両手に花(前編)
前回の妹サイドを読むとなんとなく流れが分かります
ピンポーン
......
ピンポーン
.............
ピンポーンピピピピピピピンポーンピンポーンピピピピピピピンポーン
「朝からうるせぇ!!」
朝といっても10時過ぎだけど。
「全く、土曜の朝からずいぶんと働き者だな...ってか紗奈のやつ居ないのか?」
仕方ないので階段を降りて玄関のドアを開ける。
「おっはようございまーす!」
寝起きにはキツイ元気で大きな声が俺の耳に響く。
確か妹の友達の結城鈴って子だったっけ?
「おっおはよう...紗奈なら居ないみたいだけど...」
「あれ?紗奈ちゃんから聞いてないんですか?今日はお兄さんとお出かけしようと思って来たんですよ」
買い物か何かの運びをさせようって言うのか。
ってか紗奈のやつ絶対俺に言ったら寝たフリして出ないからって言わずにいたな。
「俺今日いそg」
「今日何も予定無いですよね!紗奈ちゃんに聞いたので大丈夫です!」
何も大丈夫じゃねぇ。
ってか紗奈はなんで俺の予定知ってるの?
マネージャーかなんかなの?
「分かった分かった分かりました。行くからちょっと待ってろ」
「ありがとうございますお兄さん♪」
お礼を言いながら俺の手を両手で握ってくる。
(この子苦手だなぁ...)
─────
「えっと結城さん。紗奈って学校でどんな感じなのかな?」
「鈴でいいですよお兄さん♪紗奈ちゃんは学校でもしっかりして頼られてますよー可愛いし頭もいいし運動も料理もできますからね」
こんだけ妹が褒められるとやっぱり兄として誇らしいし嬉しい。
「でもモテモテなのに彼氏作らないんですよねー。もしかしてお兄さんのこと大好きだからですかね?」
「そんなわけ...」
この前の妹の言葉を思い出した。
『私は兄さんのモノですから』
どういう意味だったんだろう。
考え込んでいると心配そうに鈴ちゃんが顔を覗き込んできた。
「あのぉ...冗談ですよ?」
「ごめんごめん。分かってるよ。心配させてごめん」
そういって頭を撫でていた。
自分でも驚くくらい自然に頭を撫でていた、
そして昔自分が本当に小さかった頃、同じように頭を撫でたことを思い出した。
(あれって誰の頭を撫でていたんだっけ...)
「あのぉ...」
鈴ちゃんの声でようやく我に返った。
「あぁ!ごめんね頭撫でちゃって」
「いっいえいえ!むしろその...嬉しかったです...」
どんどん声が小さくなって聞き取れなかったけど怒ってはいないようだ。
顔を真っ赤にしてモジモジしている鈴ちゃんをみていると急に背筋がゾクゾクした。
いや、変な性癖とかじゃないよ?
リアルに冷気を浴びせられたように背筋が寒くなったんだよ。
嫌な予感がして後ろを恐る恐る振り向くとそこには目の笑っていない冷たい笑顔の紗奈が立っていた。
「兄さん」
「ひゃい!」
「気安く女の子に触っちゃダメじゃないですか」
「すいません!」
声が裏返ってしまった。
「言うの忘れてたんですけど紗奈ちゃんも一緒ですよお兄さん♪」
温度差の激しい二人に挟まれて風邪引きそうな気がした。
お兄さんはヒッキーだけどアクティブなヒッキーです