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第二十二話 試合の時間

 じゃんけんの結果は、友也・美幸、紫穂・真十花、俺・刃境さんの組み合わせとなった。

「……決まったな。じゃあ等間隔に並んでくれ」

 先生は周囲を軽く確認した後、生徒たちを縦横二十歩ほどの間隔に並べた。

「それじゃあ、一分後戦闘を始めるぞ!各自分離寄生命体を武器に形態変殻してくれ」

 生徒は先生の言葉を聞いて、自身の隣にいる分離寄生命体に触れ、名前を呼び、武器の形に変えていく。俺も「天風」と一言呼んで天風の額に触れ、鞘に入った一振りの太刀に変化させる。そしてくすんだ緑色の柄を掴んで、太刀を引き抜き、太陽光によって鈍く光る銀色の刀身を眺める。すると、目が合ったような錯覚に襲われる。いや、錯覚ではない。太刀(あまかぜ)は実際に俺を見ているのだ。生物を武器として振るうことに少しマイナス方面の複雑な感情が入るが、それを振り切るように太刀を一振りすると、一度鞘に戻す。そして前を向くと刃境さんが白を基調とした少し機械ティックな刀を抜刀していた。その抜刀の動作は優雅で、目を奪われてしまった。型にはまっているような抜き筋だが、全く知らない作法なため、最新の流派か、コアな流派、はたまた我流なのか、全くわからない。小さい頃からくそじじぃに様々な流派を聞かされていたので、知らない流派と言ったらこのくらいであろう。……記憶から抜け落ちている可能性も否めないが。

「……初めに兜金かぶとがねに触れる動作があった。抜刀する前にあの動作をするのは、覆輪陰月流おおりんいんげつりゅうか?でもあの流派は大前提として鞘から手を離してはいけなかったよな?いや、派生型という可能性もある。だが、抜刀時に円を描くように抜く作法も本家にはあるからな~。そこまで作法を変えると、派生流の可能性も下がったか。その動作を覚えてない……訳でもないよな。軽く覚えたにしてはあの優雅な動作は出来ないだろうからなぁー。あ、兜金を隠す流派で一番有名なこう兜隠流とがくしりゅうがあった。でもあれは、攻撃時以外にあまり兜金を見せないはずだ。でも今刃境さんは隠していないからその線もないか。ブツブツブツ……」

「そろそろ始めるぞー!」

 刃境さんの流派について色々考察していると、先生が試合開始の準備を完了させていた。そのため、俺はゆっくりと抜刀をした。

「刃境さん。準備良い?」

 俺が話しかけると、刃境さんが両手で丸を作る。俺はその動作を見て、両手で太刀を上腕に担ぐ構え、袖擦そでずりの構えをとる。そして刃境さんは正眼せいがんの構えをとる。そのタイミングで、先生が試合開始のホイッスルを鳴らした。

「始めっ!」

 ホイッスルが鳴り終わるのを待ち、刃境さんを見るが、動く気配はない。ならばこっちから!

「っ!」

 俺は力強く一歩を踏み出し、大きい歩幅で刃境さんに近づく。そして右上から大振りのわかりやすい一撃、『新藤悠漸流剣術中伝しんどうゆうぜんりゅうけんじゅつ爆雷ばくらい』振り出した。その攻撃を、刃境さんは防御でも、流すわけでもなく、振りかぶって鍔迫つばぜいに持ち込まれた。

「くっ!」

 最初に刀身に触れあった時にも思ったが、鍔に触れた時も、力の強さをとても感じた。こんな細腕からここまでの力が出るとは……、と感心しながら力を込めるが、微妙にしか下がらない。確かに全力ではないが、これほど押し返せないとは思わなかった。刃境さんの顔を見ると、真剣な表情をしている。刃境さんもこちらを見ていたので、目があっていた。その目を見ると、真剣な目ではあるが、全力というわけでもなさそうだ。そして俺はニヤッと笑った。俺は強い相手と試合をすると、つい笑ってしまうのだ。彩芽によると、「誠は強い人と戦うのが大好きな戦闘狂せんとうきょうだ!」と言っていた。自覚が無い訳ではないが……。その笑いをどう受け取ったのか、刃境さんもニヤッと笑い、力を強めた。俺はその力を弾き飛ばすように刃境さんの刀を左下に流した。刃境さんが力を強めていたタイミングだったので、刃境さんの刀は手から離れ、地面に深々と突き刺さる。ここまで刺されば、簡単には抜けないだろう。そして刃境さんは驚きで刹那硬直せつなこうちょくした。そのタイミングを逃さず、俺は右足を踏み込み、左水平の斬撃『新藤悠漸流剣術初伝しんどうゆうぜんりゅうけんじゅつしょでん転瞬肢断しゅんてんしだん』を行った。この攻撃、速度はあるが威力が弱いため、的確に狙える時を見計らった。そして今は、相手の武器は地面に刺さっていて使えない。副武器や拳の攻撃よりもこちらの攻撃のほうが早い。そして斬り抜ける攻撃なので、絶好のタイミングだった。だが、俺が左手を斬ろうと両手に力を込め太刀を振り、もう少しで左手に当たる寸前、俺は《《弾き飛ばされた》》。

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