第三十五話 ハンバーグな夕食
「はい!っまちどうさま!」
彩芽は、老舗の名物店主のような掛け声で夕食のハンバーグをテーブルに置いた彩芽は、その他もろもろの料理も置き、「いただきます」と三人で言った後、食べ始めた。そのハンバーグは、これまで彩芽が作った中で一二を争うほどおいしかった。理由を聞いてみると、牛と豚を七:三にしたり、焼き方を工夫したり、調味料に個性を出したりしたそうだ。それだけでここまで変わるとはと、俺は料理の奥深さに感嘆した。その後ははしたなくない程度に会話をしながら、料理を食べていった。
「そういえば刃境さんは何か足りないものとかある?雑貨とか」
彩芽が、千姫に向かってそんなことを言ったのは、料理の八割ほどを食べ終わった後であった。そろそろタッパーでも持ってくるかと思っていた所でそんな話題が出たので、席を立つのをやめ、話を聞く姿勢をとる。
「私、できれば買い物に行きたいと思っています。服がなくて……」
「今何着持ってるの?」
「今着ている室内着と、外着と、制服だけです」
「えっ、それだけなの!じゃあすぐ行かないと!ねぇ、誠!」
「お、おう」
俺は服の少なさと、彩芽の強引さに驚きながら、頷いた。確かにその服の少なさでは困ること必至であろう。ということで、俺たちは、明日買い物に向かうことにした。




