第十八話 朝のホームルーム
俺は朝食を急いで食べ、走って学校に向かった。
「ふぃ~、間に合った~」
「八時三十三分だから残り二分。えぇ、ほんとにギリギリね。じゃあ、また後でね、誠」
「あぁ、またな、彩芽」
俺と彩芽は、依託所への預けを済ませ、学校の教室前で別れた。
「おはよっ、誠」
俺が教室に入ると、友也が話しかけてきた。俺は、おはようと、返答し、会話を続けようとしたが、
「朝のホームルーム始めるぞー、席に着けー」
と、照島先生に言われてしまったので、大人しく席に着く。
「気を付け、礼」
今日の日直が挨拶をした後、照島先生は教室の扉のほうを確認しながら、口を開いた。
「おはよう。入学して一か月ほどだが、今日は編入生を紹介する。入ってきてください」
俺は入ってくる生徒が入ってくるのをぼーっと眺め……られなくなってしまった。なぜなら、入ってきた白銀髪の女子生徒は、とんでもなく見覚えがあったからである。
「初めまして、刃境 千姫と言います。どうぞよろしくお願いします」
軽い機能停止状態に陥った。周囲では、容姿の完璧さや、声の美しさにざわついている。確かに同年代ぽかったが、まさか同じ学園の同じクラスになるとは思いもよらなかった。
「……というか、保護した次の日に学園に来るのは早すぎないか?」
「彼女は一日で回復したわ、リハビリの必要も無いぐらいにね。だけど両親は行方不明、実験の後遺症で感情が大きく動かない、だから、比較的安全で感情豊かな人たちの多い学校に登校させようと思ったのよ。そしてどうせなら面識のある子たちがいて、十歳から二十歳までを許容している西区白波学園に入学させようって思ったわけ。学園長先生もすぐに了承してくれたわ。」
「は、はぁ~……って三橋さん!!」
昨日助けた少女、刃境 千姫の今の状況について怪しんでいたら、後ろから何処からともなく現れた三橋さんに説明された。
「新藤くん、先生と知り合いなのかね?みなさん、後ろにいるのは新任の三橋 瞳先生だ」
照島先生の予想外の発言に俺は戸惑いつつも、何とか落ち着き、質問を三橋さんにした。
「つまり、刃境さんはもう体調万全でこの学園に来て、三橋さんは……また犯罪に巻き込まれないように警護している……みたいな感じですか?」
「……ピンポーン!大正解。でも先生であるのも確かよ。私はここの副担任ですから!」
三橋さんが持ってきた多くの情報を頭で整理しながら小声で会話していたら、刃境の自己紹介も終わってしまったようで
「誠の後ろの席に座れ」
という照島先生の指示に従い、刃境さんは俺の後ろの空いている席に向かっていた。が、その途中、俺の席の前で立ち止まり、こちらを向いた。そして終始無表情だった刃境の顔が、美しい笑みに変わり軽くお辞儀をする。昨日の礼を伝えたかったのだろう。その笑顔は、周囲に青薔薇のような花が咲いた……ような気がするほどの美しい笑みで、刃境さんが通り過ぎた後も、少しの間硬直していた。




