第二十九話 放課後……
「終わった終わったぁ~~~」
友也が脱力した声でそう言って伸びをした後、ドンッと机に突っ伏した。
「ったくも~、だらしないわね」
友也が突っ伏していると、両手を腰に置いた美幸があきれ顔でそう言ってきた。その言葉に友也は少し不機嫌そうに言い返した。
「だって、せっかく誠と刃境さんがあんなに楽しい試合を観せてくれたのに、そのあとは書き取り書き取り書き取りって……こっちは青の戦闘観てから戦いたくてうずうずしてるっていうのによ~」
「確かにそれはあるかもね」
友也の感情溢れた言葉に美幸は同感した。
「そのせいで授業の内容が全く頭に入ってこなかった」
「……なんだ、いつも通りじゃない」
美幸は友也がつづけた言葉に冷ややかに返した。すると、言乃が俺たちのほうに向かってきた。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
俺たちが言乃の方向を向いたのを見ると、話を続けた。
「明日ね、刃境さんの歓迎会?みたいなものをやろうかと思うんだけど……明日、暇かな?」
言乃の突然の誘いに少し驚いたが、特に明日は用事もないし、歓迎するのはやぶさかではないので、俺はすぐに了承した。友也たちも、その後すぐに了承していた。あっ、そういえば……
「なぁ、その歓迎会の会場はどこなんだ?」
俺が聞いておかなければならない必要事項を聞いた瞬間、ガラガラッ、と教室の扉が開いた。そこの立っていた彩芽は、自身の胸にドンッ、と叩き、
「私の家ですっ!」
と言った。
「お、おう……」
突然の登場と発言に俺は戸惑った返事をすると、彩芽は満足したような笑みを見せ、足取り軽やかにこちらにやってきた。その間に冷静になり、彩芽の家なら二年生全員だけでなく、この学校全員で押しかけても収まりきるので、会場にはもってこいだなと考えながら、彩芽に声をかける。
「よ、よう……彩芽。元気そうだな」
「えぇ!元気は取り柄の一つですから!」
周りが引くほど、歓迎会を成功させようと張り切っている彩芽を見て、他人の歓迎会とかに限って本気になるタイプだったな~、と思いながら棒立ちしていると、彩芽の後ろから、三橋さんがやってきた。
「こんにちは……あっ、いたいた。新藤くん。少し話があるのだけど、これから時間あるかしら?」
「えっと……」
三橋さんの質問を、俺は周りに、「先に帰っててくれ」と言う言葉で返答した。
「りょーかい」
「じゃっ、また明日な」
と言い教室を出ていく。全員が去って、教室内が二人きりになった所で、俺は三橋先生に会話を促すように言葉を発す。
「それで三橋さん。話ってなんでしょうか?」
そう言った所、三橋さんは「あ、そうそう、そうだったわ……」と今まで忘れていたかのような言葉を発し、軽い咳払いの後、話し始めた。
「単刀直入に言います。新藤くんは刃境さんのことどう思う?」
その質問を俺は瞬時に理解できず「そーですね……」と時間稼ぎの発言をした後、この質問であろうと確信した後、返答をした。
「やはり強い、ですかね。反応速度がとても良くて、攻撃や不意打ちが全く効きませんし、あとあの分離奇生命体の高速形態変殻です。あんなの初めて見ましたよ……」
俺は刃境さんの格闘技術について考察していると、「それもそうなんだけどそうじゃなくて……」と、三橋さんが少々微妙な顔をしていった。
そこで俺は、質問の返答が違うことに気づき、また少し考えた後に、ようやく察し、確認のために言葉を発した。
「あっ、もしかして性格の話ですか?」
と聞いた所、三橋さんは笑顔を取り戻した。
「そうよ。それ、それが聞きたかったの」
俺は三橋さんが求めていた回答に気づき、返答した。
「まぁ……言葉はあまり乏しくないですし、人付き合いも悪くは全然無いですし……刃境さんには失礼かも知れませんが、あまり事件の後遺症があるようには思えませんね。良いこと、なんでしょうけど」
俺がそんな回答をすると、三橋さんの同じ見解のようで、少し唸りながら話した。
「そ~なのよね~。私もはっきり言って驚いているわ。こういっちゃなんだけど、昨日というか今日の朝、教室に入るまでは何を聞いても言葉足らずな返事を真顔で返してくるだけだったのよね~。……もしかしたら新藤くんが教室にいたから安心したのかもね」
と、三橋さんがやわらかに笑みを浮かべながらそういったが、俺は刃境さんに告白(偽)のこと思いだし、少しドキッとするも、心を落ち着かせ、気持ちを入れ替えた。
「もしかしたら以前。事件に合う前に学校に通っていて、その影響で思い出した。とかかもしれませんよ?」
と、話をそらした。すると三橋さんは、「まっ、そうゆう可能性もあるわね」と、乗ってくれた。その態様に俺は感謝しながら、話を戻した。
「すいません。それで話って……」
「まぁ、悪い印象はないということで大丈夫かな?」
「え、それってどういう……」
……嫌な予感がしてきた。三橋さんは、あえて答えを濁しているような気がしたからだ。俺は恐る恐る言葉の続きを促した。すると三橋さんは、笑みをこぼしながら言葉を発した。その恐るべき言葉を。
「それはね~……」