表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/111

第一話 記憶

 少年は恐怖していた。

 その光景はまるで地獄のようだった。

 村が襲われた。

 家々には火が放たれた。

 その火は他の火と競うかのようにものすごい速度で広がっていく。

 襲撃者まじゅうは嬉々として人を殺しているように見えた。

 そして村の住民たちは逃げ喚く。

 泣いても、叫んでも、命乞いをしても、襲撃者は止まらない。

 少年は半壊した家の隅で怯えていた。

 目の前では、父が襲撃者と戦っている。

 そのすぐ後ろには母がいて、少年を気にしながら父の手助けをしている。

 襲撃者は咆哮しながら父の刀に斬り殺されていく。

 死の恐怖がないとでも言うかのように、襲撃者たちは自身を殺す刃に恐怖一つなく飛び込んでくる。

 襲撃者の鉤爪が父の脇腹を抉った。

 刀は止まり、父は苦悶し、襲撃者たちは飛びかかる。

 父に降りかかろうとしていた鉤爪を、割って入った母が全て受け止める。

 母の腹部に鉤爪かぎづめ深々(ふかぶか)と刺さり、生々しい色の血が飛び散る。

 その時、半壊した家の外から二つの影が飛び込んできた。

 その影は、長身の男と深く黒い毛並みをした狼だった。

 その二つのうちの一つ、黒い狼は、地面へと落ちる前に体をゆがめ、艶めかしく黒光りする太刀に変化し、それをつかんだ男が襲撃者たちを斬り伏せていく。

 新しい獲物を見つけた襲撃者たちは、自ら男の刃に斬られに飛び込む。

 男はあらゆる襲撃者の首を確実に斬り落としていく。

 男はついに視界内すべての襲撃者を倒した。

 周辺の安全を確認したのち少年に近づき、頭をなでながら大丈夫だよと言い、後から入って来た人たちに走り寄り、会話をしている。

 少年はその男の言葉に恐怖をやわらげ落ち着かせるとともに、絶望が少年の心に入り込む。

 少年の目の前には血を流し苦悶しながら地に伏す両親。

 その血が流れ、少年の足にまとわりつく。

 そして少年の意識が薄れ――――

 「――こと、誠!起きて誠!!」

 そして少年、新藤しんどう まことは目を覚ました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ