表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/111

第十八話 朝のホームルーム

 俺は朝食を急いで食べ、走って学校に向かった。

「ふぃ~、間に合った~」

「八時三十三分だから残り二分。えぇ、ほんとにギリギリね。じゃあ、また後でね、誠」

「あぁ、またな、彩芽」

 俺と彩芽は、依託所への預けを済ませ、学校の教室前で別れた。

「おはよっ、誠」

 俺が教室に入ると、友也が話しかけてきた。俺は、おはようと、返答し、会話を続けようとしたが、

「朝のホームルーム始めるぞー、席に着けー」

 と、照島先生に言われてしまったので、大人しく席に着く。

「気を付け、礼」

 今日の日直が挨拶をしたのち、照島先生は教室の扉のほうを確認しながら、口を開いた。

「おはよう。入学して一か月ほどだが、今日は編入生を紹介する。入ってきてください」

 俺は入ってくる生徒が入ってくるのをぼーっと眺め……られなくなってしまった。なぜなら、入ってきた白銀髪の女子生徒(・・・・・・・・)は、とんでもなく見覚えがあったからである。

「初めまして、刃境はざか 千姫ちひめと言います。どうぞよろしくお願いします」

軽い機能停止状態に陥った。周囲では、容姿の完璧さや、声の美しさにざわついている。確かに同年代ぽかったが、まさか同じ学園の同じクラスになるとは思いもよらなかった。

「……というか、保護した次の日に学園に来るのは早すぎないか?」

「彼女は一日で回復したわ、リハビリの必要も無いぐらいにね。だけど両親は行方不明、実験の後遺症で感情が大きく動かない、だから、比較的安全で感情豊かな人たちの多い学校に登校させようと思ったのよ。そしてどうせなら面識のある子たちがいて、十歳から二十歳までを許容している西区白波学園にしくしらなみがくえんに入学させようって思ったわけ。学園長先生もすぐに了承してくれたわ。」

「は、はぁ~……って三橋さん!!」

 昨日助けた少女、刃境 千姫の今の状況について怪しんでいたら、後ろから何処からともなく現れた三橋さんに説明された。

「新藤くん、先生と知り合いなのかね?みなさん、後ろにいるのは新任の三橋みつはし ひとみ先生だ」

照島先生の予想外の発言に俺は戸惑いつつも、何とか落ち着き、質問を三橋さんにした。

「つまり、刃境さんはもう体調万全たいちょうばんぜんでこの学園に来て、三橋さんは……また犯罪に巻き込まれないように警護している……みたいな感じですか?」

「……ピンポーン!大正解。でも先生であるのも確かよ。私はここの副担任ですから!」

 三橋さんが持ってきた多くの情報を頭で整理しながら小声で会話していたら、刃境の自己紹介も終わってしまったようで

「誠の後ろの席に座れ」

という照島先生の指示に従い、刃境さんは俺の後ろの空いている席に向かっていた。が、その途中、俺の席の前で立ち止まり、こちらを向いた。そして終始無表情しゅうしむひょうじょうだった刃境の顔が、美しい笑みに変わり軽くお辞儀をする。昨日の礼を伝えたかったのだろう。その笑顔は、周囲に青薔薇あおばらのような花が咲いた……ような気がするほどの美しい笑みで、刃境さんが通り過ぎた後も、少しの間硬直していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ