~異世界ったってなにも変わりゃしねえよ~
初めまして!この度、暇に暇を重ねて執筆に手を出しました!
初投稿シリーズとなるので、稚拙な文やつじつまの合わないストーリーが作中にて露呈するかもしれませんが、頑張りたいと思います!よろしくお願いします!
…いや、もう2時かよ…。
ったく何もしなくても時間はすぐに過ぎてくんだよなぁ、ホント。
昼間からカーテンを閉め切り、汚い部屋でたばこをぷかぷか。それが俺の日常だ。
俺は広岡 将紘。20の1人暮らしの大学生だ。暇があればきまってPCの前でタバコを吹かしながら暇をつぶす。
そういう男だ。大学も特に交友関係が広いわけじゃなく、決まった友達と授業を受けて、部活動に勤しんで、帰ってねる。あ、今日は自主休講ってやつだな。そりゃそーよ、毎日毎日つまんない授業受けて男ばっかでつるんで部活してさ。行きたくもなくなりますよ。。。
そんなことを、見ているドラマの主人公を模倣して頭の中で呟いていた。
「女の子だらけの異世界にでも飛ばしてくれれば、俺だってきっとなんかしらの使命?ってやつに熱を上げるんだけどなぁ。」
そしておもむろに立ち上がり時計を見てため息をついた後、中途半端な時間だとぼやきながらお決まりの海鮮丼を買いに外出の準備を始めた。
「あれ、鍵がねーや…。」
物を定位置に置かない気性であり、存分に散らかった部屋からは、鍵をすぐに見つけられないことなど容易に想像できる。
「ま、いっか。少しくらいあけっぱでも。」
そう呟くと彼は既に泥棒に漁られた後のような惨憺たる部屋を後にしたのだった。
夏まっさかりの7月半ばは普段から引きこもりがちな将紘には30分とも耐えられない暑さを呈していた。
「あっついなぁ…、もう3時だぞ…。」
将紘は10分足らずで買い出しから帰宅し、自身が住むマンションに戻ってきた。
じめじめと蒸し暑いエントランスを抜け、エレベーターに乗り込み3階を押した。
…いや、これは有効活用だ。たかが3階でも階段を使えばその分体力を使う。もしかしたら、その体力で何か有意義なことができるかもしれない。例えば…部屋の片づけとか?まぁ、するつもりは部屋に入ってから決めても遅くはないよな。うん。
「うわ、鍵締めてないこと忘れてた。」
小走りで自室まで向かう。
「あっれぇ?なんか扉重くない?それに…俺電気なんて消したっけ?」
出る前の部屋とは別の異質さを放つ部屋になんの躊躇もなく飛び込んだ。
靴を脱ぎ散らかし、1Kの部屋につながる扉を開け暗い部屋に一歩進んだとき、
なぜか床が抜けた。
「え」
バキッ!!
おいおいおいどうなってやがる!まだ築13年だろうが!!ここ家賃高いんだぞ!
…ん?足の裏が冷たい…。それに湿ってる…。
よく見るとこれマンションのタイルじゃない…?
俺は勢いよく顔を上げた。そこには、もう長い間だれも住んでいないんじゃないかというほど、朽ちた部屋が広がっていた。
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いや、俺は自分の部屋に帰ってきた。買い出しに行って大漁丼(サーモンマグロイカが入っていてさらにネギトロと卵もあるコスパのいいメニューだ。)もある。自転車の鍵も、たばこも、財布もスマホもポケットに入ってる。エレベーターに乗ってこの部屋にきたんだから、ここは俺の部屋なはずだ。じゃあなぜ??????
…いったん出るか。ここ、クモの巣とか張ってるし…。
…いや引き戸になってるし…。
ガララっと小気味いい音を鳴らすドアを開けたら、まず東京とは思えないほどの緑が広がっていた。
しかも暗い。なんだこれ。昼間やったやんけ!はぁ!?
まじか…。この掘立小屋以外なにもないし。。
やけにきれいに星が見えるなー。前見たのっていつだったけなー。あ、海鮮丼はやく食べないと悪くなっちゃうなー。早く帰らないとなー。
異世界ってさぁ…もっとこう…華やかで、光に満ちたイメージだったんだけどなぁ…。
昨夜の突然の異世界転移から一日が経った。結局あてのない俺はあのボロ家に帰って状況を呑み込めないまま朝を迎えた。
小鳥のさえずる音が聞こえる。朝日の前に出ると、部屋でこもっているときとは別の不安が押し寄せた。
ここの世界では俺は天涯孤独というやつなのだな。いや、もしかして同じ世界だったら自分の先祖なんかいるかもしれない。
一般の異世界転移では、何らかの関わりがあってその地方におくられることが多い。だったら、今俺がいるところも、もしかしたら俺の力が必要だったり、何らかの形で俺にゆかりがあるところなのかもしれない!
まだ完全な異世界と決まったわけじゃないしな!今日はまずこの辺の探索をして、人とか、川とか探せたらライフラインが確保できる。
おっしゃあ!主人公になるぜ!
そう言って決意を固めた俺の前に現れたのは大きな昆虫、いや鳥だろうか。
朝を告げる小鳥を滑空してかっさらっていった。俺の目の前で。
正直、なんとかなるって思ってた時期もありました。ハイ。
…ほんと悪い夢なら覚めてくれないかな。。
とりあえず、散策に行こう。
そういって俺は、水を持ち運ぶためにクシャクシャに丸めたビニール袋と持ってきた装備一式、そして落ちていた太い木の棒を持ってゲート<始まりの扉>を離れた。
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どうやらここは平地の森の中らしい。適当に切り開かれたような獣道をまっすぐ進んでいると、時折がさがさと茂みが動く。
まだこの世界の生態系を知らない俺にとってそれは恐怖の何者以外でもない。両手で棒を握りしめながら進むと、川の下流に出た。
よかった、水の色は同じみたいだ。うん、普通の水だ。この川を辿って上流に行けばきれいな水を確保できるし、その周辺に人が住んでいるかもしれない。
喉を少しだけ潤して、いざ上流へ踏み出さんとしたとき、何やら後ろの茂みでガサリ、と音がした。
小動物であってくれ。俺はそう思いながら呼吸を整え一気に後ろを振り返った。
…。なんだ、何もいないじゃないか。はぁ、と警戒を緩めゆっくりと川の方へ目をやったとき、
対岸に石を持った化物がいた。