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カニンとカノン  作者: 伊藤むねお
7/8

池がない!

 身をひそめている二匹の上にはいろいろなゴミが頭の上から降ってきた。しばらくすると口が結ばれ、ぐいっと持ち上げられた感じがして、やがて玄関の扉の開く音、そして着地だった。お母さんが家の中に入ったのがはっきりわかったとき、二匹はついにやったと互いにゴミをかぶりながら、ハサミとハサミを合わせ成功を祝福しあったのであった。

 そこから袋を切り裂いて外に出るのは二匹にとっては簡単なことだった。しかし、ゴミがあふれ出ないように大き目のゴミがあるところを少し切り裂いて出たのである。二匹はそろりそろりとゲン爺に教わったとおりの庭の池の方に進んでいった。

 ゲン爺の教えはこうだった。

「家の庭には小さいけれど池がある。玄関から左の方向だ。そこに逃げ込め。池にはおまえたち以外のカニたちがいる。すくなくともカニに害を加える危険なやつはいないはずだよ。まあ、そこは昔の川とはちがうけれど、なんといっても外だし自然だよ、な。昼は端のほうの石に隠れて、夜になったらあちこち歩き回ってみるといいのさ」

 ところが、ところがである。

 ゲンじいさんが教えた場所に行ったのだが池がなかったのだ。まさかと思い、さらに広く歩いてみたが、やはりなかった。だいいち、あの水の匂いがどこにもない。

 なんということか。こんなに苦労したのにゲンじいさんも知らない事がおきたのだ。カニンもカノンもついにはへたへたと枯葉の上にへたばってしまい、涙とよだれとあわを目と口から出しながら枯葉の下にもぐって、悲しい泣き寝入りになってしまった。


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