妹襲来
タイトルが謎
「そういえば春なんだよなぁ」
ん?
そこである疑問が浮かぶ。
「合宿って普通夏とか冬じゃないのか?」
こんな春真っ最中に合宿って紗奈は何部なんだろう。
そう思っていると玄関の開く音が聞こえた。
どうやら合宿が終わって帰ってきたらしい。
まあどうでも良いかと思い動画を見ようとインターネットを開こうとした時だった。
「お邪魔しまーす」
全く聞いたことの無い声が耳を貫いた。
扉越しでこの音量は生物兵器だろうか。
階段を駆け上がってくる。
数人居るようだ。
インターネットの動画どころではない。
じっと息を潜めて様子を伺う。
「初めまして!紗奈ちゃんの友達の結城 鈴でーす!お邪魔させていただきます!」
邪魔目的なら帰れ。
邪魔にならない努力をしてくれ。
そう思っているとノックが聞えた。
そのあと扉の隙間から紙が出てきた。
その後二人のお邪魔しますという声が聞えたかと思えば、ワイワイガヤガヤしながら妹の部屋に全員入っていった。
「騒がし過ぎる」
手紙を見ると、
[部活の会議で私の部屋を使うので騒がしくなるかもしれません。相談もせず呼んでしまってごめんなさい]
こう書かれていた。
寄生虫レベルのゴミニートなお兄ちゃんにここまで遠慮する妹もそうそう居ないと思う。
とりあえず飲み物が無いので今のうちに持ってこよう。
そう思ってドアを開けた時だった。
丁度目の前を紗奈が通った。
そして目が合ってしまった。
しばらくの静寂。
時が止まったかと思った。
にしても成長しても人形みたいだな。
黒くて綺麗な長い髪。
大きな瞳。
ってかまつ毛長いな。
見つめれば見つめるほどに細かい部分まで目に焼き付いていく。
「兄さん」
妹の声でハッと我に返った。
「飲み物を取りに行くんですけど兄さんもどうですか?」
久しぶりの対面でよくこんなに普通に話せるなと感心してしまう。
こうやって顔を会わせるのが久しぶりなのにも関わらず、まるでいつものことであるかのような感覚さえある。
「あ...あぁ。俺も飲み物取りに行こうと思ってて」
「じゃあ行きましょう。それとも私が持ってきましょうか?」
「友達何人か来てるんだろ?友達の分も持つなら大変だろうし自分で行くよ」
「気を遣わなくてもいいのに...それなら一緒に行きましょう」
何も言わずに一緒に一階に行く。
妹は2リットルのペットボトルとコップを4つお盆に乗せ氷を入れていた。
「三人来てたんだな。部屋だと狭くないか?」
「大丈夫ですよ。それに資料が部屋にあるので一階に運ぶのも面倒なんです」
資料ってなんだろう。
部屋に無駄なものは何も無かった気がするけど。
「ふーん。そういえば何部なんだ?」
そこで妹の動きが止まった。
「...趣味を極める部活ですよ」
「そんな部活があるのか」
「はい。最近は料理とか裁縫とかやってるんですよ」
「だから最近料理美味くなってるんだな。作るの慣れたのかと思ったよ」
「そっ...そんなことっ...わっ私なんてまだまだ未熟で...」
顔を真っ赤にして照れている。
その様子を見てちょっと意地悪してみたくなった。
「いやいや凄く美味いよ。それによく気が利くし家事何でもできるし。将来の旦那さんが羨ましいなぁ」
「にっ兄さん誉めすぎですよっ!」
「こりゃどこに嫁に出しても恥ずかしく...」
「嫁になんか行きません」
鋭い口調で遮られた。
まるで切れ味の良い刃物で断ち切られたかのような鋭さだった。
さっきまで真っ赤になっていた顔は無表情になっている。
(何か地雷踏んだか?それとも調子に乗りすぎた...)
全く動けない俺に妹が近付いてくる。
「えっと、ごめん...」
「私はお嫁に行きませんよ。だって私は...」
そう言って俺の頬を撫でる。
さっきまで氷をコップに入れていたからだろうか。
ひんやりしている。
それが余計に背筋をゾクゾクさせた。
その冷たさに反した暖かい笑顔でこう言った。
「私は兄さんのモノですから」
ここで唐突に身長の話
祐也は176センチ
紗奈は152センチです