だっしゅつ
カニンが、なにかこれまでと違ってきたのは、ひと月ほどたった頃からだった。
思案をしている時が多くなった。ときどきはプファーとため息をついたりもしているようにゲン爺には見えた。ゲン爺もそのわけがわかるような気がしたが、それでもわざと黙ってた。それを言い出すと自分もつらくなるような、そんな気がしたのであった。
けれども、それからまたひと月ほどたったある日、とうとうカニンは自分の方からゲン爺にぶつぶつと話しかけた。
「じいさん。俺は決心したよ。とめないでくれ」
「出ていくというんだな」
「そう。前の時は、下にフナとかドジョウなんかがいて、なんだか俺とカノンが生まれたところと似ていたせいか、こんな気持ちが起きなかったんだ。が、ここは来たらどうもなんだか、下にいるあの大きなやつになじめないせいもあるんだろうけれど、ああ、僕らは飼われているんだと、どうしてもそれが抜けなくて・・・カノンとも話をしてみたんだが、やつもおんなじだと。外に出てどうなるんだという心配は大いにあるよ。でも、じいさん、このままではどうしても我慢ができないんだ。このせまいところで、いつも餌をぱらっと撒いてもらってさ。まずくはないんだけどね。ああ、うまくいえないなあ。でもわかってくれるだろう?」
「わかるともさ。だが、俺はもうこのままでいいんだ。仲間もずいぶんここで死んだしな。だが、お前たちは若い。ま、やってみるさ。だが難しいぞ。難関が少なくても二つはあるな。一つは、どうやってこの水槽から外に出るかだ。もう一つは、どうやってこの家を出るかだ。今は寒い冬だ。どこのガラス戸も皆いつも閉まっている。だが、もし家の外に出られれば、その後の行き先については、俺に心あたりがあるよ」
「本当かい、じいさん。実は外に出る計画はできているんだ。毎晩毎晩考えたんだ。少し運まかせというところはあるんだけどね。で、心配だったのが、その外に出てからどうするかということだったんだ。ああ、ありがたい」