第三十話 ……放課後
俺は走っていた。自身の家に向かって、猛ダッシュしていた。なぜかというと、三橋さんの言葉が原因である。
~時間は戻り、十分程前~
「それはね~……゛んっ゛んん。えー、『赤力犯罪対策局、生物犯罪課、羽造課長から協力要請です。新藤誠さん。刃境千姫さんと共同生活を行い、感情の回復をお願いしたい。』とのことです」
三橋さんは胸ポケットから取り出した紙を呼んでいた。……内容は意味不明だったが。俺は、言葉の真意を考え悩んでいると、三橋さんがまた言葉を発した。
「まぁ、これは形式上の言い方なので。簡単に言うと、刃境さんとルームシェアして、落ち着かせてくださいってことです。こっちもバックアップはそれなりにするつもりですから、安心していいですよ」
三橋さんの言葉は、俺に真実を叩きつけた。だがそのおかげで冷静にもなり、返答することが可能となった。
「……質問です。なんで俺の家なんですか?もっと他に良い場所があると思うんですけど……」
俺がそう言うと、三橋さんはニヤッと笑い、「それが、さっきの話と繋がるのですっ!」、と言った。
「それって、三橋さんが言ってた、『俺が教室に居たから安心したのかも』ってやつですか!?」
「そうよ?」
「なんですかその希望的観測!」
俺は、半ば反射的に対応していて、思考回路はほぼ停止していた。
「まぁまぁ、そういわないで。……別に断固拒否ってわけでもなんいでしょう?」
「……」
確かにそうだ。その通りだ。刃境さんと一つ屋根の下暮らすのは、憧れる。だがあって一日二日なのに突然同居はさすがに……というかそもそも……。
「刃境さんはなんて言ってるんですか?」
「『出来れば新藤君の家がいいです。他はいや』、だって。あ、ちなみに新藤君のおじい様にも許可はとってるからね♪」
俺はどうにか否定するために考えていたことをほぼすべて言われ、呆けていると、またも教室の扉が開き、今度は照島先生が入ってきた。
「三橋先生。今日、歓迎会をやろうかと思ってるんですが、どうです?」
照島先生は、俺のことを確認した後、三橋さんに話しかけた。どうやらこちらも歓迎会を行うらしい。そして三橋さんはその質問に快く答えていた。先生たちは今夜行うんだな~と考えていると、ふと 彩芽が料理創るのもこれから(自身も合わせて)三人前になるんだな~、と思った。そしてだんだんその光景の前段階がまずいことに気付いた。彩芽と刃境さんが俺の家であってしまうのはとてもまずい。俺は先生に一言、まずいことになりそうなので失礼しますとお辞儀をし、競歩で外に出た。そして今に至るというわけだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
俺は家の前で息を切らしながら、玄関へ向かった。ドアノブに手をかけると、扉は空いていて、話声が聞こえる。扉を開けると……。
「なんで刃境さんがここに居るの!?」
彩芽の、半ば叫び声のような言葉を聞いた。……時すでに遅かったようだ。