第三十二話 ……帰宅後
「ふーん。そんなことが……」
およそ五分後、やっと落ち着いた彩芽は、俺がこれまでの経緯を話すと、真剣に受け入れた。そして経緯を聞き終わった彩芽は、「ん~……」と悩みながら、唸っている。
「よしっ、決めた。私も住む!」
「……」
ある程度予想していたが、やはりそう来るかと思い、溜息を吐いた。まぁ、毎日毎日自主的ではあるが、ご飯を作ってくれていることに罪悪感を覚えていたので、ちょうどよい機会でもある。これで料理も俺がやれば、タッパー処理もしなくてよくなるし。あとは部屋だが、この家はくそじじぃが買っていた椎名家の土地だ。(彩芽が言うには、『椎名家は土地しかない家』らしい。)そこに、くそじじぃは別荘を建てたのだ。そのためこの家もある程度広く、部屋も三人暮らしでも十分な広さだ。一人では使わない箇所が多すぎてほこりをかぶっていた部屋がいくつもある。そこで三人暮らしならほこりもかぶらなくなってちょうどいい。……なんだ、結構いいじゃないか三人暮らし。彩芽がいれば刃境さんも良いだろう。あ、そうだ
「なぁ彩芽。親に伝えた方がいいんじゃないか?」
「え?住んで良いの?」
俺は、ふと思い出した重要事項を口にした。が、彩芽はそのことより、俺があまり嫌がらなかったことに驚いたようだ。
「ダメって言っても住むだろ?」
俺は、彩芽と幼馴染みなので、そこら辺彩芽の性格は知っているつもりだ。……彩芽の不屈の精神にはいつも困っている。
「まぁ、その通りなんだけどね?……っとその前に両親に説明しないと。じゃあ伝えに行ってくるね?」
「え?あ、おう」
彩芽はものすごい行動力で、出て行った。それを俺は、いつの間にか着替え終わっていた刃境さんに凝視されながら見送った。