和義のボヤキに賛同した。

「まぁ、誠に勝ったからな~。そりゃー注目もされるだろう」

 友也は、彩芽家の高級感にきょろきょろしながら言った。

「単に可愛いからお近づきになりたいって言っていた男子もちらほらいたけどね……」

 美幸は溜息を吐きながら友也の言葉に付け加える。その言葉たちを聞きながら俺と彩芽はうんうんと頷いた。その時、マイク特有の反響音とともに、備え付けのマイクを持った言乃が、声を発した。

「は~い!みなさん、こちら注目お願いしまーす」

 言乃の声が会場に響き渡ると、和気藹々《わきあいあい》と談笑していた生徒たちは会話をやめ、言乃の立つ壇上へ目を向ける。

「……ありがとうございます!それではこれより『刃境千姫ちゃんの歓迎会』を始めさせていただきます。まず初めに、この場所と料理を提供してくださった椎名家の皆様、ありがとうございました。……いや本当に、企画を作ったまでは良かったんですが、会費や施設のことは何も考えてませんでしたから、彩芽ちゃんがいてくれて本当に良かったです」

 言乃が大きな失言とともに、椎名家へお礼を言う。それに付随ふずいして、生徒達は椎名家の人達がいる方へ向きお辞儀をする。それに対して椎名家の面々は、手を振ることで対応する。

「それでは、皆さんお待たせいたしました!刃境千姫ちゃんの登場です!」

 その声とともに、正面の大扉が開き、千姫が入ってきた。その光景を、生徒たちは拍手で迎える。千姫は表情には表れていないが、動きや目が、動揺や羞恥を物語っていた。千姫は壇上に登り、言乃からマイクを受け取る。そしてたどたどしく言葉を並べた。

「えっと……この度は私の歓迎会に、集まってくださり、ありがとうございます。えっと、楽しんでください?……です」

 千姫は、終始不慣れな所を見せてはいたが、恙無つつがなく挨拶も終わり、賑やかな歓迎会が始まった。

「千姫、お疲れ様」

 俺達は、千姫が壇上から降り会が始まるとともに千姫の下に向かい、話しかけた。すると、千姫は安心したようで、強張った顔を緩めこちらへ向く。

「誠……うん。疲れた」

 事前に俺や彩芽に聞いていた友人達はあまり大きな反応を見せなかったが、俺と千姫の周りの人間は大いに反応した。目を見開き驚く者や落胆する者、誠を射殺さんと睨む者やキャッキャと騒ぐ者もいた。が、俺達は気にすることなく話を続ける。すると、近くにいた先輩の生徒が千姫に話しかけた。それを皮切りに、次々と生徒がわらわらと千姫の下に集まる。千姫の歓迎会なのだから当然と言えば当然なのだが、千姫の周りだけ人口密度がとんでもないものとなった。なので俺達は、邪魔にならないように、そそくさと後ろに下がった。助けを求める千姫の目から逃れるように。

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