第五十話 雑炊な一時
俺達は、移動に一時間、聴取に三十分ほど時間を取られ、帰るころにはすっかり日が落ちていた。
「ただいま~」
彩芽が玄関でそう言うと、リビングから天風と薙摘が飛び出してきた。その光景を見ていた俺と千姫は、靴を脱ぎ洗面所に向かった。俺たちが手を洗い終わるころに彩芽もやってきて、手を洗う。そしてタオルで水を拭き取ると彩芽は言った。
「誠、私これからあり合わせで晩御飯作っちゃうから、その間にお風呂入っちゃってよ」
彩芽の言葉に、俺は少し罪悪感を憶えたが、彩芽や千姫は気にしていないし、その方が家をスムーズに動かすことができるので、その言葉に賛成し、すぐ風呂へ入った。そして俺が天風らとともにお風呂に入り、落ち着くと、彩芽がキッチンから料理をリビングに運ぼうとしていた。「手伝うよ」と言って、すでに手伝いを始めていた千姫と一緒に料理を運ぶ。
「今日の晩御飯は、今朝の春野菜のスープに白米、肉や卵焼きを細かく刻んだものを投入した、あり合わせ雑炊と、漬物各種です!明日たくさん食べれるように、今晩は少なめです」
全員が席に着くと、彩芽は楽しそうな顔を浮かべながら、そう言った。
「いつもこれぐらいで良いんだけどな……いただきます」
「「いただきます」」
俺の言葉を合図に食事が始まる。そして明るく雑談をしながら、緩やかに時間は過ぎていった。




