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第三十六話 寝る前のまったり時間《タイム》

 俺たちは夕食を済ませ、俺、彩芽の順番で風呂に入ったあと歯磨きをし、リビングに集まっていた。

「今日も一日終わったなぁ」

 俺はテレビを見ながら、そんなことを呟いていた。

「どうしたの?突然?」

 俺の発言に、横で千姫に寝間着ねまきを貸していた彩芽が、反応してきた。

「ん、いや……」

 俺が言葉を濁していると、千姫が「着替えてきます」リビングから出ていった。俺はその光景を見ながらふと思った。

「母さんが死んでから誰かと一緒に住むなんて思わなかったな」

「そうなんだ?」

 彩芽は、俺の発言に少し驚いた声音で返答する。俺はその驚いた声音が気になり、聞いてみた。

「なんで驚いてるんだよ?想像なんてしてなくて当然だろ?」

 しかし俺の発言は、彩芽には的外れだったようで、クスッと笑いながら答えた。

「だって、誠がお母さんのことをこんなに普通に話すことなんて無かったもん」

 彩芽の言葉に、俺はそうだったかと、少し過去を振り返り、そうだったかもしれないと、少し後悔した。

「それもこれも彩芽たちのおかげということで……」

 俺は、これからは気を付けようと話を俺が切ったところで、ちょうど千姫が部屋に戻ってきた。

「着心地はどう?」

 彩芽は、千姫に元気よく話しかける。すると千姫は、胸に手を当てながら。

「胸が少し緩いです」

 そのセリフに彩芽は羞恥しゅうち半分、ほこらしさ半分を持ったか面持ちで、笑う。そしてなぜか黙り込み、間が出来る。俺はその間を見計らい、話を変える。……というかその話は長くされたら俺の居場所がない。

「さて、千姫も寝間着に着替えたことだし、そろそろ寝るか」

「……ちょっと待って」

 俺が変えた流れを、彩芽が静止する。俺は、彩芽のトーンが低めだったことに、俺は何をしてしまったのかと少し怖がりながら、「なんだよ?」と聞いてみた。

「誠って、刃境さんのこと名前で呼んでたっけ?」

 あ~そういうことかと思った。確かに学校で始めて会話した関係であることを知っている彩芽なら、おかしいと思うのも当然だろう。しかも俺が、そんな簡単に人を名前呼びをする人間でないことを知っているので、怪しんだんだろう。その返答として、俺は一番わかりやすい且つ、その時の情景じょうけいに一番合っている言葉を発した。

「なんていうか、流れでそうなったみたいな?」

 うん。これが最上だろう。うん。と、三橋さんの言葉を思い出し少し恥ずかしかったので、真実を濁して答えた。彩芽は「ふーん」納得はしていないが、これ以上詮索はしない様だ。

「……どんな流れでそんなに一日、二日で仲良くなるのよ」

 という彩芽の口から漏れた言葉は聞かなかったことにした。

「……じゃ、じゃあ寝るか!」

 俺はまたも話の流れを変えた。今度は彩芽も突っかかることなく移動した。

「じゃあなんか用があったら俺の部屋に来てくれ」

「了解っ」

「わかりました」

 二人の了解を得たところで、俺は自室に入り、彩芽と千姫はそれぞれ新しい自室入っていく。俺が扉を閉めようとしたとき、「あ、そうだ」という彩芽の声が聞こえたので、千姫に向けてかもしれないが、動きを止める。すると、彩芽が俺の視界に入ってきた。

「どうした?」

 俺が聞くと、彩芽が笑顔でこう言った。

「これからお世話になります。よろしくね、誠っ!」

 そういうと、彩芽はトタトタと自室に帰っていった。俺は、彩芽の笑顔が振り払えず、外から聞こえるホトトギスの鳴き声を聞きながら、その場に硬直していた。

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